衆参同日選挙があるかもしれないとの噂が飛び交う中、結局は衆議院解散はないままに国会は閉幕しました。最後の最後まで安倍首相はその機を窺っていたことは事実のようです。解散は首相の専権事項だとはいえ、庶民感覚からすれば党利党略が過ぎるそしりはまぬかれません。解散権を弄ぶ愚が冒されずに、正直ほっとしています。尤も消費税をめぐる動きについては分かりずらさが残ります。安倍首相は二年半ほど先延ばしにしましたが、財政再建の前途はますます混迷を極めるばかりだからです▼先日の共同通信社の世論調査結果(5月末)では、4月末と比較して政党支持率で公明党が大きく支持率を落とした(4・4➡2・5)のと対照的に、自民党は37・2から44・4へと大きく伸ばしました。これはどうしてでしょうか。最後の最後まで山口公明党代表が消費税上げを予定通りに実施することにこだわり、値上げを先延ばしにすることに反対したゆえだとの見方がもっぱらです。民主党政権の末期に自民、民主、公明の三党が苦労の末に合意したことなどは忘れられ、目先の利害に敏感な世論を反映したものと云えましょう。親しい新聞記者も、公明党首脳にもう少し柔軟さがあっても良かったとの感想を述べていました。世論調査に一喜一憂するのは愚かだと分かっていながら、相も変らぬ低空での上下飛行にはため息も出ようというものです▼4日に淡路島で行われた私が専務理事を務める一般社団法人「瀬戸内海島めぐり協会」主催の観光フォーラムに、二階自民党総務会長を招き講演をしてもらいました。彼は永年観光業界に君臨するドンです。終了後の懇談で突っ込んだ意見交換を少人数でやりました。一般有権者は消費税が上がらなくて良かったと純粋に喜んでいるとの見たてを述べると共に、選挙戦略上は消費税問題は深入りしない方が得策だとの考え方を示していました。確かにそういう側面はありますが、財政再建を見据えずに人気取りに走ることへの割り切れなさはやり切れません。同じ政権党でも、予定通りあげよという公明党より、先延ばしの決断をした安倍自民党の方が支持率を伸ばすというのは皮肉なものです。このあたりの政党のスタンス、選挙に向けての政策選択は極めて難しいと云わざるをえないのです▼今回の参議院選挙では、自民、公明の政権与党に対して、民進党、共産党などの野党連合が対峙するという構図が出来上がっています。安定した政治か、それとも不安定な野合政治かとの選択です。政権担当能力のなさを天下に示した民主党が党名を、台湾の政権党と同じ民進党に変えました。その民進党に共産党が手を差し伸べるという野党共闘が模索されています。共産党の本質は革命政党というところにあります。でなければとっくにこの党こそ名前を変えてるはずです。そうしないのは共産主義に律儀なゆえで、皮肉を込めて見上げたものだといいたいです。ということで、日本の民進党は共産・中国と一線を画す台湾の民進党の心意気こそまねて欲しいものです。「安定か、不安定か」ー単純過ぎる二分化には自戒を込めながら、分かり易い選挙の対立軸といえば結局はそうならざるを得ないのです。(2016・6・6)
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流通の常識を変えた男の魅力にはまってしまう
私が現役を引退してはや3年半。今は「観光」や「医療」で地域再生、「環境」で自然再生、「流通」で中小企業を再生することなどに取り組んでいます。議員時代にやり残したとの思いもあって、どうしても気にかかることをやろうとの使命感からです。このうち、町の小っちゃな市場の生き残りにかける、一般社団法人AKR共栄会の通常総会が先日大阪でありました。そこでの研修会で実にためになる爽やかな講演を聴くことが出来ました▼AKRとはオール小売り市場連合の略称で、共同で仕入れ、配送し、保険を掛けることによって大手スーパーに対抗しようとする健気な試みをする団体です。実はつい先日から私の住む姫路市の新在家でも古くからある市場がこの組織に参入することになりました。色んな意味で経営が困難な事態になっていますが、なんとか打開したいとの組合の中心者の思いと、AKR事務局の熱意、そしてこの市場を町の中心に持つ自治会長としての私の思惑の三つが一致したのです。珍しいケースです。わたしには小っちゃなものでも大きい相手に勝てるということを実証し、それを町の再生の起爆剤にしたいという密かな企みがあります▼聴いた講演とは何でしょうか。三浦一光さんというコスモス・ベリーズの会長の「ボランタリー・チェーン戦略の新発想ー弱者を生かす知恵の実践」というものです。この人はもともと松下電器出身。テイチクレコードを経て現在のヤマダ電機との合弁会社を設立しました。流通の常識を変えるビジネスモデルを構築したという知る人ぞ知る”流通業界の革命家”です。80歳を目前にしながら実に若々しい印象。常に笑みを絶やさぬお顔での講演を聴きながら一辺にその魅力に憑りつかれました▼家電メーカーに40年、レコード業界に3年、小売り流通15年の経験から生み出された発想は並ではありません。➊有利な仕入れ価格➋商売に必要な情報➌ヤマダ電機に匹敵する品揃え➍商品の安定供給を基本4項目として、それ以外を受益者負担にし、月1万円の会費制で展開するビジネス手法は今や燎原の火のごとく広まっています。流通業界における中小企業を再生しようとの狙いは全くAKRと軌を一にします。さしあたって私の地元の市場もこのチェーンに入ろうと呼びかけるつもりです。いい人との出会いは人生をより豊かにするということを改めて実感しました。(2016・5・31)
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観光地域戦略を練り、安保の論客らと意見交わす
11日から3日間上京してきました。議員勇退後、三泊四日もかけて上京し、兵庫・姫路を離れるのは初めてです。第一日目は前議員の会主催の講演会や衆議院議長招待の懇親会。講演会のスピーカーは東京農大名誉教授で文筆家の小泉武夫さん。前から私は、日経連載の『食あれば楽あり』の愛読者。この人には「チュルチュル」とか「チュバチュバ」といった意味不明の擬音語を使いまくる変な食道楽の農学博士との印象を持っていました。で、会ってみると、まさに聞きしに勝る「変人」でした。『発酵はマジックだ』との著作をもとに、ちょうど1時間「日本の和食がいかに現代人に適合しているか」、「発酵こそいかに人に健康をもたらすか」を、かなり大げさにまくし立てておられました。終了後の質疑で、元議員の舌鋒鋭い質問攻めに「もっと政治家の皆さんも勉強してください」とちょっぴり焦って切り返されました。ここだけ妙に浮き上がって聞こえたのはご愛嬌でした▼第二日目は、観光庁に行って、日本版DMOのあり方をめぐって観光地域振興部長と懇談をしました。私は今瀬戸内海島めぐり協会の専務理事ですが、このたび淡路島を拠点にしたDMO認可申請をしています。観光客受け入れと物産の生産、販売。国内と海外双方に対する目配り。多くの課題が山積していますが、政府側の狙いにも十分理解を深めることができ、課題解決に見通しが立ちました。夜は、パシフィックコンサルタンツ本社で、地域マネジメント戦略の専門家たちと、徳島のNPO法人・雪花菜(おから)工房の23歳の若き理事長や兵庫県立大客員教授の勝瀬典雄さんらと淡路島の観光や産業育成をめぐって具体的な戦略を練りました。実に刺激的で面白い話を聞くことができました。私なりの結論は「若者を見よ」であり、「古き考えを捨てよ」です。またの機会に詳しく報告します▼第三日目は、「安全保障研究会」の5月定例会に参加してきました。これは元内閣官房副長官で衆参両議員を経験した浅野勝人さんが主宰する一般社団法人で、著名なジャーナリストや外交官らが名を連ねています。この日は元防衛省官房長や内閣副官房長官補を経験した柳澤協二氏が昨今の防衛課題や沖縄を巡る現況について持論を披露してくれました。この3年余り外交・防衛の議論の現場から離れている私には「今浦島」の感無きにしも非ずです。早急にこの方面でも現場感覚を甦らそうと決意を新たにしました。こうした会議や打ち合わせの合間に東京、神奈川、埼玉の古い友人を呼び出したり、尋ねたりをしたわけですが、新たな出会いに感激をして、地元に帰ってからの活力源とするしだいです。(2016・5・15)
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自衛隊の存在や役割の明記をめぐる議論をしよう
今年も憲法記念日がやってきました。私は現役のころに公明党の憲法調査会の座長をやっていました。その当時と今と憲法をめぐる状況は全くといっていいほど変わっていません。「改憲」をライフワークにするといった姿勢の持ち主が首相をやっていますが、それはあくまで「姿勢」であって、道筋がついているわけではないのです。自民党は結党以来その党是に「改憲」を掲げてきたわけですから、昭和30年いらい60年余の実態は、およそ看板倒れもいいところだと思います。首相が焦る気持ちはわかります▼私はいろんな場面で率直な物言いをしてきたことで知られていました。意味のない建前論はあまり気にいらなかったからです。憲法絡みのことで思い起こすのは中曽根康弘元首相と一緒にある会合に出た時のことです。公明党の憲法をめぐる態度について言えというので、「公明党の立場は加憲(カケン)です。改憲(カイケン)とは一字違い。一字だけ取ればいいのですから、改憲ももう一歩です」と述べました。中曽根さんはじめ自民党の面々が大笑いならぬ、大苦笑いをしていたのが印象的でした。これはジョークが少々きつ過ぎたかもしれません▼池田SGI会長が毎日新聞のコラム『発言席』に、憲法に環境権を導入することを提案されてから随分と歳月が流れました。あの時の鮮烈なインパクトは忘れられません。ちょうど米国に議員派遣で行っていた旅先のこと。のちに防衛庁長官として名を馳せた久間章生さんが(この旅の一行の団長だった)、興奮ぎみに「赤松さん、池田先生が改憲に踏み切る発言をされてるよ」と言って、新聞を差し出されたのです。池田会長は「環境」の重要性にかんがみて、憲法が触れるべきだとされたのです。もちろん、憲法9条を変えるなどということではありません。公明党は、全面的改憲派の自民党や口先だけの護憲派の共産党と違って、真実の意味での護憲政党でした。それが、この寄稿文によって、加憲という名の「緩やかな改憲」路線に舵を切り替える示唆を受けることになったといえましょう▼昨3日のNHK総合テレビでの9党の代表による討論会で、北側一雄公明党副代表は、9条堅持を訴える一方で「自衛隊の存在や役割を憲法上、明記したほうがいいという議論はあってもいい」としました。また、昨年、平和安全法制を整備して9条のもとで許容される自衛権行使の限界を明確にしたのだから、「それを超えてまで自衛権行使をやろうとすれば、改正は必要だが、当面、必要はない」とも述べました。北側さんが中心になって作った安保法制が限度ギリギリの憲法解釈だということに、私もまったく異論はありません。だが、私はかつて党内安保議論で、自衛隊の位置づけを明記し、国際貢献などの役割を9条3項としてつけ加えるべきだという議論をささやかながら展開したものです。それゆえ、内外であまり議論が行われていない状況には不満です。憲法9条をめぐってはもっと建設的な議論がなされるべきです。公明党ももうそろそろ「あってもいい」などといったなまぬるい言い方から脱却すべき時ではないでしょうか。(2016・5・5)
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戸別訪問の解禁が政治変革に繋がる
熊本県を中心とする九州地域の大地震の連発が心底から気になります。中学、高校同期の親しい二人の友人や知人の安否を電話で訊くなど心重い日々です。21年前の阪神淡路の大震災以来、新潟、中越、東北、そして今回とほぼ5年おきに大きな地震が日本の各地を襲ってきています。かつて党理論誌『公明』誌上で安田喜憲東北大名誉教授と私が対談した際に、彼が「巨大災害の時代の到来」と言われていたことをリアルな実感を以て思い出します。そんな折、公明党議長の太田昭宏前国土交通大臣が明石にセミナーに来るとあって、参加してきました▼彼は京都大学で土木工学を専攻し、地震工学にも明るいことで知られています。私とは同い年。しかも同じ職場で数年間同じ釜の飯を食った仲間です。落選も当選も一緒でしたが、こちらは引退しても彼は益々頑張っています。嬉しい限りです。兵庫県の井戸敏三知事も昭和20年生まれで親しい友人ですが、共に現役でやってくれてるうちはこっちも張り合いがあるというものです。太田さんは相変わらず元気いっぱいの勢い漲る講演ぶりでした。惚れ惚れする演説ぶりは益々磨きがかかっていました。私が聞いた政治家の演説の中では間違いなくピカ一です。会場に参加された皆さんは恐らく勇躍歓喜して現場に散ったに違いありません▼7月の参議院選挙にむけてこれから選挙ムードは一段と高まってきます。一方、アメリカでは大統領選挙の民主、共和両党の候補者選びの予備選挙が本格化しています。先日、その選挙戦に日本人として参加している明治大学の海野素央教授のインタビュー記事を新聞で読みました。彼は8年前から同様の行為をしており、前回も同様に書かれた記事を面白く読んだものです。一軒一軒戸別訪問して自分の支持する候補者の政策や人となりを宣伝するのです。「選挙は自分の考えを他者と交わし、理解しようする機会」だと、民主主義本来の展開ぶりを高く評価しています▼日本とのあまりにも大きな差を感じ、羨ましく思いました。ご承知のように、日本の場合は個々の住宅を特別の候補への投票依頼をするべく、選挙運動として頼みに軒並みに回る戸別訪問が禁止されています。日常的な政治活動は自由なのですから、日ごろからどんどん家庭訪問をして選挙依頼やら政策談義をやればいいのですが、常にプレッシャーがかかってきます。選挙制度の最大の課題はもっとオープンな選挙戦をすることに尽きると思います。「買収に繋がる」とか、「有権者の平穏を乱す」からやるべきではないというのが”日本の常識”です。このあたりを変革することから、日本の政治が大きく変わることに繋がると私は確信しています。(2016・4・19)
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従来的な見方に安住してると怖いぞー野党共闘異聞
共産党の動向に強い興味を持ってる友人から先日、電話を頂きました。「野党共闘に熱心なこの党の昨今をどう思うか」が主たる内容でした。このところのメディアの関心事は、衆参同日選挙の有無にあり、それに伴う野党の選挙協力の行方です。共産党がこれまでのすべての選挙区に候補者を出すという「党勢拡大」姿勢一本から、他党に花を持たせる方針に変えるというのは、大変な変化に見えます、果たしてどうなるかは、誰しも関心を持たざるを得ません▼雑誌『世界』に小沢一郎さんと志位和夫さんが対談をしていたものを読みましたか。今までおよそ考えられなかった組み合わせです。尤も、このところ共産党は一部地域において自民党との協力も時々やらかしているだけに、「目的のためには手段を選ばない」手法としてはむべなるかなとの思いもします。小沢さんも落ちたものだという見方が一般的で、さしたる関心が持たれているようには見えません。しかし、今の小選挙区比例代表並立制を導入するに際して、最も熱心だったこの人は、制度の根本を熟知しているだけに、なおざりにしてはいけないと思います▼窮鼠猫を噛むとのたとえが意味するように、人は追い込まれるとただならぬ力を発揮するものです。いや、小沢氏も志位氏も追い込まれているのではなく、今こそ好機到来と欣喜雀躍しているようです。こういう時に、「なんでも反対・共産党」「政策実現の実績ゼロの党」だと言い募るだけでいいのでしょうか。確かにこれまではそうですし、民主的な議会政治になじまないものを本質的には持っている党ですから、批判そのものは間違っていません。ですが、有権者はそれに直ちに同調しないのではないかとこのたびは思われます▼民主党が政権を取った時の選挙で「一度(民主党に)やらせてみたら」がきまりフレーズでした。それと同様に今度は「共産党に一度大きく議席を与えてみたら」という風になる可能性があります。それぐらい安倍政権に危うさを感じている有権者がいると見たほうが無難です。「毒は毒を以て制す」と言いますように、自民党という毒性を消すために、共産党という毒性で対抗しようとする動きが出ないことをねがいます。公明党は薬だと私たちは思っていますが、「一服の良薬」では大状況を変化させられないとの見方もあります。「毒にも薬にもならない」民進党ではありますが、「毒」に引っ張られると、化学変化を起こし「大化け」もあり得ます。ここらあたりの話を冒頭の友人にしました。ともあれ、従来的なもの見方に安住していると、選挙では負けることははっきりしていると思います。(2016・4.16)
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「第三の道」「中道」への無理解を解くための闘い
先日姫路市内北部の夢前町の友人の紹介先を訪問した折のことです。70歳代半ばの御主人は私が挨拶のあとに公明党の話をしだすやいなや「あんたがたは選挙が近づくと頼みに来るが、普段は音沙汰がない」「政権党になったのだからせめて地域の神社のお祭りには参加すべきだ」などとまくしたてられました。言い分はいろいろありますが、そこは落着き、やんわりと一般論としてその非をお詫びするとともに、昨今は神社のお祭りにも積極的に参加していることを説明しました▼実は私は昨年から地域の自治会長を務めています。そうすると、秋祭りをめぐる一連の行事だけではなく、日頃なにやかやと神社にお参りすることが多いのです。そんな中、連合自治会の中でいわゆる祭りの神輿を担いで神社にやってこない自治会があることに気づきました。かつて同地域の創価学会の幹部の方が自治会長をされていた折に、お祭りには不参加の方針を持っておられたからというのがどうやら理由のようです。私自身にも確かにかつて神社仏閣を毛嫌いする姿勢がありました。しかし、今や私自身が自治会長として、祭りをはじめとする地域の行事に参加し、貢献しています。最近封切された映画『人生の約束』などを観ますと、いかに祭りが地域の絆を強めるものであるかを如実に物語って非常に迫力がありました。地域の絆向上と個人の信仰の深化と。問題を混同せぬよううまく折り合いをつけることの大事さを痛感します▼ところで、昨今の創価学会、公明党への批判はそうした生活次元のものは比較的なりを潜めていますが、論壇次元で注目すべき傾向が現れてきているように思われます。『現代と宗教がわかる本2016』や『愛国と信仰の構造』などに見られる誤解やら曲解です。前者は「安全保障法制に反対し、公明党の方針を危惧する創価学会員に聞く」という「緊急座談会」を掲載、20頁余りにわたって公明党が創価学会の平和の理念に反しているとの批判が展開されています。一方、後者は「創価学会が果たすべき役割」という見出しのもとに、短いながらも同様の疑問が投げかけられています▼これらに共通しているのは、安倍政権の持つ右翼ナショナリズム(宗教ナショナリズム)に創価学会、公明党が取り込まれようとしているとの認識であり、「本来の姿に立ち戻れ」という主張です。ここには安保法制に対して公明党がいかに歯止めをかけたかの事実認識が欠落しています。また、相も変らぬオールオアナッシングの政治観のみで、「第三の道」への視点、まなざしがありません。座して死を待つ平和観ではなく、現実的に戦争を阻止し、平和を招来させる”動的平和観”が欠如しているのです。55年体制的思考が今なお力を持ち、中道政治への理解が遅々として進んでいないのです。そこらあたりを変えるために更に対話を進めたいと決意しています。(2016・3・20)
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富士吉田での「せんいサミット」に参加して
いにしえの昔から繊維の町として知られてきた地域がいずこも疲弊しきっています。それをなんとか打開しようとの試みが12日に、山梨県の富士吉田市ふじさんホールで開かれました。その名も「富士吉田せんいサミット」。私も参加してきました。そんな会合になんでお前が行ったのかと訝られそうですね。理由は三つほどあります。一つは、この催しを仕掛けたコンサルタント会社のアドバイザーという立場を今年から頂いているからです。要するに仕事の一環です。二つ目は、私は現役時代、繊維産業振興のための議員連盟の中心者のひとりだったのです。つまり関心がかねてあったということです。三つめは、富士山を間近に眺めてみたいという観光地への興味です▼この日のメインは、パネルディスカッション「日本の繊維産業のグローバル化にむけて」でした。日本の繊維産業を盛り上げていくための第一歩として国内繊維メーカーの優れた技術を再確認すると共に、今後のブランド化やグローバル展開の可能性についてパネリストと議論しようというもの。舞台の幕が開くと同時に驚いたのは、パネリストの多彩さです。スウェーデンから女性デザイナー3人。アフリカ系フランス人の男性一人。それぞれにスウェーデン語、フランス語通訳がつくという豪華さ。他方、日本人パネラーもパリを中心に活躍する若手デザイナー・中里唯馬さんをはじめ、国内繊維産地を代表して、富士吉田市、栃木・足利市、山形・米沢市、石川・小松地域、岩手・久慈地域から10人もの参加者が壇上に。二段に分かれてテーブルやいすが設えられていたのには目を奪われました▼この会で改めて認識したのは、日本の素材と技術力への評価の高さです。外国人デザイナーも日本の産地業者や自治体関係者も一様に語っていました。今後の展開で最も期待されるのはネットワーク化でしょう。それぞれが個別で戦うよりも横の連携を強め、お互いに繋がっていくことの大事さが強調されました。兵庫県は西脇市を中心にして播州織が有名ですが、御多分にもれず苦戦しています。ここもぜひ繋がって連携プレーをするべきだと思った次第です。この日は東日本の産地ばかりでしたが、次は西日本でも結集していきたいものです▼かつての大量生産・大量消費の時代にひと区切りがついて、個性化・差別化が進むと見られていましたが、ユニクロに代表される低価格、着易さの一大流行で結局は逆戻りの傾向が否めません。しかし、片方で高品質のブランド化も求められています。メイドイン日本で少々高くても良いものはどんどん売れるということは必ずあるものと確信します。終了後に開かれた情報交換会で、多摩美大の学生さんや地元高校生たちと会話を交わしました。漫画を入れ込んだり、デザイン性溢れる名刺を見ながら、若い世代に大いに期待したいとしきりに思いました。開会前の束の間に、新倉山浅間公園に行きました。有名な「忠霊塔」越しの富士山を観ようとしましたが、生憎の曇り空で見ることは叶いませんでした。しかし、この塔は中世や近世に作られた歴史的建造物ではなく、戦後に作られたものと知り驚きました。姫路城に平成の城下町を作ろうと提唱してきた私にとって、今からでも遅くないと意を強くしたのです。ともあれ繊維産業でも観光でも様々な意味で知恵を出し合うことの大事さを学びました。(2016・3・15)
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今そこにある零細市場の危機を救うために
私の住む町の中に小さな市場があります。少し前にはあちこちにこうしたところはあったのですが、最近はすっかり姿を消しています。大型スーパーの進出で次々と店じまいをしていったのですが、うちの町内にあるこの「フレッシュ新在家」という共同組合市場は今なお頑張っています。野菜、肉、魚、お菓子、パン、総菜、クリーニング屋さんがテナントや組合員としてお店を出しているのです。入口近くにお寿司屋さんがあったのですが今は休業中であったり、借り手募集中の張り紙のあるお店跡があるなどいささか元気のない雰囲気が漂っています▼実は私が顧問をしているAKR(オール小売共栄会)は、町の中にあるこういう市場を蘇えらせるためのものです。一店だけではとても大きな企業に太刀打ちできないところを共同で立ち向かおうというものです。商品を複数の市場による共同で仕入れ、配送し、保険をも掛けあおうという素晴らしい発想による仕組みです。これこそ零細、小企業を救う手だてとして注目されます。二十年ほど前からこの団体に私は関わってきており、以前からこの「フレッシュ新在家」にも加入を勧めてきましたが、なかなか受け入れられませんでした。それがこのほど加入の意思を示してきました。それだけ事態は急を告げおり、経営実態が厳しくなっているのでしょう▼実は去年、石破茂地方創生担当大臣に会って、保険を活用して零細企業の与信能力を高めるという「AKR方式」を全国展開すべきではないかとの政策提案をしました。彼は大いに関心を持ってくれました。私が現役であるなら、AKR方式の導入推進を国会の委員会の場で迫りたいところですが、残念ながら叶いません。で、後輩たちに託しています。第一弾として先日、濱村進代議士(近畿比例ブロック選出=私の後任)に予算委員会第七分科会で取り上げてもらいました。新人らしからぬ堂々とした質問ぶりでした。さすが元野村総研出身だけのことはあります。しかし、中小企業庁は、AKRのような共同組合制度を活用する必要性の認識は示しながらも、全国の小規模事業者に周知徹底する難しさを指摘するだけで、具体的な取り組みの方途は示しませんでした▼政府は今、中小企業団体中央会や、その下部機構を通じて中小企業基盤整備機構なる組織を立ち上げ、中小企業の活性化に取り組もうとはしています。これで間に合っているだろうとの安易な姿勢が垣間見えます。しかし、その成果は殆ど挙がっていないというのが実態です。AKR方式の導入こそ起死回生の一打になるということを、過去の実例を示しながら今後も濱村氏をはじめとする後輩たちに迫っていってもらうべく求めていく所存です。(2016・3・4)
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スリランカ内戦から逃れた難民の姿に見るフランスの今
フランスで昨年起こった二つの事件は現代世界を根底から震撼させています。極東の離れ小島といっていい日本列島にいると、どうしてもテロは臨場感が乏しいことは否めません。アメリカ同時多発テロの「9・11」から15年ほどが経っていますが、あれ以来世界は基本的にはテロ戦争が続いています。テレビの映像や映画を通じてしか、フランスで起こったことはどうしても他人事としか見えないのはいかんともしがたいところです。であるからこそ、積極的に映像を追うように心がけています▼最近観たフランス映画『ディーパンの闘い』は、基本的にはスリランカの「タミル・イーラム解放の虎」(LTTE)による同国の内戦の余波を描いているものです。2015年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた作品ということもあって興味を持ちました。スリランカは1983年から2009年にかけて政府軍対非政府武装組織による内戦が続きました。終結してから7年ほどが経とうとしています。映画は、内戦で妻もこどもも失った主人公ディーパンが戦禍から逃れるために、同じ運命におかれた女とこども(それぞれ赤の他人)を連れて、偽装家族の形でフランスに脱出するところから始まります▼正直いって半分くらいまではおよそ退屈でした。いわゆる戦闘場面がなく、逃げのびたフランスで淡々と落ち着くまでの生活が描かれるだけだからです。心理的葛藤の妙味を味わうのが苦手で、テンポの速い活劇展開にしか興味がない向きには睡魔との闘いすら忍び寄ってきます。しかし、後半は一転。現代フランスの荒廃した社会状況に3人が巻き込まれ、目を見張る展開ぶりです。当初は壊れかけた難民親子の関係がむしろ強い絆を持つべく鍛えられていくストーリーの流れや深みある心理描写は、さすが伝統を持つフランス映画だけのことはあります▼かつての仲間から、帰国して戦いに再び参画するよう呼びかけられる場面が挿入されています。だがディーパンはそれを断り、その後のスリランカの様子は一切出てきません。一方、フランスでのイスラム過激派によるテロをめぐる状況を想起させるような動きも出てきません。舞台は少し以前のことだからです。その意味ではあくまで偽装難民の行く末は疑問だらけです。最後に家族に赤ちゃんが誕生。フランス映画らしからぬとってつけたような幸せ観が漂いますが、私的には妙な違和感を持ちました。見終えて、スリランカの今や、フランスの今に真正面から迫る映画がもっと観たい。もっと両国の真実がしりたいとの思いが募ってきます。(2016・2・23)
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