中国の半導体生産力、都市経済圏の凄さー日本人が知らない現実(下)/6-21

●トランプ去って、様変わりの風景

英国南西部コーンウオールで開かれていたG7をテレビや新聞で見た限り、トランプの姿が消えて、ジョンソン英国首相のはしゃいでるかの風景が目立った。「ミニ・トランプ」と言われたほど、何かと物議を醸すパフォーマンスの多い人物がホスト役だったのだから、表面的には当然かもしれない。逆に、トランプの後釜であるバイデンの影は薄かったかに見える。現場から遠く離れた日本で見る映像や報道は、意外と、事の本質を垣間見せてくれたのかもしれない、と思ってみたりもする。

何より象徴的なことに思えるのは、アメリカが中国に対抗するために、皆で立ち向かう必要があると、いわば仲間に助けを求めたからだ。この会議で採択された首脳宣言では、中国の人権問題や覇権主義的な動きを牽制し、民主主義の優位性の揺らぎに懸念を表明したとの見方が一般的である。「アメリカ・ファースト」のトランプ去って、ついでに台頭する中国の巨像を覆うベールも剥がされた感がする。米英日の協調姿勢が目立つ一方で、独仏両国の異論も仄見える。問題は政治よりも経済にあろうと思われる。

●中国経済大進撃の背後に三つの要因

中国・習近平政権の誕生いらい8年。経済的側面におけるこの国の進展ぶりは著しい。前回に触れたように、一つ目は、既に随所で語られている「半導体生産」に見る実績である。半導体市場調査会社が発表した統計(2018-2-25)によると、中国の企業は10年前までは、世界のトップ50に入っていたのは一社だけ。それが、2016年には11社にまで増え、更に2017年にはトップ10に2社も入った。そして、2018年には華為(ホァーウェイ)傘下のハイシリコン社が米のアップル社と並ぶまでになったという。その上、世界で最も速い通信用チップを最初に創り出したことで、関連業界に衝撃を与えた。3年前の話である。

二つ目は、中国の巨大経済圏の群雄割拠の実態である。普通の日本人の感覚では、中国に1億人前後の人口を持つ都市の固まりが5つもある、との認識は遠い。ところが、北京、天津の北部に1.1億、上海、南京、杭州など東部に2.2億、重慶、四川、成都など西部に1.2億、湖北、湖南など長江中流の中部に1.3億、そして広東、深圳、香港などに7千万といったように、見事に勢揃いしている。それぞれがありとあらゆる産業を主導する都市群を形成しているというのだ。

しかもこの経済圏がアセアン各国としっかり繋がっているという。私はこれらのことを邉見伸弘の『チャイナ・アセアンの衝撃』を読んで知り、心底たまげた。中国経済力を半ば舐めているうちに、アセアン各国と経済の論理でしっかり繋がっている都市群の存在を突きつけられたのである。「赤い中国」は政治の論理からすると馴染まないはず、は誤認識の要因だった。まさに「日本人だけが知らない巨大経済圏の真実」を知らされ、既成の観念が音を立てて崩れていったのだ。(この項、3回で終わる予定でしたが、もう一回延ばします。 2021-6-21)

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