●「やっぱり本屋が好き」ー『論座』に登場
朝日新聞の雑誌『論座』がこの年の8月号に「やっぱり本屋が好き」とのタイトルで、識者にアンケート調査をしたものを特集で掲載しました。「私が通いたい書店 理想の書店 115人に聞く」との見出しで、書店と書物をこよなく愛する各界の方々に思いをつづっていただいた、と前文には書いてありますが、巌谷國士(文学者)、堺屋太一(作家)、佐野眞一(ノンフィクション作家)、小山薫堂(放送作家)氏らと並んで、私の名前と文章が登場しています。好きな書店の名前と、書店への注文、不満。さらには、書店に対する提案を述べてほしいという注文でした。
私は、東京にいる時は、赤坂宿舎に入っていて(建て替え時は、河田町のマンションに転居)、夜な夜な3丁目にあった「文鳥堂」という書店に顔を出していました。偶々、そこの主人が大学の先輩だったこともあり、本の話に始まり世事万般に及ぶ話題を交わした楽しい思い出があります。元はといえば、大先輩・市川元書記長のお気に入りの書店で、二人して深夜ここを訪れることも少なくなかったのです。残念ながらすでにこの書店はなく、今では飲食店に替わってしまっています。この雑誌の問いかけに私は、「ここはいつも本の配置に気を使っていて、決して広くはない空間を精一杯使っていた」と褒めています。
すでに何度か触れてきたように、私は本好きの政治家で通っていました。さまざまな媒体で本に関することが取り上げられてきましたが、この企画のように、「ネット書店が盛んな時代に、書店でしか味わえないあの悦楽を知ってるのだ」(編集部)という触れ込みのもとに、名を連ねるのは珍しいことでした。昨今、アマゾンの進出で通販万能の時代となり、各地で個性的な小さな本屋が姿を消したり、苦戦を強いられているのは残念なことです。
●郵政民営化問題ですったもんだの大騒ぎ、衆議院解散へ
自民党は確実に潰れかけているー郵政民営化関連6法案が採決された7月5日の衆議院本会議場での私の実感です。自民党の議員が反対の青票を投じるたびに、民主党席がどっと湧き、拍手が高まる情景を見つつ、つくづくそう思いました。正直言って、ここまで反対票が多いとは思っていませんでした。最終的には小泉首相も修正に応じ、反対派も妥協を図るものと見ていた私の誤算でした。「自民党を変える。変えられなければ、自民党をぶっ潰す」こう公言して憚るところがなかった小泉首相。この法案審議の過程でも、その答弁の一人よがりぶりが際立っていました。衆議院では51人もの自民党議員が造反する中、五票差で辛うじて通過しましたが、参議院では否決されてしまい、首相は公言していた通り、衆議院解散総選挙の道を選択しました。
公明党は郵政民営化については、一貫して賛成の立場でした。中央から地方へ、官から民へ、といったことを主軸にした小泉構造改革は曲がりなりにも進んできており、郵政民営化はその欠かせない柱だったからです。郵政三事業はやがて経営が厳しくなるのは目に見えており。一日も早い民への経営主体の移行が望まれていて、27万人にも及ぶ公務員を民間雇用にすることや、郵貯、簡保への政府保証をなくすことによる経済への波及効果は大きいと見ていたのです。
この国会の最終盤では、55日間の会期延長がなされ、すったもんだの自民党の内輪揉めー自民党史上初めての総務会での全会一致が崩れ、多数決による決定ーが白昼の元に晒されました。8月8日に衆議院は解散され、8月30日公示、9月11日の投票となりました。真夏の総選挙となったのです。結果は自民党だけで296議席。公明党の31議席(3議席減)を加えると、与党全体で327議席となって、三分の二を軽く超えてしまいました。民主党は64議席も減らして113議席になり、野党勢力は大幅に後退しました。結局、小泉首相の派手なパフォーマンス(自民党内の〝刺客騒ぎ〟など)のみが際立ち、小泉劇場で聴衆が巻き込まれてしまうなか、他の政党は全部吹き飛ばされたというのが実情でした。私は近畿比例ブロックで前回に続き、名簿順位二番で当選しました。前回の総選挙から僅か2年足らず。これで5期目になったわけです。
●憲法改正のための「国民投票法」の審議がスタート
先に、憲法調査会は5年間の報告書がまとめられたことを区切りにして、終わりました。衆議院議員選挙を経て、新たな国会からは、憲法改正のための手続き法としての国民投票法を審議する特別委員会が設けられたのです。10月6日に開かれた第一回目の委員会でこれからの方向性を議論しました。いよいよ第二段階の始まりです。私は党を代表して、この日発言しました。
これまでの憲法調査会は、予め憲法改正を意図するものではなく、広範囲な観点から現行憲法の実施状況をつぶさに調査したものでした。その結果、幾つかの項目において憲法を変えた方が望ましいとの意見が多数を占めたことは事実です。このため、調査結果を踏まえてこれからどう具体化するかの議論の場が必要です。しかし、それは第三段階であって、その前の第二段階としては、これまで現行憲法が制定以来用意してこなかった改正のための手続きとして国会法改正やら、改正手続き法としての国民投票法についての取り決めをせねばなりません。新しくできた委員会はそれを議論する場ということでした。
私は、最初の発言の中で、憲法の全面改正を国民有権者に問いかけるのは、煩雑さゆえに不可能に近いとの認識を示しました。このため、国民に直接改正を問いかける場合は、一括方式か、あるいは数点に絞り込んだ上での重点方式とならざるを得ない、と述べました。さらに、そうであるからこそ、公明党が主張しているように、数点に絞ったうえでの新たに加える方式としての加憲が好都合ではないか、と述べたのです。
この日を皮切りに国民投票法の議論が始まったのですが、最後までこの委員会に所属して、法案作成の作業をやり切るつもりだったのですが、そうはいかない事態が急にこのあと起こってきたのです。(2020-6-19 公開 つづく)