●市川町で聞いた地域おこし映像制作の講義
淡路島で初めて面識を得ていらい気になる存在となった榎田竜路さんから、3月末に連絡がありました。姫路の北隣の神崎郡市川町で、自身が主宰する企画の講座が開講されるので、のぞきにきませんかというものでした。桜花爛漫の4月8日に、稲垣正一元市川町議を誘って出かけました。榎田さんは町の青年たちに、映像制作を通じて、地域の誇りを形にする手法を伝授しようとしていたのです。
市川町は、日本を代表する映画脚本家である橋本忍さんの出身地。『羅生門』や『七人の侍』などの作品群で、黒澤明監督とコンビを組んだ人です。同町では、橋本さんにあやかって映像の力を町おこしに役立てようと、その道のエクスパート・榎田さんを鎌倉から担ぎ出したのです。その方法は、地域に住む様々な分野での著名人にインタビューをし、その中身を2分間の映像にまとめるーこれだけです。その行為を通じ、青年たちは町の良さを感じ、見た人たちも誇りを味わえるー結果的に町おこしに繋がるというわけです。面白い発想だと感心しました。
講義後、姫路城周辺を案内したのですが、桜の木の下の花見客の固まりから「センセー」との大声が。驚きました。瞬間二人とも相手のことだと思って、顔を見合わせ、キョトンと。先ほどの聴講生の女性の一人だったのです。会場での講義終了後直ちに移動したものと見えます。その旺盛な行動力に舌を巻きつつ、10人ほどの車座に。花見酒をいただきつつ、即席座談会に興じました。見覚えのある青年企業家もいました。今なお忘れられない懐かしい思い出となっています。
●北前船寄港フォーラムイン淡路島の衝撃
私が地域おこしの試みで悪戦苦闘している間、横目で注目していたのが「北前船交流拡大機構」なる一般社団法人の活躍です。その昔、北海道・函館から、日本海沿いに南下し、瀬戸内海から大阪、京都へと物資を運んだ海上ルートを担った船を「北前船」といいます。同法人は、これを現代の地域活性化に役立てようと、北前船が寄港した港を持つ市町村間の連携をとる狙いを持っていました。
この団体のトップは作家の石川好氏(元秋田美術工芸短期大学長)で、実質的に陰で支える専務理事が浅見茂氏(元創価学会男子部長)です。彼の繋がりで北海道から関西に及ぶ創価学会の元男子部仲間の猛者たちが加わり、美しき花ならぬ、屈強な陣笠を添えていました。しかも私の慶大時代の級友で元日本航空の最高幹部だった梶明彦氏まで参画しているというのですから驚くほかありません。
私が「瀬戸内海島めぐり協会」の件で、国交省を訪ね、あれこれと要望した際に、担当の同省役人たちが「北前船寄港フォーラム」を引き合いに出して比較。「北前船のように、もっと地域からの盛り上げをしていただかないと」と、のたまってくれたのには忘れ難い屈辱を感じたものです。尤も、ことの起こりから背景、そして表舞台から裏の台所にいたる陣立てにおいて差がありすぎでした。
この「北前船寄港フォーラム」が5月12日に淡路島にやってきたのです。高田屋嘉兵衛ゆかりの地であってみれば当然のことなのですが、その豊かな人材群、構想力と企画力に圧倒される場面を見せつけられました。石川、浅見、梶氏らとの懐かしい出会いに心奪われつつ、気もそぞろというのが正直なところだったのです。(2021-7-12)