【59】「複合危機」の今こそ国際協力の渦を━━JICAの先達とのご縁/12-28

 2025年(令和7年)もあと数日で幕を閉じます。去り行く年も僕はよく人に会い、話をし、ご縁を結びました。26日には、神戸で恒例の異業種交流会があり、冒頭の30分間、「国際協力」をテーマにした勉強会がありました。講師は、独立行政法人「国際協力機構(JICA)」の木村出(いずる)・関西センター長。実はこの人は姫路西高を経て東大教育学部に学んだ俊英ですが、なんとまた僕の友人である電器商にして小説家の諸井学(本名・伏見利憲)さんとそれなりの関係のある人でした。お会いするまでは全く存じ上げなかったのですが、僕の「姫路はどちら?」との問いに「的形です」との答え。「ン?電器屋サン知ってますよね?」「ああ、伏見電機さんですね」ときた。世界を股にかける国際協力のスペシャリストが、2足のわらじを履いた二刀流の使い手(日本古典文学とヨーロッパポストモダン文学)と、旧知の間柄だったとは。いやはやこのご縁も有り難く、お話もめっぽう興味深いものでした。講義を聞く耳も一段とそばだったことは言うまでもありません◆講義は分かりやすい手作りのレジュメ(写真左)をもとに展開されました。まず、現在の世界が100年に一度と言われる「複合的危機」(①社会システムの危機=紛争(ウクライナと中東)②生命システムの危機=感染症(コロナ、インフルエンザ)③物理システムの危機=気候変動、気候変動に由来する激甚災害)にあるとされました。そのうえで、脅かされる「人間の安全保障」の実態を丁寧に述べられたのです。例えば、世界各国の政治体制、生活水準、国力の位置付けが、一人当たりGDP の縦軸と、自由民主主義度の横軸によって一目でわかる図表は、瞬時我が目を疑いました。この30年で、日中両国の国力の関係が逆転してしまった姿が、見事に描き出されていたからです。知ってはいても改めて比較されると、ショックでした◆そうした国際的状況の変化の中で、日本政府の国際協力の実施主体としてのJICAの役割をわかりやすく説いていかれました。「信頼で世界をつなぐ」というビジョンのもとに、国内外での縁の広がりを作っていく。それぞれの「国づくり」に立ち合うことが、いかに難しくてもやりがいあるかが語られていきました。この人が前半生をかけて取り組んできた仕事の醍醐味が鮮やかに浮上してきたのです。現役時代に外務委員会に所属して、JICAについてもわかっていたつもりでしたが、海外拠点が97ヶ所にあり、国内拠点が15ヵ所にあって、職員数が1979人、協力対象が145ヵ国・地域だということや、世界からの受け入れ研修員、留学生が13083人(累計約70万人)に及ぶことから、専門家や海外協力隊の派遣人数が8731人(累計約27万人)にも達していることまで、新鮮な驚きの連続でした◆こうした講義の合間に、ご自身の自己紹介を写真で披瀝しつつ巧みに織り込まれたのですが、これがまことに興味津々。軟式野球部に所属した東大時代から始まって、社会人3年目にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に留学して教育学博士号を取得したこと、フィリピン、インドネシア、イラク、アフリカなどの地域担当を経て(これまで51カ国を訪問)、この3年関西センター長をしてきた経緯などを楽しそうに語られたのです。関西時代の最大の思い出は、兵庫県立大学で「国際関係論入門」の講座を非常勤講師として担当されたことのようでしたが、さぞ魅力的な講義だったに違いありません。さらに、海外に留学中も、海外駐在中も、姫路の秋祭りには一時帰国して、屋台を担ぎ、昔の仲間との語らいで「根っこ」を確かめたとか。神戸新聞の記事(2025-10-5)の法被姿の写真には、びっくりするばかりでした。姫路出身とはいえ、本格的な祭りとは縁遠い地域(城西校区)の身としては、ちょいとした羨望感が込み上げてきました◆昨今の日本では「外国人との軋轢」がむやみに取り沙汰され、「日本人ファースト」が妙に呼号されています。気になるのは、「外にお金をだすよりも、内に出せ」とばかりに、海外援助への無理解が目立ってきていることです。「失われた30年」で、「日本人の矜持」までが損なわれてきているとしたら残念です。木村さんの豊富な体験にねざした麗しい「国際協力の手ほどき」を聞きながら、新たな知恵をめぐらせる必要を感じました。定年後に有り余った世間のパワーを活かすために「リカレント教育」の新展開を試みようとの動きが私の身近にあるのですが、それとの合流です。ともあれ、年の瀬にまるで一足早いお年玉を頂いたような気分になりました。木村さんは、新年から関西勤務を終えて、東京に栄転されるとのこと。「転勤を前に神戸で最後の仕事をさせていただき、いい思い出ができました」との声がとても爽やかでした。(2025-12-28)

 

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