2026年新年の全国5大紙の特集、トップ記事のテーマ、は大きく2分されていた。一つは、人間とAIの関係をめぐる企画特集(朝日と日経)であり、もう一つは、対外的な危機としての「中国」を扱ったもの(読売と産経)と、国内政治に内在する「政治とカネ」の問題に関わるニュース(毎日)である。一方、各紙は社説で、国際社会の秩序の大変動について取り上げていた。以下、要点をまとめてみた。
★AIと人間を区別するものは「目の虹彩のあるなし」
「AIの時代」(朝日)の初回は「あなたは人間ですか」という問いかけで始まる。人間が人間であることは目の「虹彩」で証明される、との着眼である。「オーブ」と呼ばれる端末をのぞくことで、虹彩が読み取られ、本物の人間として「認証」され、IDが発行される。現在既にこの仕組みを持った「オーブ端末」は世界で約1千台。そのうち、日本では約240台が稼働している。目玉が、指紋や顔よりも本人の証(あか)しを示す精度が高いというのである。世界における登録者数は昨年12月で約1800万人になったというのだが、これからどう進展するかについては、やや疑問視されていることがうかがえる。
同紙2面では、図や絵を入れてAIの歴史を分かりやすく解説している。1956年に人工知能(AI)が誕生してから20年余で、第二次のブームが、さらに2000年代に入って第三次ブームが起きたとされる。そしてチャットGPTが公開(2022年)され、AI開発者がノーベル賞を受賞(2024年)し、米IT 大手4社(グーグル、アマゾン、メタ、マイクロソフト)の設備投資額が約37兆円(2024年)から、約57兆円になった(2025年)との歴史を持つ。この数年の歴史しか知らない者にとって、「世界変える力 ビッグテックの手中」との見出しが目に染みわたる。
担当した編集委員は「AIの時代は、国家ですら管理できない力と向き合う時代になりうる。進化はまだ緒に就いたばかりだ。AIに何を託し、何を託さず、どんな社会を目指すのか。その分岐点に私たちはいる」と、世界を変える力が手の届かないところにあることを率直に認めている。今頃になってことの重大さを知った者には、すこぶる印象深い。
★AIを生まれながらに使いこなすα世代と市場の未来
一方、日経の『α(アルファ) 20億人の未来』は、経済紙らしい切り口で、2010年頃以後に生まれたα世代が、これからの人類の命運を握るとの見立てのもとに、未来予測を試みる。生まれながらにデジタル端末やSNSに囲まれて育った世代は20億人に達しており、人類の変革期における主役にならざるを得ない。この世代の特性は、多様性や持続可能性、グローバルな視点を重視する価値観を持ち、消費面では、ブランドや所有志向よりも「体験」や「タイムパフォーマンス」を重視する傾向性がある。
やがてこの世代は、1960年〜80年ごろに生まれたX世代や、81年から95年ごろのY世代、96年から2009年ごろのZ世代にとって代わる運命にある。その時代には、中国やインドが後衛に退き、代わりにアフリカが前面にでることになり、人類はより厳しい気候変動や地域紛争に悩まされるはずとみる。その際に、人類は様々な難題を乗り越えて、より豊かなステージに立ち得るかどうか。α世代は、その鍵を握ることになるというのだ。
日経紙は想像される未来に向けて、その時代を考える上での「言論空間」を提供する役割を若者たちと共に果たした
いとする。だが、そこで待ち受けるのは、「低成長時代」。右肩下がりの、実質GDPの潜在成長率を予測するグラフが紙面に掲げられている(写真の左端グラフ)。自ずと多難な前途を想起せざるを得ない。
★人間の内面生活の強化に向けての考察こそ重要課題
AIを論ずる二紙の書き手たちは、奇しくも孫の世代の未来予測に思いを馳せている。彼らは恐らくチャットGPTとの接触を通じて、AIの威力を思い知ったはず。かく言う僕自身のAIとの出会いがそうだった。投げかけた問いかけに瞬時膨大な資料が提示され、それこそ目を丸くするだけだった。AIの持つ能力を前にして自他の差異に驚き続ける者は、二紙の書き手たちの紙背にまるで我が影をみたような覚束なさを感じざるを得ない。
孫たちの行く末に不安を抱く老爺婆たちに、いま必要なものは何か。それは、人間の内面により深い関心を持つことだろう。AIとは?AIとどう向き合うべきか━━そう考える前に、人間とは何か、自己自身とどう向き合うのかの、古いテーマに改めて目を向けるべきだろう。そして今、人間一人ひとりに必要なものは、自己から離れた「遠心力」ではなく、自己自身の内なるものへの「求心力」であるに違いない。そう思った時に、AIという2文字が「愛(あい)」という1字に読めた。(2026-1-5)