なんだか筋が違ってる「安保法制批判」

安保法制に関する法案が、16日に衆議院を自公両党の賛成多数で通過しました。この日の朝に私は新聞二紙(地方紙含む)を見て、すぐに全国紙の著名コラムニストにメールをしました。「安保法制の衆院通過までの貴紙の報道、評論に疑問あり。公明賛成に至る修正の経緯に目を。10年1日のごとき批判では?違う切り口を(示せ)」というものです。このコラムニストー仮にNさんとしておきましょうーは、以前にはかなり読み応えのある政治評論を本紙政治欄に書いていましたが、一面下の専属コラム担当者になってからは、そうした評論は読むことができず残念に思っています。短い欄に安保法制批判一筋の論調ではとても味のある文章は書けないようで、あぶはち取らずになっており、この新聞社はとても人の使い方を誤ってるように思われます。彼から返事はまだ来ないのですが、先にこのブログで私の言いたかったことを詳しめに書いておきます▼安保法制批判を書く新聞の論調に私が疑問を抱くのは、自民党や公明党への批判よりも、安倍首相への攻撃一辺倒が目立つことに対してです。これまでの外交・安全保障をめぐる議論のなかでも、集団的自衛権行使を限定的にせよ認めるという決断をした二つの政党に対して、失礼極まりない行為だと思うというのは皮肉すぎるでしょうか。私がかつて外交安保部会長をしていた当時に、幾たびか今回のような緩やかな行使に向けての提案をしたことがあります。その都度、党内からは反発を頂き、党の最高幹部からも却下されたものです。それは憲法九条を金科玉条とは言わないまでも、堅持することをいわば党是としてきた党ですから当然でしょう。ここは憲法解釈ではなく、憲法改正で臨むのが、政治的にも政策的にも正しいということでした。言ってみれば時期尚早だったわけでしょうか。それにしてもこの辺りの「集団的自衛権の限定的導入決断」に至る経緯を追わない新聞社というのはよほどどうかしていると私には思えます。前掲の全国紙はそれでも内幕を探る連載を書いており、それなりに読ませました。しかし、それっきりで終わってしまい、どこがどう両党の間で食い違いがあり、それがどのような妥協で落ち着いたのかは、私には分かりませんでした▼ここは、詳しく自公両党の主張の違いを暴いて見せることが、なによりも国民への説明になると思います。今頃になって安倍首相が十分に説明をするとか、できてないとか言っていますが、私に言わせれば去年の自公協議の両党の立場の違いを言うことが一番分かり易いと思われます。その点、石破茂・現地方創生大臣が当時の交渉のなりゆきに不満を持っていたことなどがヒントになると思うのですが、もはやそのあたりは忘却の彼方に追いやられています。自民党には集団的自衛権のフル展開を主張している人がいたはずで(いなかったらよっぽど変ですが)、そのあたりの意見を押し隠すなどということは、まったく同党の伝統的流れに対して失礼だと思います。そうしたことを見せずに、結果としての自公の一枚岩ぶりを強調することからは、国民への正しい説明はうまれてくるはずがないと思うのです▼戦争法制を民意に逆らって強引に採決したとか、民主主義はどこへいったのかなどと、あり来たりの批判をそれこそ飽きもせずにやるのではなく、自公協議の中身を全面公開せよと(法案作成に至るまでの公明党と自民党の違いを明かせ)迫るべきです。そのことで、集団的自衛権が抱える本質的な問題が必ず浮き彫りになると思います。それこそかつてなんとかしたいと思った(特に、海外でのPKOの武器使用や、駆けつけ警護などの緩和)私などが一番知りたいところです。もちろんそれなりに想像力をたくましくすれば分かるのですが、全面公開にはかないません。新聞社はそういう論調こそ展開すべきで、ただ情緒的に戦争に巻き込まれるなどということを声高に叫んでいるだけでは、ご先祖様に笑われる(60年安保や70年安保、PKO法導入当時の批判と同じという意味です。誤解なく)というものです。そういうところに切り込まず、ただ安倍首相の”爺さん想い”的行動にばかり捕らわれての批判をしているようでは、自民、公明の”政党的成長”になんら繋がらない(新聞社はそれでいいのでしょうが、日本の政治にとっては損失です)と思われてなりません。これからは、良識の府である参議院での議論に期待するなどという、これまた何十年このかた不動の論調が見えますが、その前にやることがないのかどうか、新聞社の皆さんはよく考えるべきでしょう。冒頭に挙げた新聞社などはできれば、コラムニストをかつての立場に戻せば、少しは鋭い紙面が見られるのに、と非礼も顧みず提案しておきます。こうしたことこそ日本の民主主義にとって間違いなく前進に寄与すると思うからです。(2015・7・18)

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