兵庫県知事選挙は斎藤元彦さんが当選した。43歳という年齢だけでなく、様々な意味で異例づくめの画期的な出来事である。4代続いた副知事からの〝昇格〟ではないこと。県政最大与党の自民党が分裂して戦ったこと。同党を割って出たグループに国会議員団がほぼ全員がついて支援したこと。中央で立ち位置を異にする「維新」が推薦し、力を入れたこと。同じ総務省出身者同士の戦いだったことなど、挙げればキリが無い▲負けに不思議の負けなしーとの「名言」に照らし、金澤和夫さん側の敗因を見てみる。最大のものは、井戸知事を支えて10年余、良いも悪いも影響が強すぎて、後継者自身の個性が埋没したことに尽きよう。4年前の前回の選挙で井戸さんが5選を果たした時点で、今日の事態は見えていたなどと、したり顔で解説する人が多い。勝負は時の運が左右する、選挙でも同様で、様々の条件が複雑に折り重なる。「結果論」に与すべきではなかろう▲菅政権が誕生して以降、自民党中央が肩入れした選挙で、連敗が続いていたとされる。それを覆した。しかも、「自公」の足並みも揃わなかったのに。兵庫県独自の背景があり、国政全体の今に鑑み、これからを占うには無理がある。候補者が春秋に富み、志強く、勢いがあり、話題性に満ちていれば勝利を掴めるということかもしれない。菅自民党は、この勝ちの意味を間違って取らないで欲しい。むしろ〝分裂したら強い〟とのメッセージだと、噛み締めるべきかも▲前回この回想記で、私は「〝赤勝て、白勝て〟官選知事に負けるな」と題した。選挙における遺恨残さず、あるべき兵庫に向かって、赤白渾然一体となって協力しあってほしい。ただならざる〝コロナ禍戦下〟、内輪揉めをいつまでも続けている余裕などないはずだ。まずは、勝った側の斎藤さんが、負けた側に非礼を詫びる挨拶をすることから始めるべきだろう。元の職場の大先輩二人に、突然喧嘩をふっかけたのだから。以上、選挙の帰趨が決まらぬ時点で書いた。もう一つの予定稿は消したことはいうまでもない。(2021-7-18)