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【58】外交・防衛・原発で微妙な食い違い➖毎日Web『政治プレミア』への寄稿から❸/8-8

 ●国際平和を築く確たるビジョンを

 次に安全保障について。「戦争巻き込まれ論」と「日本平和ボケ論」といった常套句に代表される左右の確執が、日本の戦後77年の防衛論議の実態でした。

 そこへロシア・プーチン大統領によるウクライナ侵攻が勃発しました。〝ウクライナ支援〟に当たる欧米各国と、ロシアの側に立つ中国などとの深刻な対立を生み出しているのです。国際秩序は、米ソ対決の冷戦、米国一極化の新冷戦時代を経て、米欧・中露対決、つまり民主主義国家群と専制主義国家グループとの対決の様相を強めてきています。

 そうした国際情勢の中で、日本はどう振る舞うか。日米安保条約体制の強化において、自公与党間の意志は堅固であっても、中国をめぐるスタンスは〝微妙に〟違います。本来、公明党は、軍事力でなく、話し合いによる外交の展開で平和を勝ち取ることが基本姿勢です。「地球民族主義」に依拠してきた公明党の国際認識は〝善隣友好〟であり、どの国であれ、敵視しないことが基本です。「中国」更に「台湾」をめぐって、自公両党内にも様々な立場があります。これらを調整し、これからの世界をどう作り上げていくか。さらに、いわゆる「敵基地攻撃能力」の保持についても、防衛費のありようについても、いささかの違いがあるように見受けられます。この辺りも、しっかりと議論がなされる必要があります。

 ともあれ、日本が分断から破綻へと向かわぬように、国際平和を築く確たるビジョン形成に自公両党が協調することです。元内閣官房副長官補(国家安全保障局次長兼務)の兼原信克氏が、これまで『現実主義者のための安全保障のリアル』(2021)などの一連の著作で、アンリアルな〝政治家の安全保障観〟を嘆き、〝目覚め〟をけしかけてきています。そろそろ議員の皆さんも答えを出さねば、〝政官知的格差〟が恥ずかしいとおうものです。

 ●「原発」をめぐる複雑な様相

 更にエネルギーについても。ウクライナ情勢で、電力の逼迫が急を告げ、石油、天然ガス価格の急上昇が庶民生活を直撃。エネルギー保障の問題が一段と切迫を強めてきています。東日本大震災での「福島第一原発」事故以来、水力、太陽光、風力などの自然エネルギーへの期待が、温暖化防止へのカーボンニュートラルの動きと共に高まってきていますが、それぞれ課題は山積していて、ことは深刻です。

 解決は難しくないという向きは、「原発再稼動」を主張します。安全に留意して稼働させ、大震災以前の姿に戻せばことは解決するというのです。一方、伝統的なこの考え方はもはや許されず、自然エネルギーに重点を移す新しい行き方にチェンジするしかないとの主張があります。両党内にも種々の考え方の違いがあり、これはまた、世界の経済発展にまつわる国家間対立とも絡み合った複雑な様相を呈してきているのです。

 日本原子力研究所を経て、留学後に作家になり、小説『首都汚染』(2020)で、今日のコロナ禍を予測した高嶋哲夫氏は、今『EV』(2021)で、近未来の世界をリアルに描いてみせています。更に一連の論考での、多彩な原子力の活用やら、水素社会への示唆も注目されます。こうした民間の知恵も生かして、両党は、エネルギー保障の未来像作成に総力をあげて取り組むべきでしょう。そこから生まれるビジョンを待望する声は極めて大きいのです。

 今、三つのテーマを軸に、日本のビジョンを作る場を与党内で持って、検討して欲しい旨を述べてきました。そこで重大な忘れ物があるとのご指摘を受けそうです。そう、憲法です。これはあえて外しました。ここから始めると、まとまるものもまとまらなくなる可能性があります。このテーマではある意味で、両党間での論点は整理され、違いも明瞭になっていると私は思います。

 衆議院憲法調査会、同審査会に長く籍をおいてきた私は、自民党議員の皆さんと議論をしてきました。その一つの結果として、「自衛隊の憲法上明記」ということが、自民党の「改憲4項目」に挙げられてきたと、私は理解しています。この辺りは、無念極まりない死を遂げられた安倍晋三元首相の胸中深くに思いを致す程度にしておきましょう。(2022-8-8  つづく)

※この原稿は毎日新聞Webサイト『政治プレミア』(8-1付け)欄に寄稿したものを転載しました。

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【59】野党を巻き込む「部分連合」も──毎日新聞Web『政治プレミア』への寄稿から❹/8-10

 

 さて、これからの3年で、これらのビジョン策定を進めることが出来れば、自公政権の質的安定感は飛躍的に高まります。テーマによっては、最終合意は棚上げにして、目指す理想の形と当面の現実対応とに分けることでもでもいいかもしれません。同時に、この作業は密室でなく、少なくとも協議後は議論の中身は公開すべきです。そうすることで、野党の中から「是」とする動きが健在化して、新たな展開を生み出すやもしれません(希望的観測ですが)。そこは硬直化した姿勢ではなく、柔軟な対応が求められると思われます。

 大胆に言えば、テーマによっては、2党間合意でなく、野党も入れて、3党、4党間の一致を見ることがあってもいいし、さらには組む相手を変えての2党でもいいかもしれません(これまた希望的観測ですが)。パーシャル(部分)連合による連立政権も、日本の前進のためなら厭わないといった新しい時代の連立政権のあり方も期待されると思うのです。

 連立のパートナーとしての公明党は、自民党との協議を進める一方、党内での活発な議論が当然ながら必要です。できれば、当選回数別の議論や、年代別、男女別の議論も面白いと思います。あるいは現役とOBとの新旧論戦もあっていいかもしれません(現役側に嫌がられるでしょうが)。自民党もこれまで公明党との連立のあり方を問う動きは全く見えてきませんでした。公明党も表にはそういう議論は聞こえてきません。両党共に、「自公連立は当たり前」という態度では、量的安定は望めても質的安定は難しいと思われます。

 さらにその党内議論をオープンにして欲しいものです。日本で、日刊の機関紙を持っているのは、公明党ともう一党だけです。民主主義を掲げる政党なら、日常的に党内で対立するテーマの論争を紙上で掲載すれば、世の注目を浴びるのは必至と思います。そんな百花繚乱(りょうらん)ぶりに議論が公開されたら、日本中で話題になること請け合いです。そういう展開があれば、「比例票増」に悩むことなどない、と私は思うのですが、これまた楽観的に過ぎましょうか。

 本サイト「政治プレミア」で、「時代の転機に国民的大論争を起こそう」と、呼びかけさせていただいたのは、今年2月でした。真夏の参院選に「勝利」した自公政権が「黄金の3年」に挑む今がその時。これを「真夏の夜の夢」には終わらせたくないのです。(2022-8-10  この項終わり)

※これは、毎日新聞Webサイト『政治プレミア』欄8-1付けに掲載されたものを4回に分けて、転載しました。

 

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【57】「保障3分野」で与党協議を➖毎日Web『政治プレミア』への寄稿から❷/8-6

 

 選挙後7月19日に岸田文雄、山口那津男の両党首は、既に結んでいる政権合意に基づいて、結束して課題解決に当たろうとの確認をしたとの報道に接しました。公明新聞には、「核廃絶へ、国際会議をリード」と、ありました。8月に国連で核拡散防止条約(NPT)再検討会議があり、そこに岸田首相は出席します。それに対して、エールを送ったわけで、選挙後の政権にとって、いい滑り出しが出来ました。ですが、まず早急に求められるのは、政策レベルのことは当然として、国家としての骨太のビジョンを、政権与党が一緒になってまとめ上げることではないでしょうか。

 そんなこと、今更といわれるかも知れません。しかし、先ほど述べましたように、今日本は大きな岐路に立っています。気候変動による〝予測される地球の危機〟にどう立ち向かうか。まさに、その時に未曾有の疫病・新型コロナウイルス禍に襲われ、財政難は天井知らず、社会保障のありようが根底から問われています。しかも、ロシアのウクライナ侵攻という国際政治のこれまで続いた枠組みを揺るがす事態で、一国の安全保障も従来的対応では済まなくなってきているのです。

 社会保障、安全保障、エネルギー保障、少なくともこれら国家の根幹をなす3分野では、与野党で共通するビジョンが確立されていないとなりません。しかし、正直なところ、この分野でさえ自公両党間の腹構えが一致しているようには見えないのです。

 まずは社会保障から見ましょう。世界で最も早いスピードで少子高齢化が進む「人口減少社会・日本」にあって、安心して暮らせるビジョンが提示されているのでしょうか。年金、医療、介護といった社会保障分野の費用が増える一方で、格差や貧困がどんどんと顕在化しています。いわゆる「アベノミクス」が、一時しのぎ的には効果があったと見る向きもあるものの、将来世代に負担を課す財政の負担の基本に何らの変化も起きていません。

 岸田首相は「新しい資本主義」を掲げ、事態変革に意欲を見せているものの、その発想たるや〝分配は経済成長〟で、との従来路線のままなのです。気鋭の経済学者・斎藤幸平氏が『人新世の「資本論」』(2020)で、「脱成長」を掲げ、古い世代の「成長一本やり」に疑問を投げかけ挑発しても、国会や論壇の動きは鈍いままです。首相の対応は、斎藤氏の問題提起を「新しい社会主義」の提唱と曲解したゆえか、と錯覚さえしてしまいそうです。

 社会保障分野の課題解決では、消費税をどうするかが常にネックになり、財政の根源的なありようについての議論はなおざりになってきました。ベーシック・インカムやベーシック・サービスの導入などを含む根源的な財政論議を経たうえでの、日本の未来社会へのビジョン策定が強く望まれます。(8-6 つづく)

 ※これは、さる8-1に毎日新聞Web有料サイト『政治プレミア』に掲載されました私の『「連立政権は当たり前」か』の寄稿を転載したものです。

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【56】「自公連立政権は当たり前」か➖毎日Web『政治プレミア』への寄稿から❶/8-5

 昨年の衆院選につづき、7月10日に終わった参院選で、これからの3年間は、国政選挙がない、といった〝甘い見通し〟が専らです。「黄金の3年」とかの触れ込みで、この期間に懸案に取り組めるというのが額面通りの受け止め方でしょう。しかし、一寸先は闇と言われる政治の世界で、そううまくいくかどうか。仮にそうした時間が流れたとしても、国会議員の皆さんが無為に過ごす結果となり、結局は全て〝先送り〟の羽目になったら、もう目も当てられません。ここではそうならぬようにと期待して、この3年に「政治」(自公与党中心)に取り組んで欲しい事柄について、論及してみます。

★国家ビジョンを定め、質量共に充実した「安定改革政権」を

 拙著『77年の興亡──価値観の対立をめぐって』で取り上げましたように、今年2022年は、先のアジア太平洋戦争の敗戦から77年、明治維新からはちょうどその倍の154年の歳月が流れました。二つの77年のサイクルの前半で日本は、「西洋」的なるものとの価値観の対立のもと、近代化に奔走し、軍事力の拡大に取り組み、やがて一国滅亡の危機といった辛酸を舐めるに至りました。次いで、後半の77年は、保守と革新・リベラルとの対立のもと、民主主義受容に汗をかき、経済力の向上に躍起となりました。その挙句、バブル絶頂から崩壊と変転し、「失われた30年」の末に、GDPで中国の後塵を拝す一方、コロナ禍とウクライナ戦争による未曾有の混乱を迎えるに至り、今後の国運の行く末が懸念されています。

 確かに、この一年の二つの選挙で、自公連立政権は「勝利」しました。ここでいう「勝利」は、衆参両院で安定多数の議席を確保したという意味です。やろうと思えば、「憲法改正」の発議も出来るだけの、議席を得たのです。私が初めて記者として国会を取材し始めた1969年(昭和44年)頃は、佐藤栄作首相時代で、それなりに安定した自民党単独政権でした。いらい50有余年。今は自公連立政権が20年を超えて続いています。

 議席において大なる自民党は日本の伝統的保守の源流を受け継ぎ、小なる公明党は、仏教に淵源を持ち、大衆救済を旗印に結党されて60年近い中道主義の政党です。連立政治の強みは、為政者の目線が異種に及んで、複合的だということでしょう。ということは、量的だけでなく、質的にも安定した政権になる可能性を本来持っているはずです。民主党政権の3年を経て、日本の政治は不安定な状態が危惧されていました。この数年、公明党が選挙のたびに、「安定」を強調するのを見聞きするにつけ、その都度、私は「安定」は自民党に任せて、公明党は「改革」を叫ばねば、と思い続けてきたものです。

 しかし、ようやく日本の政治は、与党が数量的には「安定」しました。もう憚ることなく「改革」を叫んでいいという風に、皮肉を込めつつ思います。いや、少なくともこの3年は質的にも安定した「政治」になったと、大向こうから評価される闘いがなされねばなりません。恐らくこの期間は、この2回の選挙で気を吐く結果を出してきた、野党・日本維新の会の動きが注目されましょう。「しがらみにとらわれず、身を切る改革」を呼号してきた同党は「是々非々」対応で与党に挑んでくるはず。ならば、「是」部分を取り込めるよう、党派性に傾斜し過ぎぬ大きな見地で、「共闘」すべきだと、私は思います。

 「共闘」とは何か。日本が直面する重要課題に向けて合意形成をする闘いです。そのためには、まず与党間で早急に徹底して協議する場を持たねばならないと思うのです。(2022-8-5  つづく)

  ※これは、私が毎日新聞Web『政治プレミア』欄(8-1付け)に寄稿したもの(『「自公連立は当たり前」か』)を転載しました。

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【55】確たる国家像が見えないとの「連立政権」への不満——朝日web『論座』への寄稿から④/7-31

 参院選が終わるまでの間、これから3年は大きな国政選挙のない平穏な時期が続く、という見方が専らだった。政界関係者の希望的観測だろう。安倍元首相という隠然とした実力者の死がこれからどれだけ影響をもたらすか計り知れない。国民の間には、選挙の有無よりも、これからの日本の進む道をどう切り開いていくのか、政党、政治家の動き、とりわけ自公連立政権に望むところはあまりにも大きいのである。

 この数年間というもの、選挙のたびごとに、私が友人たちから「自公政権はこの国をどこに導こうとしているのか、よく分からない。両党に確たる一致したビジョンが見えないではないか」という疑問を聞かされた。自民党には保守独自の国家観があろうし、公明党には支持母体の思想に基盤を持つ中道政治像がうかがえる。それは分かる。だが、成り立ちの違う二つの政党が連立を組んでいくと、両者に忖度や遠慮がどうしても働き、結果は曖昧なものになる。現に先行きが不透明ではないか、との懸念の表明である。

 この議論、公明党的には、「自民党の行き過ぎにはブレーキをかけ、足らざるところはアクセルを踏むとの役割を発揮するから見ていてくれ」という〝定番〟に落ち着く。私は「政治はよりマシ選択」との言い回しを切り札に使ってきた。だが、それではもう追いつかない。

 終わりの見えないコロナ禍とウクライナ戦争。果てしない財政悪化と物価高。中露朝といった強権的専制国家群に囲まれた日本。いつ何時、「ウクライナ」状況が我が身に降りかかってくることにもなりかねない。経済、防衛の両面で、「安全保障」の本格的展開は待ったなしなのである。争点が見えないとされた今回の選挙でも、緊急避難的消費税下げは与野党間で、いわゆる「敵基地攻撃能力」は与党間でも意見が分かれた。

 こうした問題を始め山積する課題の解決に向け、今こそ、自公両党の間で徹底した議論がなされるべきではないか。現状は微妙に食い違う点が少なくない。細かい点を曖昧にし、与党間の結論を先送りにすると、国の方向を過つ。協議をしても、全てで一致するわけではないのは当たり前だが、少なくとも双方の理想は理想として掲げ、現実的に合意に至った経緯を公開すべきである。先の「安保法制」では、集団的自衛権の行使容認をめぐって、自公の違いを踏まえつつ妥協をすることで、当面の課題を乗り越えた。この例に見習って、「財政」で、「エネルギー」で、「社会保障」で、合意を見出して、連立政権の方向を明らかにする。そして国家ビジョンの創出に繋げていく。そのための大議論を開始すべきだ。

 選挙直後に開かれた岸田、山口両党首会談では、お互いの選挙協力を称え、労う場になったことが伝えられた。また、7月20日にも今後の政権運営について、衆院選後の政権合意事項を確認しあった。だが、これだけでは物足りない。相互支援は選挙だけで終わってはならない。重要な政策課題をめぐって異論をぶつけ合い、調整を目指す検討チームを直ちに作ろうとの合意ぐらいして欲しかったと思う。(2022-7-31  この項おわり)

※これで、朝日新聞Webサイト『論座』に私が寄稿した「公明、自民両党が参院選後にやるべきこと〜内外に山積する政策課題を前に」(7-22付け)の4回にわたる転載を終わります。

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【54】存在感増す維新の気になる動き——朝日Web『論座』への寄稿から③/7-30

 一方、野党はといえば、選挙前から6議席増の日本維新の会(以下、維新と略)の躍進と、逆に6議席減らした立憲民主党(以下、立憲と略)の低迷ぶりが目を引く。昨年の衆院選と同じで、選挙前から概ね予測されていた通りの結果となった。衆院選の結果、代表が交代した野党第一党の立憲は、野党結束の動きにも精彩なく、ズルズルと後退した印象は拭い難い。それに比して、維新は、選挙区でこそ東京、京都と狙った議席が思うように取れなかった(4議席)ものの、比例区では6年前と比し、300万票ほど上積みし、784万票を獲得。3議席から8議席へと伸ばしたことは、全国に支持者が広がり増えたことを意味する。それでも「自民党は圧倒的に強かった。野党は力不足。負けを認めざるを得ない」(松井一郎代表)とのコメントは立憲に代わる野党第一党のセリフのように聞こえた。「勝者のいない選挙」(小林良彰慶大名誉教授)との位置付けが霞むほど、同党の存在感は高まったと、私には思われる。

 この突出した維新の躍進は先の衆院選に続くもので、同党がこれからの日本の政治の動向に強い影響をもたらすことは間違いない。尤も、この党には危うさもつきまとう。松井氏が代表を辞して、この秋に後任を選ぶ選挙が行なわれるとのこと。そうした動きを経て、明年の統一地方選結果の推移を見定めるまでは、全国政党としての安定感は定着しないのではないか。大阪という一地域に依拠する特殊な政党から脱皮して、普通の政党としての評価が落ち着くまでにはまだまだ時間がかかるだろう。この一年における衆参両院選挙の結果、一般有権者の間における維新への期待は並々ならぬものがあるが、同党がそれに応えられる政党なのかどうか。まだ予断は許さないという他ない。

 維新の動向は与野党にとっても注視の的だが、政策展開の最大の関心は、「憲法」に違いない。かねて同党は積極的な9条改憲論を振りかざしている。この点に絞れば明らかに自民党と同根であり、与党的立ち位置にある。一方、与党公明党は、環境権などの「加憲」ではあっても、本格的な「改憲」ではない。とりわけ9条への「自衛隊明記」にすら慎重で、与党内不一致状態が続いている。一律に改憲に前向きな政党と、括ってみることは間違いである。

 今回の選挙結果から、「改憲」に前向きな政党4党が93議席を獲得し、非改選84議席と合わせて、改憲の発議に必要な参議院定数(248議席)の3分の2(166議席)を超える177議席となった。衆参両院での改憲への議席体制が整った。これを過大にみる向きがあるが、各党の思惑の落差に留意する必要があろう。

 れいわ新選組が3議席を新たに得て、合計5議席を有したり、参政党が初議席を持ったことなど、少数政党の台頭をどう見るか。少なくとも与党関係者は、今の自公連立政権への不満の現れだと見る正視力が必要だと思われる。(2022-7-30 つづく)

※これは、朝日新聞Webサイト『論座』政治・国際欄(7月22日付け)に掲載された私の『公明、自民両党が参院選後にやるべきこと〜内外に山積する課題を前に』を転載したものです。

 

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【53】「自公連立」の勝利と公明党得票減の課題➖朝日Web『論座』への寄稿から②/7-28

 選挙の勝敗は、議席の増減と得票の増減とで、一般的には推し量られる。投票率や立候補者数(政党数)も微妙な影を落とす。参議院比例区では、政党名と個人名投票が混在する影響も無視出来ない。今回の選挙結果は、トータルな議席増減結果では、与党が勝ち、野党は負けた。ただ、比例区では、自民、公明の与党組は議席、得票率共に減らした。手放しで「自公勝利」とはいえない。公明党としては目標の800万票(結果は618万票)、選挙区と合わせて改選議席獲得目標14議席(13議席)の現状維持ができなかったことは残念という他ない。

 自公間の選挙協力の取り組みは今回、相互推薦をめぐって初期の段階でギクシャクしたといころがあったが、最終的には功を奏した。出自も歴史も違う政党が相手方の候補の名前や政党名を書くことは、この20年あまりで定着してきた。とくに、公明党候補が出ていない選挙区での自公両党は(推薦を断った一県を除き)ほぼ一体化しているといえよう。見返りとしての「比例区は公明党」が実効をあげているかの詮索は、もはや詮なきことだろう。

 相互推薦をしあった埼玉、神奈川、愛知、兵庫、福岡の5選挙区では、自民党支持者からの票が公明党候補にきた。私が所属する兵庫県でその手応えは過去二回に続き、明確に感じることが出来た。自民党の候補者も三度目の正直で、もはや自分のところの票が流出する一方だとの〝被害者意識〟から脱却して、「自公合わせて共に勝つ」との広い度量を持たれたことと信じたい。思えば、定数2の時代にしっかり公明党は自民党候補を応援してきたのだからそのお返しを頂いてもいいはずなのである。

 公明党の比例区戦略について、支援をしてくださった方々からの素朴な疑問を頂いた。そのうち、ある官僚OBは、改選対象の7議席を当初から公明党は獲得する気はなかったのではないかとさえ、指摘される。得票結果を見ると一目瞭然、上位6人と7番目以下の得票数は桁が違う。明らかに、支持する地域の割り当てがなかったと思わざるをえない、と。私は。全国の総投票パワーで7人を押し上げるから問題ないとの判断だったと答えた。だが、ここは目標の7議席を取れるように、担当エリアを分けなかったことへの不可解さは残る。

 また、ある大学の教授(政治思想史専攻)は、公明党は真っ当な形で代表選挙をしないのはなぜか。現状では党内民主主義があるとは思えない、これでは浮動票を大きく望めないのは当然だ、と。私は小さな政党だから、代表選は党分断に繋がりかねないと答えたものの、説得力のなさをいささか恥じる。もうそろそろ代表選挙をオープンにやるべきときかもしれない。

 公明党は日刊の機関紙を持つ。選挙期間中の選挙区候補、とりわけ激戦区候補への連日にわたる投票呼びかけは凄まじい。読者の印象、結果如何は実証が必要だが、少なくとも比例区候補との、野球の一軍と二軍選手のような大いなる差異は気になるし、候補者の奥歯の不具合までわかるのはやり過ぎと笑い話めいた声も聞いた。拡大した絶叫写真を連日掲載する号外仕立てより、そのスペースをなぜ言論戦に使わないのか、との辛辣な声もある。(2022-7-28 つづく)

※これは、さる7月22日に朝日新聞Webサイト『論座』政治・国際欄に掲載された、私の『公明、自民両党が参院選後にやるべきこと〜内外に山積する課題を前に』を転載しました。

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【52】安倍晋三元首相狙撃死の深刻な波紋➖朝日新聞Web『論座』への寄稿から①/7-27

 さる7月22日に朝日新聞のWebサイト『論座』政治・国際欄に、私が寄稿した『公明、自民両党が参院選後にやるべきこと〜内外に山積する課題を前に』が掲載されました。4回にわたって転載します。まず一回目から。

 コロナ禍とウクライナ戦争➖世界共通の難題に喘ぐなかでの参院選。終幕寸前の7月8日に安倍晋三元首相が狙撃死した。最高権力者の余韻消えぬ人物が公衆の面前で、警護も虚しく命を奪われた。「国を守る」ことに、最も意を注いだリーダーが敢えなく瀕死の姿で路上に横たわった姿。これをテレビで見た国民の衝撃はたとえようもなく大きかった。

 安倍氏と私の個人的思い出は二つ。一つは、新学而会という名の学者と政治家の勉強会で席を同じくしたこと。国際政治、安全保障分野の専門家の集いだった。塩川正十郎氏らを始め、少数ながら著名な保守政治家も顔を見せた。場違いながらも私が名を連ね得たのは、ひとえに学問上の師・中嶋嶺雄先生(秋田国際教養大学学長)の〝引き〟によるものだった。外交評論家の岡崎久彦さんと安倍さんという〝集団的自衛権コンビ〟との出会いもこの場でのことだった。知的興奮を覚えたものである。

 もう一つは私がある社会運動団体の会合に出席した時のこと。「尖閣防衛」の発言をし終えて、途中退席した際にばったりと安倍さんに出会った。笑みを湛えながら「公明党の方がこんな処にきていいのですか?」と。余計なことをと思い、強がりを込めて「大丈夫ですよ」と、言い返したものの、彼の忠告が耳朶に残った。今頃になって、彼に対して、ご自身の立場と付き合う団体への距離を考えねば、と〝お返し〟をすべきだったと、後悔の念がよぎらなくもない。

 安倍氏の狙撃死をめぐる様々の論評を前にして、私はものごとの掌握には、「光と影」の両面からのアプローチの重要さを改めて感じる。政治家・安倍晋三の足跡にも当然ながらそれが付き纏う。〝決められない首相〟による迷走が続いた後、決断と実行の差配ぶりは、米露中のトップと同等に渡り合った外交力の発揮とともに特筆されよう。一方、「もり・かけ・さくら」と揶揄された一連の強権支配の振る舞いは、多くの識者の眉を顰めさせるに十分なものだった。

 人の世の常か、日本人の特性か。「死」はある意味で、全てを浄化してしまう。影の部分を押し隠し、光の側面を一段と美化してしまう傾向が強い。今回の事例にあっても、テロが民主主義を破壊し、言論を封殺するものだとの、非難・断罪に終始しがちになる。だが、今回のケースにあっては違和感が残る。つまり、安倍氏の主義・主張、行動に反対するが故の蛮行ではなく、「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)に対する個人的恨みのはけどころとなったものだからだ。それはあまりにも虚しい。そこを見据えず、ただ「言論封殺、民主主義破壊」非難に終わるようでは、ことの本質を見誤ってしまう。だが、その危険性は高い。

 要人警護は、正面3割、背面7割と聞く。にも関わらず、あの日の奈良県警は殆どそれを怠っていた。前日の安倍警護に当たった岡山県警の布陣は、犯人をして狙撃を思いとどまらせるほどの堅固なものだったというのに。また、長野での遊説を急遽変更した自民党当局の判断が現場に異変をもたらしたことと、無縁でなかったかどうか。検証が待たれる。(2022-7-27  つづく)

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【51】公明党の比例区得票減に立ち向かう3秘策➖7/21

 参院選が終わって10日あまりが経ちました。日本維新の会は、比例区で得票を大幅に伸ばし、大阪政党から全国政党へと一歩前進したといえます。運動量において圧倒的に差があるこの党に、比例区で170万票ほどの差をつけられた公明党陣営としては、心中穏やかではありません。次の機会に向けてどう体制を立て直すべきでしょう。ここでは、友人たちが私に向けてきた疑問から考えてみます。

★自公間でビジョン検討チーム作れ

 まず第一に、公明党は自民党と一緒になってこの国をどうしたいのか、よく見えないという根源的な疑問の提起です。相手は60年来の友人。自民党と与党を形成するようになって、本来の特徴が見えにくくなったというのです。確かに、お互い自己主張を抑えて、妥協する側面が強く出ていると言わざるを得ません。選挙での相互支援が表に出て、内実の相違点が明確にならぬまま、特質発揮がおざなりになっていると言えましょう。

 この問題を回避するには、私は早急に両党の間でビジョン検討チームを作るべきだと思います。報道によると、選挙直後に自公党首は選挙の相互支援を労りあったのち、19日には連立政権合意を踏まえて、政策課題解決に向けて、結束を確認しあったようです。それに留まらず、もっと深いところでの協議が求められると思うのです。とりあえずは、安全保障と社会保障の両面で、この国を、この国の国民をどう守っていくのかとの方向性を明示し、人々を安心させるビジョンを提示して貰いたいのです。そのための特別チームです。

★党代表選挙を実施せよ

 第二には、公明党は代表を選ぶにあたって、選挙を経ないのは、民主主義政党としておかしいとの指摘です。これは、私の親しいある大学の政治思想史を専門とする教授からのものです。ゼミの学生たちに意見を聞くと、公明党に抱く疑問の最大のものは共産党と同様に、党内民主主義の欠如だと見えるというのです。どこでどう決まったか分からぬ形で選ばれた代表では、いかに優れた人物であろうと、おさまりが悪い、と。私はこれまで、党代表選挙をしても、党内を分断するだけ。いいことはない、と思ってきましたが‥‥。

 もし、これから公明党が代表選挙をするなら、連立政権参画の是非を巡って、改革か安定かの選択などの論争は、世の注目の的になろうかと思います。二枚看板の「平和」、「福祉」政策も、どう深めゆくかが大きなテーマでしょう。党の置かれた状況を思いやる時、思い切ってやれば、との思いが高まってきます。

★話題性のある候補者を選べ

 第三に、公明党の人材には、優秀な人が多いことは分かるものの、もっと話題性や集票能力のある著名人を求めてはどうかとの、元官僚の意見です。比例区の場合はそういったことで、浮動票を集められるとの意見でしょう。加えて女性が今回の比例区7人にゼロだったのは理解不能だと言われました。

 かつて、公明党は、学者、文化人ら党外の有識者にその道を選択してもらうという大胆な方針を取ったことがあります。私も公明新聞記者時代に、党の公認候補になった、原子核物理学者の伏見康治日本学術会議議長(当時)の人物紹介を担当したことがあります。この人を始めずらっと6人ほどの著名人を並べた名簿は壮観でした。その後、様々な意味で功を奏せず、この試みは長く続きませんでした。今やれば面白いかも、との考えも頭をもたげてきます。

 また、女性候補については、確かに少ないと思われます。それこそ、ずらっと比例区はオール女性を並べると、話題性は凄いでしょう。ともあれ、もっと色んなことを大胆にする必要があると考えます。(2022-7-21)

 

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【50】連立政権下の相互支援の難しさ➖参議院選を振り返って(下)/7-13

 カンカン照りが続いた選挙戦のあと、兵庫・関西地域はまるで梅雨どきに戻ったかのよう。故安倍元首相への涙雨か、日本の前途を憂える天の嘆きか。ここで、兵庫県に偏った今回の参議院選結果の「私的分析」を試みたい。メディアが「自公勝利」を言い募るごとに、そこはかとない違和感が漂う。「自民党大勝」であっても、公明党はそうではない、と。7選挙区全勝は喜べても、比例区票減はとても喜べないからだ。もちろん、自民党候補を全国各地で支援した公明党としては、自民と公明とを切り分けて見ようとすること自体が無理筋で、ここは素直に「自公連立政権の勝利」を喜ぶべきだろう。連立以前の野党時代の公明党で育った古い体質から抜けきれぬ我が身が疎ましく思われる▲選挙期間を通じて、全国一厳しいと公明党内で呼号されてきた兵庫選挙区は大激戦の末、前回より票を減らしながらも勝つことができた。党員、支持者の皆さんの涙ぐましい支援のお陰である。6年前の定数増で、前世紀以来の挑戦が再び出来る様になった。今回で3回目となる参院選は実に厳しい戦いの連続。尤も、苦しみ抜いたのはお互い様だ。連立政権下の相互支援の難しさが骨身に染みる。それにしても、維新の躍進は目を見張る。候補者自身の付加価値が大きいとはいえ、支援組織が殆ど見られないにも関わらず、浮動票を大きく集める力は脅威だ。この党の体質については兎角の噂がつきまとうものの、応援する層の思いは分かるような気がする。かつての公明党のお株を奪うような〝健全野党ぶり〟への期待であろう▲一方、立憲民主党の不振ぶりには、競い合った相手ながら驚く。実は私は選挙戦当初には同党候補を強敵と見ていた。市議、県議を経験し、二人の子育てをしているママさん候補は、我が陣営の候補にない強さを持つと見たのである。しかし、政見放送を聞いて驚いた。「あれもやります、これもやります」だけで、最大野党候補の政見にしては、重みや深みがなく、何より「挑戦者の物語」が窺えなかった。かつて「土井たか子」を生み出した「兵庫の革新層」は強かった。とはいえ、「立憲」と「共産」の選挙協力の影に怯えた者としては、えらそうなことは言えない。両党票を足してもこちらは未だ上だと、ほっと胸を撫で下ろすばかりだ。「強い野党よ、いでよ!」が、日本の政治を真に憂える人々の本音だろう。「安定」もいいけど、政権の価値が「低値安定」では嘆かわしい、と▲〝感情過多気味〟の結果分析になってしまった。ついでに、これからの日本政治、とりわけ連立政権への注文をつけたい。既に、私は「毎日プレミア」や「朝日論座」で主張したように、今日本が抱える課題について、まず自公両党が徹底的に議論して、それぞれの考え方を擦り合わせることが大事だと考える。選挙時には助け合っても、平時になると、それぞれが「自分の家に篭ってしまう」というのでは困る。「社会保障」で、「エネルギー」で、「経済政策」や「憲法」で、両党の方向性の違いを戦わせ、磨き上げて欲しい。これまでは、そうした議論が外に聞こえてこない。「平和安保法制」のケースは例外だったのか。その後は〝音無しの構え〟だ。選挙後、党首、幹事長の4者が顔合わせした際に、これから各種テーマで協議しようとの合意はなかった。私の耳には選挙戦を通じて「自公両党はこの国をどこへ持って行こうとしているのか?国家観、ビジョンが見えない」との、友人の声がこだましている。(2022-7-13 この項おわり)

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