【213】政党機関誌の枠を超えた斬新な視点━━『公明』5月号をこう読んだ(下)/4-23

 前回は『公明』5月号が現在の政治課題をどのように面白い視点で捉えているかを述べた。政党の理論誌といえば、自分の党の主張を唯我独尊的に述べていると、見られがちだろうが、ドッコイそんな狭い了見はないと私は思う。その観点から具体的実例を示したところだ。今回は、①特集『首都の安全を考える』から「大都市防災の視点」を②『試練続く国際秩序』から米脱退でWHOは岐路を③ユニークな読み物3点を紹介してみたい。

⚫︎見落とされがちな大都市防災の焦点━━首都の安全を考える

 私の妻は、生まれも育ちも東京中野。私と結婚して15年ほどが経って、40歳代半前半に夫の選挙出馬のため、生まれ故郷を泣く泣く離れ、未知の播州姫路に居を移した。40年近くが経ったいまでも時々、挨拶回りを終えて、帰路についた夜を思い出すという。駅員のいない山奥の駅のプラットフォーム。1人立ってたその時にどれだけ心許なかったか。その妻に、私は東京に帰りたくないかと、水を向けたことがある。答えは「帰りたくない」。なんでかと問うと「だって首都直下型地震が怖い」と。

 そんな私たち夫婦が共に目を凝らして読んだのが、特集『首都の安全を考える』。闇バイト対策と地下シェルター構想というユニークな2つも興味深く読んだが、やはり、廣井悠・東大先端科学技術研センター教授の「見落としてはいけない大都市防災の焦点」に目は向いた。

 「都市は人類最高の発明である」から始まって、であるが故にさまざまなものが集積した大都市で災害が発生すると、その被害がどれだけ甚大なものになるか計り知れない。ということを丁寧に淡々と述べつつ防災対策の方向性を披瀝している。その特徴は、巨大な「集積」から派生する「激甚性」であり、「複合性」「新規性」であるという点だ。最も面白いと思ったのは、複合的リスク対応として、防災とスポーツを組み合わせた「防災スポーツ」を提唱していることである。「端的に言えば防災とスポーツの『よいとこ取り』を実現したもの」だという。この論考を読み込んで、都議選をめぐる各地での支援活動の手引きにするといいと思う。

⚫︎わがまま気ままなトランプ米大統領令で国際秩序は破壊へ

 二つ目の特集は、「試練続く国際秩序」とのタイトルで、トランプ関税とWHO(世界保健機関)からの米の脱退を取り扱っている。ここでは後者の詫摩佳代慶大法学部教授の論考を読んでの感想を述べる。

 就任早々、パリ協定やWHOからの脱退、パンデミック交渉からの離脱、海外援助の90日間停止と見直しに踏み切る一方、米国がこれまで加盟してきたすべての多国間組織及び国際条約を180日以内に包括的に見直すとする大統領令に署名した。これが現実になると、約14%分のお金がWHOのもとに入って来なくなるのだ。因みに日本のWHO会計負担額は1・13%、中国は0・32%。比較すると米国の存在感がよく分かる。

 詫摩さんは、米国のこの政策変更がもたらす影響について、微に入り細を穿って述べ、世界の人々の健康が悪化の一途を辿ることになると警告する。そして保健分野における国際連携の意義や、取るべき日本の立ち位置などを多角的に論じている。これを読むと、米国の凄さが理解出来ると同時にトランプ氏がいかに酷いことに手を染めようとしているかも分かる。

 「健康面」に加えて、関税をめぐるトランプ氏の仕業も全部「悪夢」で終わり、世界中が米国の有難さが分かって目が醒めるという劇的変化を待望したいのだが?「トランプさん、あんたの凄さはようわかったから、もうめちゃせんといて」とのセリフが現実の中の悲鳴と怒号で、かき消されそうなのは、めちゃ怖い。

⚫︎『公明』ならではの役立つ「知的お宝」探しが楽しい

 さて、最後に5月号に込められた「知的お宝」とでもいうべき面白くて役立つ情報を3つ紹介したい。一つ目は、前回も触れた浜崎洋介さんの超刺激的発言である。一杯ある中から一つに絞ると、彼が日頃家族や友人、仕事仲間と議論している事柄が、「そのまま国政レベルで議論されていると感じたことは、この数年のあいだ、一度もありません」「『市井』の感覚と『霞が関』『永田町』の感覚が、完全にズレている」とのくだりである。これを読んで、事実と違う、誤認識だという政治家がいたら名乗りをあげて欲しいものだ。

 二つ目は、松本茂章・文化と地域デザイン研究所代表の「文化✖️地域✖️デザイン」学の提案だ。アカデミックスペース「本のある工場」を開設したという彼の試みは、これからの日本を甦らせるとてつもない挑戦だと思う。「社会を元気にする『総がかり』な学問の創造を」というタイトルには魅せられた。読売記者を彼がしていた頃を知っているが、この変身に驚いた。引っ張り出した『公明』編集部の眼力に拍手したい。

 三つ目は、安成洋・映画『港に灯がともる』プロデューサーの寄稿。この人は、かの有名な『心の傷を癒すということ』の著者・安克昌医師(故人)の実弟である。兄は、阪神淡路大震災の直後から自身も被災しながら被災者の「心のケア」に取り組み、その1年間の記録をまとめた。弟はそれを映画にした。

 兄・克昌さんの残したものを「「生きづらさ」を独り抱える人の傍らに寄り添う作品に」して、普及に取り組む弟・成洋さんの戦い。震災後30年の今船出した「兄弟船」の行く末をしかと見届け、応援したい。(2025-4-23)

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