●衆議院議長、市川氏らと議長公邸での懇談
私が現役時代に付き合った多くの政治家の中で、思い出深い人は衆議院議長も経験され、今も現役代議士の伊吹文明さんです。元を正すと、衆議院金融改革特別委員会の視察で欧米旅行を一緒にしたのが関係を深める、きっかけです。以後、様々な機会に激励を受けつつ、交遊を深めてきました。市川雄一元書記長との関係も、渡辺美智雄氏(元副総理兼外相)を介在させて深いものがあり、折に触れておふたり相互のお話は聞いていました。
現役の間は機会がなかったのですが、辞めてから私が京都に足を運んだ時に伊吹事務所に立ち寄って名刺を置いてきたことが機縁となりました。その直後に同議長から、市川、太田、井上と私を議長公邸にお招きいただくことになった(5月29日)のです。太田、井上両氏と私の3人は公明新聞記者時代に市川主幹(当時)に薫陶を受けた、いわば同門同期のさくらであることから、議長が着目されたものと思われます。太田氏は京都大の後輩でもあり、当然それぞれの関係があったのですが、私の引退をしおに、昔の仲間を呼んで昔話・懇談の時間を持ってくれたのです。有り難いことでした。
伊吹さんは、『いぶき亭 四季の食卓』という料理本の名著を出すなど、そこいらの政治家とは一味も二味も違う独特の個性を持った人です。大島理森氏(現衆議院議長)とも親しく、この時も途中合流されていました。「安保法制」をめぐる国会での議論が勢いを増していた時だっただけに、公明党内空気を探る狙いも当然あったと思われます。伊吹氏との交流で忘れ難いのが、彼の親しいジャーナリストS氏と私の佇まいが似ているとの発言です。私の政治家らしからぬ本性を見抜かれたのかと、内心穏やかならざるものがあったことを覚えています。
●京都での「文化講演会」に招かれて
一方、この年は幾たびか京都に行く機会がありました。そんな中で、嬉しかったのが北区のある地域の公明党の会合(6月25日)に呼んでいただいたことです。しかも、政治向きのテーマでなく、私の読書好きを見込んでのものでした。『忙中本ありー新幹線車中読書録』を書くに至った経緯や、好きな本について何でも話して欲しいという主旨の依頼だったもので、まるで評論家の様な気分で縦横無尽に話せました。京都は、伊吹文明氏の他にも、谷垣禎一氏(元財務相=自民党総裁)のような知的雰囲気を湛えた政治家が多く、公明党も竹内譲氏(現政調会長)や、彼を支える党員の皆さんたちも同様です。面白い土地柄だと思います。
後年、京都NHK文化センターでの『法華経講座』に、仏教学者の植木雅俊氏が講師として連続講座をされると言うので、私もわざわざ参加しました。その時にも私を講演に招いてくれたN氏が来ていました。古都・京都が結ぶご縁で旧交を温めたしだいです。(2021-3-31)