石破茂首相が退陣表明をした。思い返せば去年の9月28日にブログ「後の祭り回想記」で、『拝啓石破茂新総裁殿』というタイトルで、私信のかたちを取りつつ僕の新総裁への期待を述べた。あれから一年足らず。正直、無惨な結果をもって石破さんは総裁の座を降りることになった。この間、同首相とは時に応じてメール交換をしてきた。率直で不躾な僕の思いを幾分かはオブラートに包んで、〝厳しくも涼やかな注文〟をつけた。超忙しい身でありながら、石破さんはほぼ全てに返信をくれた。こういう姿勢が、外交の場で交流をいい加減にしてまで、スマホを弄ってると叩かれた原因の一つになったのではないかと、僕は恐れた。ここでは、退陣を表明してしまった首相に、あれこれと追い討ちをかけるようなことは控える。それこそもはや「後の祭り」である。それより僕は石破総裁を破り捨てようとする自民党という政党と、政権を組んできた公明党代表に一言申し上げてみたい。
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拝啓 公明党斉藤鉄夫代表殿
斉藤さん。連日の闘い、お疲れ様です。貴方とは一緒に衆議院議員に当選した際(1993年)に初めてお会いしましたから、もう32年が経ちますね。「失われた30年」と呼ばれる年月の大半をお互いに政治家として過ごしてきました。僕は現役を退いてもう12年ほどが経ちますが、貴方は益々重要なお立場で走り続けておられますこと、まことに感嘆にたえず、心より敬意を抱くしだいでございます。
⚫︎私のメール読んでくれたなら返信を
さて、先日あなたが元自民党の某大物代議士とある週刊誌上で対談されたものを拝見して、大いに感じたところがありましたので、その感想を書いてメールで届けました(8月27日)がお読み頂いたでしょうか。もう大分日が経ちますが、なしのつぶてなのは残念です。同誌上で、元自民党代議士は「早く自民党とは袂を分かつべき」との意を込めた発言をしておられたと記憶していますが、実に面白かった。彼をあまり評価してこなかった自分を恥じました。あの人からすっごく尊敬されている代表を改めて見直したしだいです。
それより、公明党党員、職員(議員)歴が貴方より古くて長い者としての率直な感慨を述べた部分を思い出して欲しいと思います。「自民党を倒すことに青春をかけてきた僕のような昭和40年入会、入党の人間(44年公明新聞入社)からすると、今の自民党のボロボロの体たらくは、遂に宿願達成せり、以外の何ものでもないようにみえます」━━このくだりです。ここをざっと読み飛ばさずに、噛み締めてほしいと思うのです。宿願達成とはなんてオーバーな言い回しをするのかとか、自民党は友党なのに失礼じゃあないかと言った感想を持たれるかどうか。このあたりは公明党の人間としての重要な分岐点だと思います。今のお立場を束の間棚に上げ、素直に過去のご自分の情念の佇まいを思い起こして欲しいのです。
私はかねて公明党の歴史は結成された1964年(昭和39年)から数えて何年と、平板に捉えてはいけないと思ってきました。地方議会からすれば結党60年であっても、国会としては、21世紀直前からは与党になって、それ以前の野党時代とはガラッと変わった政党になったとの認識を持つことが大事だと思うからです。ただ、かたちは違えど、こころは変わらず、公明党の党是、目的は「日本の政治の改革」でありました。ぶっちゃけて言えば、具体的には自民党的な大衆と遊離した金まみれの汚れた政治をまともなものに変えることだったのです。
⚫︎自民党総裁選を傍観せず、公明党内大論争を
政治理念で言えば、本質的には自民党は保守、公明党はリベラル色豊かな中道主義です。仮に今の自民党が保守色が色褪せてきたというならそれは公明党の成果、公明党が中道らしさを失っているとみられればそれは自民党のせいというべきでしょう。今、自民党が結党以来のピンチというなら、公明党も同様に結党以来の瀬戸際です。要するにお互い様。どっちも「連立政治のジレンマのなせる業」で、〝自分らしさ〟を失ってきた結果が党勢に如実に出ているというべきです。総裁選挙に向き合うこれからの流れの中で、自民党からは「解党的出直し」云々との言葉が飛び交うと思います。ほんまにやる気があるのかどうか、大いに疑問です。その動きを真正面から見据えて、公明党は本気で「解党も辞さず」の心意気を天下に示すべきです。
これまでのような、派手な自民党総裁選挙の展開をじっと待っていて、新総裁が誕生したら、両党間で連立政権に向けての政策協議や政権構想的なものをそそくさとまとめて済ませるだけではならない、と思います。公明党として自公連立の是非やあり様から「この国のかたち」をめぐって徹底的な論議を展開すべきだと存じます。世の中があっと驚き、メディアも注目するような議論をするのです。公明党には他の政党に負けない機関紙があります。発行部数において、幅広な中身において、日本一と言っていい存在です。そこでガンガン報道して欲しいものです。自己開示力を天下に示すいいチャンスです。
選挙時に圧倒的なスペースを割いて候補者の絶叫場面が紙面を独占してきました。あれくらいの熱量で、党内大議論をすべきです。それをまず第一に要望したいのです。心から待望しています。 敬具 (2025-9-10)