先月の26日に埼玉・東秩父村での熊森協会主催の会合が終わったあと、ひとり東京に向かいました。この期間の東京はトランプ米大統領の訪日と重なっていて、混雑を危惧しましたが、それほどでもなく、元気に3泊4日の全行程の後半を過ごしました。以下、晩秋の東京を駆け回った軌跡を報告します。
⚫︎安保研の定例会で公明党の連立離脱めぐる質問攻めに
一般社団法人「安保政策研究会」は、浅野勝人元外務副大臣を理事長に、官僚、メディア出身者ら25人ほどで構成されており、ほぼ毎月の定例会の開催と、リポート誌が隔月に発刊されています。東京在住ではない私は年に1-2回ほどしか定例会には出ていません。今回は私の上京に合わせて10月27日に開いて頂きました。時あたかも高市早苗首相の誕生、公明党の「連立離脱」という時期に重なりました。このため、冒頭1時間ほど私からの報告と質疑応答に当てられました。
私は今回の「連立離脱」について、まず公明党が自民党の新執行部から「政治とカネ」の中心テーマである企業献金廃止にむけての前進が見られないので斉藤鉄夫代表が決断した経緯を述べました。一方、無遠慮な自民党人事などにも原因があることを指摘しました。その結果、これまでの自公政権が抱えていた〝政策的ねじれ〟が解消されることになり、両党ともに「スッキリ」したことになったと率直な感想を述べたしだいです。
これを受けて出席者から①「連立離脱」で公明党の安保政策や憲法をめぐる姿勢は「自民党離れ」になるのか②来る衆院総選挙では公明党の自民党への選挙支援は一切ないのか③これまでのストッパー役が放棄されることを懸念する向きがあるがどう考えるかなどの質問がありました。これに対して、私は①基本的にはそうだ。公明らしさが顕著になる②従来からの人間関係があり、一気に離れるとは考え難く、あくまで人物本位だ③内からの歯止めではなく、外からの歯止めに徹する━━などと答えました。
また、この26年自民党と共に「政治の安定」に寄与する方向性を堅持してきたが、これからは「中道改革路線」のもと、かつての〝社公民路線〟とは似て非なる手法で、古い自民党政治を変えるために全力を上げるはずとの公明党の立場を強調。「極中道」から「真中道」への路線転換を解説したのです。
⚫︎厚生労働副大臣時代のスタッフと旧交を温める
「安保研」定例会の前日夜には、東京駅そばの居酒屋で、東京近辺に住む私の3人の甥たちとの懇談会を久しぶりに開催、叔父(伯父)らしさを発揮しました。3人とも父親が既に他界しており、私は親父代わりを自負。それぞれ40、50、60代の3人は、大企業勤務、薬科大准教授、IT起業家と道は異なりますが第一線で活躍中。AIの活用などをめぐって刺激的なやりとりができました。
27日夜には西麻布の霞会館で、私が厚労副大臣時代(2005-6)に支えてくれた、同省幹部6人の仲間たちと懇談(写真)しました。厚労省勤務は僅か1年間でしたが、20年間の議員時代で最も印象に残っています。というのもこのメンバーと濃い関係を持てたからです。当時の秘書官がつい先ほど同省官房長になったほか、医薬局長、生活衛生課長も誕生、20年の歳月の重みを心底実感しました。この間、彼らの人事上の進展があるたびに集まり自分の直接の部下であるかのように激励してきましたが、今回は大きな区切りなだけに、一段と嬉しい機会になりました。
安保研例会と厚労省仲間の集いの前の時間帯には新宿にて、川成洋・法政大名誉教授(英文学者にしてスペイン研究家)と、これまた久しぶりに懇談しました。この人とは公明新聞時代に「原稿依頼」してからのお付き合い。最近では「書評」を通じて親交を深めている間柄です。今回は数年前に紹介した慶大同級の畏友・尾上晴久君も同席、3人であたかも恩師とゼミ生との語らいのような場になりました。川成先生の教え子や息子さんの話題から始まって、テーマは多岐にわたり、時の経つのも、我が身の丈をも忘れるほどの濃密な会話の連続でした。
帰りには、西洋音楽の世界で大いなる足跡を残したハンス・フォン・ビューローの伝記本(アラン・ウォーカー著、川成洋監修)を、「奥さんに」と言ってお土産に頂きました。これには三重の意味で驚きました。一つは、同先生が600頁にも及ぶ大部の本を監修され、これが今年4冊目の出版になること━━83歳にしてこの猛烈な仕事ぶり。二つは、ピアニストまた指揮者として生涯に3000回を越えるコンサートを全世界で開くなど、西洋音楽の巨人たる人物の〝生涯と時代〟のことを全く私が知らなかったこと━━音楽の世界への我が無知ぶり。三つめは、川成先生が私の妻が元ピアニストを志していたことを覚えてくれていたこと━━記憶力とお心遣いの細やかぶり。果たして私たち夫婦がこの本を読めるかどうか。ずっしりと重い宿題を戴いたようで、帰り道がいつもにも増して遠く感じられました。(2025-11-5)




わずか80頁の小冊子だが、日本の政治、経済、社会、文化をめぐる大事な情報の解説が満載されている━━公明党の理論誌『公明』のことである。今発売中の10月号も実に面白くためになる。色んなことを感じるがここでは一点に絞る。公明党が先の参院選で負けた根本的理由についての専門家の見立てと、公明党の60年の「大衆重視」の取り組み姿勢そのものから、考えてみた。