都民ファースト圧勝から、明日の日本をどう見るか

今を時めく小池百合子東京都知事と最初に言葉を交わしたのは、「住専問題」の頃(90年代半ば)。衆議院予算委員室の前に座り込みをしていたときのことです。公的資金を使って銀行救済をしようとしたあの問題に抗議するために、数日間行動を共に(問題の本質についてはここでは触れません)していました。彼女は当時は未だ誰もあまり持っていなかった携帯端末を常に傍に置き、「もうすぐこれに電話機能が付くのよ」と目を輝かせていたのが印象的でした。スマホが全盛期を迎える前夜のことです。為替変動のチエックが欠かせぬあさイチの行動だなどといったつぶやきを聴いて、世の流れに敏なるひとだと妙に感心をしました。後に公明党の兵庫県代表をするようになった私は、自民党の兵庫6区の小選挙区候補としての彼女を応援演説をする羽目に。開口一番「この人は男にしたいいい女です」と、セクハラまがいの紹介で笑いをとったものです▼その彼女が後に防衛相になり、自民党総裁選挙に名乗りを上げるようになりました。選挙区を東京に鞍替えされたこともあって、当然ながら疎遠になりました。都知事に転進して一年足らず、今回の都議選では「都民ファースト」を率いて見事に55議席を獲得。自民党を惨敗に追い込み圧勝したことは、昔の仲間として中々に感慨深い。尤も、もう感傷めいたことを披露するのはよします。それより都議会公明党の「全員当選」のことです。選挙の厳しさの質が今回は全く違いました。「小池知事登場で乗り換えるのか」「自民党と袂を別つのか」といった批判のまなざしです。石原慎太郎、猪瀬直樹、舛添要一と続いた都政の流れに「是々非々」ではあったものの、どっぷりとつかってきていたはずとの責任を問う声もありました。小池氏出馬に支援をせず他候補を推した経緯も暗い影を落としました。ともあれ、都政改革の大仕事には小池氏の登場を待たねばならず、自ら風を起こすに至らなかった不明は恥じねばなりません▼問題は国政への影響です。都議選において自公の関係に亀裂が入ったとして、しこりが残る云々とメディアでは専らです。20年近く続く関係は一朝一夕に崩れるものではないとの見方はあるものの、長すぎるがゆえの悪弊も意識せねばならないと思われます。「”安倍政治”は許さない」との批判の声はここ数年続いています。発信する側は同じ意味合いからでしょうが、受ける側には違って聞こえます。政策展開における安倍政治批判から、政治姿勢への傲慢さ批判への変化です。前者には公明党も与党として責任があります。「安保法制」をはじめとして、程度の差はあれ”二人三脚”的側面は否定できないからです。しかし、後者には直接の責任はない。「森友」「加計」問題などにみる一連の首相の政治姿勢への疑惑。自民党関係者の不祥事や不用意な発言。これらの背景には信じがたいほどの脇の甘さと”安倍一強”政治の傲慢さがあると思われます。先日、古い友人である「自民党の一匹オオカミ」村上誠一郎氏が電話をかけてきて、もっと公明党が安倍政治にブレーキをかけてくれねば、と嘆いていました。彼のベースには、小選挙区制度批判があり、「安保法制」や「憲法改正」などへの不満があります。このところ二週連続で日曜日のテレビ番組『時事放談』に登場し、気を吐いています。全面的な賛同はともかく、”万人たりとも我行かん”の政治姿勢には共鳴します。自民党も公明党ももっと安倍首相に対して物言うところは彼に学ばねばならないかもしれません▼ところで、共産、民進両党が都議選結果から、国政での安倍批判に野党共闘の勢いをつけようとしていますが、はなはだ疑問を抱かざるをえない動きです。2議席を伸ばした共産党はともかく、真逆の2議席減で僅か5議席しかとっていない民進党は、まずは足元への見直しから始めるべきではないか。他党のことに口出しすべきではないでしょうが、そういわざるをえないのです。都議選を前にして民進党から相次ぐ離党者が出たことの意味は、必ずしも選挙目当てだけではありません。共産党との共闘路線への反発があることは否定できないのです。そこを充分に意識しない限り、この党に明日はない。巨大与党に対抗する大きな野党が育たないとなると、日本の明日もまた暗くなってしまう。都民ファーストの国政への進出が注目されるゆえんとも関係してきます。小池氏はれっきとした保守主義者で、安全保障政策においても憲法においても、その方向は安倍首相と大きな違いはありません。ある意味で大阪を基盤とした日本維新の党との類似性を感じます。そこで、やはり大事なのは中道主義の党・公明党の立ち位置、振る舞いです。東京都議会で小池都民ファーストと共闘し、国会で安倍自民党と共闘しながら、見据えるおおもとは「大衆のための政治」だという点を片ときも忘れてはならない。いよいよ日本の政治が面白くなってきました。   
                                              (2017・7・4)

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