原生林を荒廃から守り抜くための闘いにエール

NPO法人の「奥山保全トラスト」がこのたび晴れて公益財団法人の認定を内閣府から受けました。この法人の理事を務める私としては、スタッフの皆さんが設立準備にちょうど一年かけてこられた努力が実ったわけで大層嬉しい思いで一杯です。この背景には、日本最大の実践自然保護団体である一般社団法人「日本熊森協会」の存在があります。この団体は1997年に設立され、「動物たちに帰れる森を。地元の人たちに安心を」というスローガンのもと、奥山にいろんな実のなる木を植樹して、動物たちの棲める森を復元することに取り組んできました。その闘いは、放置されたままの人工林を6割から7割間伐して、林内に日光を入れ、あとは「天然更新」に任せる”奥山再生”に重点を移してきています▼この18年の闘いの結果、日本の森林はどう変化したでしょうか。多くの人たちの森を守ろうとの意識の変化はあるものの、現実は遅々として進みません。いやそれどころか、林野庁行政はさらに森林を荒廃させています。このため「日本熊森協会」は、2006年に自らが母体となって、原生林を買い取ったうえで守る「奥山保全トラスト」をNPO法人として立ち上げたのです。兵庫県宍粟市にある氷ノ山近くのブナ、ミズナラなどが生える巨木の森120ヘクタールを篤志家たちの寄付で購入するところから出発しました▼それから約10年。現在では、手に入れた原生林は北は福島県会津若松市から南は宮崎県高千穂町まで、全国12か所1944ヘクタールにまで及んでいます。最も広いもので冨山県上市町の670ヘクタールから同じく魚津市の2ヘクタールのものまで、様々です。売買に際して売主の側にはややもすると、「奥山保全トラスト」が原生林をなにもしないで置いたままにすることを理解できない向きもあったようです。何か営利を企んでいるのではないか、と。原生林をひたすらそのままの姿で守りたいだけとの意思が理解されるのに随分と時間がかかったというのは笑うに笑えない話ではあります▼公益法人化されることで、税務上の特典を得られ、ぐっと寄付がやりやすくなることが期待されます。ただ、こうした自然保護団体がトラスト地を増やしていっても、いつなんどき公共工事を理由に、国が土地収用に乗り出してこないとも限りません。そうしたことを防ぐには、英国の例などに見倣った日本版の「ナショナル・トラスト法」が必要になってきます。いったん取得した原生林を未来永劫に自然のままに保全していくことこそ強く望まれましょう。篤志家の皆さんの原生林保全にむけての素晴らしい心に報いるために、これからもトラスト運動を支援する努力を続けたいと念願しています。(2015・2・28)

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