いちから解る集団的自衛権問題(下)ー正しい認識と評価

さて今回の件についての評価を見てみます。新聞の反応は、朝日、毎日、東京(神戸など共同通信配信記事を使う地方紙を含む)などは大反対の論陣を張っています。一方、読売、日経、産経などは肯定的な位置づけをしています。ここで指摘したいのは、世論は二分されているということと、そのように分かれる原因は、それぞれの目線によるということです。つまり、国家の安全保障を理想目線で見るか、それとも現実目線で見るかということで、180度違って見えるということです。今回の閣議決定文を読むと「集団的自衛権を限定的に行使容認した」といっても、内実は曖昧だった自衛権の在り様を整理し、歯止めを明確にしたうえで日米防衛協力が、スムースに行えるようにしたと言うことなのです▲安倍首相のこれまでの言動によるイメージがタカ派的色彩が強いことから、限定的にせよ行使を容認するのは、解釈による改憲だと言うのかもしれませんが、これは思い込みによる過剰反応という他ありません。公明党がしっかりと憲法9条の枠内でしか出来ないように歯止めをかけまくり、ブレーキ操作が作動するように仕掛けを作っているから、まったく問題ないというのが正しい評価なのです。首相自身も「湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してない」と繰り返し記者会見などで述べている通りです▲外務省出身で作家の佐藤優氏は「個別的自衛権の枠を超えることが一切ないという枠組みを、安倍首相の『集団的自衛権という言葉を入れたい』というメンツを維持しながら実現した」と述べており、私も全く同感だ。また、前の防衛大学校校長で日米関係論の権威である五百旗頭真氏は「自民党と連立を組む公明党が野党全体の役割を代行した感が深かった。戦後日本の伝統である平和重視を体して、政府が不用意に跳躍するのをチェックしつつ、難しくなった安全保障環境に日本が堅実に対処するようリードした」と指摘している。その他にも”見てる人は見てる”と思う論評には事欠かない▲そのうえで、私としては気掛かりなのは、こうした公明党の活躍ぶりを当の公明党自身が「やった」「どうだ」ということに対する違和感を、党の周辺で抱く人が少なからずいるということだ。集団的自衛権の行使は絶対反対と叫んできていながら、限定的に容認したことを手放しで自画自賛されると、「おいおい、ちょっと待ってよ」という気分になることを、公明党の幹部は知っていた方がいい。確かに自民党のごり押しを巧みにかわして、しかるべき手だてを講じたことは高く評価できる。しかし、それは従来曖昧だった個別的自衛権の範囲を明確にしたに過ぎない。その辺りを丁寧に語ることが必要だ。でないと、一体どうなってるのだ、と公明支持者やウオッチャーは戸惑うばかりではないか。そして当面は、明日、明後日と行われる衆参両院の予算委員会で、与党内の認識の差が露呈することなどがないように、さしあたっては、与党協議の中味を整理して公表するべく準備をしてほしい。(2014・7・13)

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