Author Archives: ad-akamatsu

【78】「旧統一協会」問題と臨時国会論議/12-14

 安倍晋三元首相が選挙最終盤で奈良県の街頭演説先で射殺されて5ヶ月あまり。犯人が旧統一教会信者の家族であり、その供述から同協会を支援してきた安倍氏に対する逆恨みが犯行の原因だった。臨時国会では、悪質な寄付の勧誘を強要する行為を規制する法案が閉幕日に成立した。この法案成立の直接の背景は、言うまでもなく旧統一協会による被害者の救済にある。法律の成立過程には被害者、家族及びその弁護士団の意見陳述が重要な要素を占めている。しかし、出来上がった法律に対してのその人びとの率直な評価は、極めて低い。涙を浮かべながら「私たち被害者を忘れないで欲しい」と言った被害者家族の象徴的コメントを始め、ないよりはましとの意見が専ら。東大の河上正二教授は「100点満点で60点。最初の一歩に過ぎず見直しが必要」という◆国会論議や与野党協議を振り返る報道をメディアで追うと、野党が被害者家族の側に立っていたのに、与党が当初積極的でなく後半になって成立に前向きになったとの論評が多い。また、宗教団体を支援母体に持つ公明党への配慮が足枷になったとも伝えられる。これらの報道をめぐっては真偽のほどは不明である。ためにする見方や、最初からバイアスのかかった思い込みの観点で見る向きが多いことは否めない。この辺りは、報道関係各社の真摯な姿勢に期待する一方、関係政党の党利党略にこだわらないフラットな情報公開を求めたい◆思い起こせば、この問題は今日まで日本社会の中で広く知られていたにもかかわらず、報道機関は生ぬるい対応だった。今頃になって、高みから批判する態度には問題なしとはしない。旧統一協会との接点を持つ政党、政治家も、自民党は勿論、立憲民主党始め野党にも数の差はあれ存在していた。それゆえ、当たり前といえようが、国会で追及してきた議員はほんの僅か。殆ど放置されてきていたのが実態。その責任は大きいと言わざるを得ない◆法案成立の最終段階で、配慮義務に「十分な」という言葉を加えることが与野党協議の決め手になったという点が話題になった。先日のフジテレビのプライムニュースでも、その効力をめぐって論議が交わされていた。これは誰が考えても政治的意味合いはあれども実効力は疑問視せざるを得ない。「言葉遊び」か「ダメ押し」か、などといったことで野党間で議論の応酬をしていると、政治不信が高まるだけだろう。法案が成立したので終わりではなく、より真っ当なものを目指して修正を加えていく必要がある。同時に同協会への「質問権」行使の施行を徹底することで、闇の部分を明らかにすべきである。(2022-12-14)

 

 

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【77】師走の日曜日、西宮から神戸へと、動き・聞き・語る/12-5

 昨4日、朝9時から夜10時まで、絶え間なく人に会い、聞き、語り合う楽しい懇談で充実した日を過ごしました。まず、朝は西宮江上町にある、公益財団法人『奥山保全トラスト』の本部での理事会。自然環境保護に長年取り組んでこられた大学教授、大学経営に携わられる元衆議院議員らの理事の皆さんと共に私も参加しました。お昼まで、この一年の事業展開を総括したり、内閣府に提出する文書などの点検に勤しみました。全国各地で「再生エネルギー確保」名の下に、森林破壊など乱開発が進められている現状に、早急な対応をせねばとの認識を共有したのです。静岡県浜松市の佐久間トラスト地近傍の開発計画にストップをかけるべく、今月半ばに動くとの報告があり、それを受けての国会陳情に私も協力することにしました◆その後は、一年の納めでもあることから、皆で場所を移し、昼食懇親会を阪神西宮駅そばで。そこでは新たに理事候補になった台湾出身の青年や、事務局の若者たちと卓を囲み、〝男女混在・老青一体〟の有意義なひとときになりました。この法人は『日本熊森協会』と姉妹団体。両法人ともにトップは女性で、子育て真っ最中。片や弁護士、もう一方は高校英語教諭ですが、おふたりとも幼子を連れての参加もしばしば。この日も、〝未来からの使者〟ひとりが卓の周りを這い回っていました。昭和戦前生まれを筆頭に、団塊の世代から、その第二世代まで幅広い人たちが集まったわけで、相互に刺激し合う会話が飛び交いました。若い男女青年との語らいは私にとって何よりものパワー源です◆3時からは、神戸市脇が浜海岸住宅に阪神電車で移動。春日野道駅から歩いて10分。元神戸新聞編集委員の武田良彦さんの4LDKの全ての部屋はどこもかしこも骨董品だらけ。仏像やら陶磁器などありとあらゆる珍品が所狭しと陳列されていました。実はこの人、そのむかし東京支社勤務時代に国会担当で親しくした友人。このほど『骨董病は治りません』という〝超面白本〟を出版したばかり。贈呈していただき、今読んでる最中です。たまたまこの日は、彼の自宅で年に一回開かれる芋煮会ということを知り、押しかけました。彼は山形県生まれ。珍しい同県の食材をいただきながら、集まった彼の職場の後輩たち4人の現役記者と懇談したのです。骨董については全くの門外漢ですが、この20数年彼が買い込んだ品々を背にし、横にしての〝骨董談義〟は笑いと感動の連続でした。日本文化の奥深き粋は骨董品にあり、を実感したしだいです◆夜は西明石駅で小説家の高嶋哲夫さんと6時前に待ち合わせ、川崎町の我がマンションに向かい(私は帰り)ました。我妻の姫路在住の友だちたちとの〝女子会〟のゲストとして今回彼を招いたものです。高嶋さんは、『首都感染』『メルトダウン』など現代社会をめぐる、ありとあらゆるテーマで小説を書き続ける気鋭の作家です。最近は『EV』で近未来の自動車産業の展開を追い、『落葉』でパーキンソン病患者の甦りの姿をあつく描いています。お好み焼きと焼きそばをいただきながらの、読書好きお喋り好きの女性たち3人との語らいは、あっという間の4時間でした。この夜の主たる話題は、近未来に襲ってくるはずの大地震やら、混迷続く日本政治の行方でした。別れ際に、女性たちは、1999年にサントリーミステリー大賞を受賞した『イントゥルーダー』を、高嶋さんから頂いていました。サインには「夢を叶える」と。〝13時間の連続行〟の1日を終えた私はそそくさとベッドイン、〝夢の中の人〟になりました。(2022-12-5)

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【76】アフリカへの中ロの進出と日本の対応/11-28

 先日、私が朝日新聞Webサイト『論座』に寄稿したものが掲載されました。『専制主義と自由主義の主戦場となるアフリカ』というタイトルです。論旨は、両国のアフリカとの関係を20世紀末から今に至る流れを追う中で、かつて欧州列強の植民地になっていた国々が態度を変えるに至っている背景を探ったものです。きっかけは、ブルキナファソの外相の「今の苦境から抜け出すためには棘のある枝でも掴むしかない」との発言をNHKテレビ『クローズアップ現代』で観たことでした。ロシアのあの手この手のアフリカへの接近ぶりを紹介していました。私はその狙いは、国際社会での孤立化から我が身を守ることにあり、今回の「ウクライナ戦争」でも、真っ向から反対しない国がアフリカに多いことが裏付けているとの見立てを提起しました。同時に、中国がほぼ同じ時期にアフリカ進出を果たしてきたことを、私はかの国の「一帯一路」構想の具体化と、国連平和維持活動(PKO)の展開の両面から描いてみました。この国も、新興勢力として、自国の味方を増やす狙いがあるからでしょう。この30年、中ロ両国が紆余曲折を経ながらもそうした行動を可能にしたのは、経済の発展があったからという点をも付け加えたのです◆アフリカを巡って、ヨーロッパの自由主義国家と、中ロの専制主義国家の〝歓心獲得戦〟の様相を呈していることに世の注意を喚起し、本来的には先進国家群の「国家欲」の主戦場とすべきではなく、人道主義の観点から支援の手を差し出すべきではないか、と結びました。この論考に対して、早速、元OECD大使の登誠一郎さんが貴重な助言を私信で提供してくれました。この人は今、一般社団法人「安保政策研究会」で理事を務めておられ、かねて私が畏敬の念を抱く方です。同大使は、アフリカへの一般的な関心を高める上で、私の論考が役立つものだとの好評価をしていただいた上で、このテーマにおける日本の対応について大事な問題を提起していただきました。それは、中ロ両国がアフリカ人留学生を受け入れていることが、友好関係を築く上で大きい役割を果たしているとの視点でした◆日本の対応についてはまた別の機会にすればいいと、私は今回はスルーしてしまいました。登さんが言われるように、留学生交換については、例えばロシアはソ連時代から熱心にアフリカ人留学生を受け入れてきた歴史があり、すでに8万人にも及ぶと言われます。一方、日本は「30万人留学生受け入れ計画」が実行されている中で、アフリカ人は1%の3千人にも及ばない段階です。中国はアジア一の留学生受け入れ大国と言われて久しく、「一帯一路」戦略の大きな柱にもなっていますので、アフリカ人受け入れも、いうまでもないものと思われます。この問題は各国の民族性とも絡んでいるのでしょう。日本人は比較的外国との交流促進に淡白な上に、このところ一段と内向き傾向が強いと見られているのはどういうことでしょうか◆先日、ルワンダに居住する日本人青年が街中の風景を克明に紹介しているユーチューブを観ました。中心部は素晴らしい発展ぶりで、現代化が著しく欧米風のビルが立ち並んでいたのです。私自身、かつてルワンダを舞台にした映画を観たことを思い出しました。『ホテル ルワンダ』(2005年)です。内戦で混乱の極にあり、虐殺も行われていたことが描かれていました。悲惨な状況だったその国が今ではすっかり生まれ変わっている様子がユーチュウブ映像から伺え、とても驚いたのです。その背景には中国の存在が大きいことも伝えられていました。国家が総力を挙げて他国に経済的、軍事的協力を惜しまぬ中国の戦略の一端が読み取れ、息呑む思いがしたものです。ロ中の向こうを張る必要はないでしょうが、等身大の日本文化の良さを、アフリカ諸国に知って貰う努力をもっと官民あげてすべきだとは思います。(2022-11-28)

 

 

 

 

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【75】自民党の異常な体たらくを前にして思うこと/11-21

 寺田稔総務相が20日に辞任した。「政治とカネ」にまつわる、ずさん極まりない管理の責任を追及された挙句の末である。一ヶ月の間に、閣僚が更迭されるのはこれで3人目である。1人目は山際大志郎経済再生担当相。旧統一教会と密接な関係を持ってきていながら曖昧極まる説明に終始した結果だった。2人目は、葉梨康弘法務相。法務大臣とは死刑決定の判を押す時だけしか注目されない地味な仕事だとの放言を問われた。三者三様、見事なまでの政治家失格、大臣不適任の言動の実態である。これはどう見ても、岸田内閣が危機的症状にあることを示している。この状況を前に、私自身が恥ずかしいと思うことがある。それは、今夏の参院選が終わったあと、これで岸田自公政権は、次の参院選まで国政選挙はないと見る「黄金の3年間」を手にしたとする論調に便乗したことである。こんな体たらくで、ここから先の政権運営がうまく行くはずがない。よほどのことがない限り、早晩衆院解散に追い込まれることは必至であろう。「黄金の3年」などと、よくも言ったものよと、ひたすら我ながら恥じいるばかりである◆今、私は「恥」という言葉を使ったが、今回辞めた3人、テーマは違うものの、共通するのは、辞めた理由はこれ以上大臣を続けていると、国会運営に支障をきたすので辞めることにしたという言葉を使っていることである。関係者に迷惑をかけるので、申し訳ないからというのだ。そこには、有権者から選ばれた政治家として、国事を司る大臣として、恥ずべきことをしてしまったという倫理観がうかがえない。元衆議院議員としての私でも、政局の見方、政治の風向きを見誤ったことが恥ずかしいと思っているのに、である。人間、恥を忘れたらおしまいだと思う。政治家にせよ、企業経営者にせよ、誰にせよ、自身の職業倫理に照らして恥ずべきことはないとの確信なきところに、希望の明日はない◆自民党は本当にどうかしているというほかない。今回の3大臣の〝罪〟は重い。政治とカネの不始末、政治家の無責任な暴言という伝統的な不祥事に加えて、政治家と思想・宗教という根本的な問題について、きちっとした理解、認識がなされず、単に〝票欲しさだけ〟でなかったのかとの疑問に答えていないからである。こうした「大臣辞任劇」は、これまで見慣れた風景であるが、あいも変わらず続くのは、なぜか。それは、国民有権者を舐めており、政治家の責任を甘く考えている。──そこから帰結するのは〝恥知らず〟だということではないか。岸田首相は、緊張感を持って立ち向かうとの趣旨のことを述べているが、任命責任の重大さを感じているのかどうか疑わしい◆連立政権を組む公明党にとっても、人ごとでなく、他党のことだからでは済まされない。ここは重大な連帯責任を感じる場面であろう。コロナ禍に加えて、ロシアの「ウクライナ戦争」で「第三次世界大戦」への懸念さえ惹起され、国民生活は異常な物価高で危急の極みに瀕している。私が尊敬している某新聞社の論説主幹経験者は、私が先に上京して会った際に、「この場面は公明党の出番で、山口代表の首班もあり得る。取りに出るべきではないか」とけしかけられたことを思い出す。確かに、かつて「自社さ政権」で自民党は少数与党の村山喜一社会党委員長を担いだことがある。立憲民主党の元首相である野田佳彦氏を担ぐ声もあるやに聞くが、政権構成の常識からすれば、ここは連立パートナーの公明党の代表にとの話は決して夢想ごとではないと思われる。山口氏はことあるごとに、政権の「安定」を強調し続け、自民党を支えると発言してきている。色々差し障りはあっても、一声上げるのはむたいなことではないと思うのだが。(2022-11-21)

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【74】泉明石市長の「政治家引退」発言の真偽を問う/11-14

 昨13日に明石市で開かれた「全国豊かな海づくり大会」に、天皇、皇后両陛下が出席されました。この大会が兵庫県で開かれるのは1957年の香住町に続き2度目。かつて一般社団法人「瀬戸内海島めぐり協会」の専務理事として「明石の海づくり」に僅かながらも関わった私としては、思い入れはそれなりにあり、3年ほど前にはこの大会を目指していたものです。残念ながら、同協会はこの2年余り前に、コロナ禍による観光業の打撃を免れず、挫折してしまいました。泉房穂市長絡みで何かと話題が多い明石市ですが、これをきっかけに「子育てしやすい町・明石」の看板だけでなく、本来の海の恵み溢れる港町として一段と輝きを増して貰いたいものです◆それにしても、同市長の暴言癖には驚きます。市内の土地買収の遅れに業をにやして、担当職員に「そんなもん火つけてこい」とのたまわったパワハラ発言に続き、先日は、市長自らの「情報漏洩」に端を発した「市長問責決議案」提出に対して、「そんなもん出しやがって、今度の選挙で落としたる」と、公明党女性市議や現職市議会議長に凄んでみせました。この暴言の責任をとって、明年の市長選には立候補せず、「政治家引退」を表明しました。しかし、一方で、地域政党を立ち上げ、明石市に〝院政〟を引く一方、兵庫、関西エリアの「政治指南役」を買って出ようとしています◆彼の暴言によるトラブルは枚挙にいとまなく、その被害にあったのは、市職員や市議会議員にとどまりません。会合に遅れてきた衆議院議員に、「挨拶なんかさせるな」とか、著名な女性小説家が会長を務める環境保護団体のフォーラムに対して、「税金の無駄遣いや」と一方的に決めつけるなど、枚挙にいとまがないのです。このほかにも、大小様々な舌禍どころか、暴言、妄言の数々はただただ呆れるばかりです。発言の後で、その都度失礼を詫びて謝り、撤回するのですが、本人自身が自己をコントロール出来ないようです。市長を一旦辞して出直した前回市長選の際には、〝自身の病状〟について異例の説明会見をするなど、市民公認の〝病気持ち〟ではあります。市長の能力を高評価するある著名な学者が、「障害者が市長をしているのだから」と、弁明したことも知られています◆今回の同市長の政治家引退と地方政党創設発言が今後どういう成り行き見せるのかは未だ不明部分が多いようです。これまでの経緯から見ると、世間の反応を見据えて、自由自在の対応をしてくることも考えられます。多様で高度な能力を併せ持つ人材だということは、私も認めるのにやぶさかではありません。いや、これだけの付加価値を併せ持つ政治家は珍しいと、かつては宣揚したものです。しかしながら、言葉を操る職業である政治家がその言葉でたびたび人を傷つけ、痛めつけるようでは、残念ながら失格です。潔く政治の世界から手も足も完全に洗って、未練をかなぐり捨て、違う世界で再生されることを勧めます。(2022-11-14)

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【73】「奥山保全トラスト」の仲間と、紅葉の白山ツアーに/11-7

錦秋の白山は輝いていた。急な山の斜面を幾たびか転び落ちそうになりつつも、豊かな広葉樹林のふところ深く登っていった──昨6日朝、前泊した金沢から特急しらさぎで20分、小松駅に降り立った私の気分は静かに高揚していた。公益財団法人『奥山保全トラスト』のツアー20人ほどの仲間たちと一緒に白山連峰のふもと白峰に向かう。天候は予測を裏切り温暖そのもの。コロナ禍ゆえの久しぶりの試みに、高校の30年ほど後輩の弁護士の玉田欣也君を誘った。文化の地・金沢をこよなく愛す同君との北陸・石川紀行も2日目となる。〝歴史と文化〟の探訪から一転、大自然の恵みを味わおうという、短くも贅沢な旅に私は酔いしれた◆全国に19カ所のトラスト地(2346ha)を持つ、この法人の理事を務める私だが、現場に足を向けることは残念ながらあまりない。地元兵庫以外には浜松市の天竜区佐久間に続きこれが2回目。『77年の興亡』が現実化し、我が国も世界も混迷の極致に彷徨う今晩秋。だが、白山の1日には心慰む場面がそこかしこにあった。お昼前に約22haに及ぶトラスト地に向かい、紅と黄色が織りなす緑の絨毯のような林の中を分け入った。地質学や植物学に明るく詳しい3人の同法人所属の青年職員の案内のもと登りゆく。参加した人々の歓声があちこちで。〝広葉樹文化〟を愛してやまない美しい心の持ち主たちの〝森の交遊〟である。市ノ瀬ビジターセンターの前の広場で思い思いのお弁当を食べた後、午後からは釈迦新道入口より、天然自然林のなかに分け入った◆2008年に、トラスト地を購入し得た経緯には驚く。山林の持ち主は、「山を荒らす動物はいらない、山には植物だけでいい」との考え方の人であった。その彼と根気よく対話を重ね信頼関係を築いた上で、「人と動植物の共生共存こそあるべき姿」との主張を繰り返し、取得に至った。三井明美支部長(当時)の手記には心揺さぶられる。当初頑強にトラスト化に反対した地主さんの考え方は、今なおポピュラーなものかもしれない。「生きとし生けるもの皆平等の生命」だとの思想は、頭では分かっても現実には難しい。〝人間優先による動植物支配〟の考えは残念ながら〝普通の常識の座〟を譲らないのである◆自然環境破壊は、様々な様相を呈しつつ日本の各地を日々脅かす。東北の森林が〝新エネルギー確保〟の旗印のもと、次々と侵食されているが、東海地域でも新たな危機が迫る。今進めようとされる「浜松陸上風力発電事業」(仮称)には、我が公益財団法人が所有するトラスト地が含まれていると聞く。にも関わらず、開発着手に及ぼうとしているという。これが事実なら前代未聞の暴挙という他ない。早急に事実関係を明らかにして、節度ある開発にたち戻らせる必要がある。暮なずむ小松駅に帰った私たちは、豊かな紅葉に癒やされた一日から、新たな課題に取り組む日常へと立ち向かうべく、特急サンダーバードの人となった。(2022-11-7)

 

 

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【72】混迷続く内外情勢めぐり東京で4日間の懇談/10-30

     久しぶりに上京することになり、折角の機会なので10月25日から28日まで、3泊4日の長逗留をしてきました。全部で15コマの出会いをこなしましたが、重大な問題意識を持つに至るとても貴重な刺激を受けた4日間でした。以下、時系列に沿って10コマの出会いについて大まかな報告をします。第一日目(25日)は、東京在住の姫路出身の仲間たちと六本木で懇談会。私が上京するたびに招集、「姫人会」と称して異業種交流をしています。この夜集まったのは、7人。そのうち5人が東大、京大卒。元高級官僚、医学博士、大学教員、元大企業役員といった多士済々の面々。それぞれの現況報告と明年の夢を語りあいました。私は『百人1冊』(仮題)という読書交友録を出版する計画を披歴しました◆第二日目(26日)は、昼過ぎに信濃町で、情報システム学専攻の創価大、事業構想大学院大学客員教授と懇談しました。彼は、英国で博士号を取得し、同国で長く生活をしてきた学者。日本の没落の原因は、デジタルシステムの決定的な遅れにあると指摘。政治の停滞、経済の混迷ぶりはもはや取り返しがつかない段階にあるとの厳しい現状認識を聞かされました。更に近未来の軍事、経済両面での「中国の脅威」から、日本を守るには、もう米国と合体するしかないとの「極論」まで吐露。私は自著『77年の興亡』に実質的な米国支配に甘んじている日本は、独立国家と呼び難いと書いています。改めて深い憂慮を抱かざるを得ませんでした。夕刻から夜にかけては、東銀座へ。かねて付き合ってきた新聞社の論説主幹、経済部デスク、Web担当デスクと意見交換。ここでも、崩壊寸前の日本の政治が話題になりました。コロナ騒動、ウクライナ戦争に右往左往するうちに、旧統一教会問題で、自民党はうろたえるばかりです。この党の統治能力がいよいよ疑問視されることに、大筋の意見一致を見ました◆第三日目(27日)は、昼前に日本カイロプラクターズ協会の幹部共々国会を訪問。厚生労働省医事課長に、恒例になっている同協会公認のプラクターズ名簿提出にI代議士と共に立ち会いました。終了後、しばし同氏とさしで現況の情勢について意見交換。政府与党が危機的状況にあることで意見の一致をみたしだいです。その後、神保町で某紙外信部記者に会い、中国情勢をめぐる最新の情報を聞きだしました。3年程前に私が訪台して当時同地駐在だった彼と懇談して以来でしたが、その成長ぶりに目を見張ったものです。次いで、泉岳寺近くにある神奈川歯科大大学院へ。統合医療の特任教授らと意見交換する中で、様々な刺激溢れる話を聞けました。四肢の衰えを実感する身として大いに参考になったものです。夜は、私が厚生労働副大臣をしていた頃の秘書官ら3人と赤坂で懇談。コロナ禍対応で苦労する後輩たちを慰労しました。様々な課題を聞くいい機会になったことは言うまでもありません◆第四日目(28日)は、朝は国会傍の憲法審査会事務局に立ち寄りました。衆院法制局長らから同審査会のこの一年の審議実態を聞くことが主目的でした。やや前進の傾向にあることに安堵したものの、まだまだのテンポに嘆息は否めません。安保法制成立後6年が経つ状況を踏まえ、具体的な質疑の進捗に向けて私の考える問題意識を述べておきました。このあと、お昼に内幸町で旧知の関学大大学院講師らと会い、この人が主導してきたメタバースの先進県・島根における展開状況を聞きました。一方、日本の危機を乗り切るために引退した国会議員の知見を活用すべきとの彼の提案を頂きました。一考に値するゆえ、熟慮検討を約束しました。その後、3時からは四谷で、核兵器廃絶に向けて世界を飛び回るNGO幹部のT氏に会い、種々意見交換をしたのですが、この人もまた、日本の現状を深く憂慮していました。ここでは若い世代への働きかけが喫緊の課題であることで合意しました。こう書いてくると、硬いことばかりの連続であったかに見えますが、息抜きの柔らかな出会いもそれなりにあったことも付記しておきます。(2022-10-30)

 

 

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【71】「旧統一教会」問題の本質を問おう──予算委質疑、大臣辞任から/10-24

 「旧統一教会」をめぐる問題が安倍晋三元首相の死後、国会始めあらゆるところで取り沙汰されている。これまで、それなりに雑誌、新聞、テレビなどのメディアで報じられてきたものを目にしてきたが、あまり本質を突いたものに出くわさない。興味深く私が読んだのは『文藝春秋』10月号の統一教会に関する座談会記事と、毎日新聞夕刊10月12、19日付けの石破茂さんの「政治と宗教」の2つ。前者では、仲正昌樹金沢大教授の以下の発言が注目された。「自民党の支持基盤が縮小し、保守的なことを語っても、ネット右翼は別として、有権者があまりついてこないので、政治家たちは自信を失っているのではないでしょうか。保守思想を広げるお手伝いをしてくれる統一教会の団体が魅力的に見えるのでしょう。教団の狙いなどあまり考えないで付き合って、どうして付き合ったのかと、追及されるとあたふたする。(中略) 今の自民党の保守派は過激なことを言ってるようで、小心者が多そうですね。今回はよく分かりました」──「小心者が多そう」との指摘はそのものズバリだと思わざるを得ない◆もし、安倍晋三元首相が生きてたなら、「旧統一協会」問題にどう答えたか。「同教会とは反共思想を共有している。いわば同志である。かつての反社会的行為は行き過ぎであった。今はないと信じている。もしあるなら直ちにやめていただくよう申し上げる。関係を断つなどありえない」こう言うに違いないのではないか。それを今の自民党の皆さんは岸田首相以下、「関係を断つ」の一点張りなのは、解せない。そこは石破茂氏。さすがに違う。一切縁を切るのは簡単な話ではないとした上で、「縁を切るなら、その理由を明らかにする必要がある。法的な問題もあります。旧統一教会は宗教法人です。宗教法人とは公益性のある法人のことです」と述べる。公益性を持つと政権党としてお墨付きを与えておきながら、もう一方で、今後一切関わらないというのでは、論理的に成り立たないというのだ。これはまさにその通りで、今まで付き合ってきた理由と、これからその関係をなぜ断つのかについて明確な説明が必要である◆24日に、国会での予算委員会(集中審議)の後、山際大志郎経済再生相が旧統一教会と自身の関係を説明しきれないまま辞任した。記者会見で何が一番問題だったか?と問われ、「外部からの指摘で後追いになってしまった」ことを挙げていた。自分が同教会となぜ付き合ってきたか、今回どうして辞めるのかについて、正面切って触れなかった。要するに、辞めた理由は自分が何も説明出来ないから、これ以上大臣職についていると仲間内に迷惑かけるから、というのが強いて言えば理由であろうか。このこと自体、大臣の資格はないが、辞めて済むものではない。辞めると、国会答弁の矢面に立たずに済み、〝支持者へのお詫び行脚〟はあるにせよ、ご本人はこの上なく楽なのに違いない。だがことの本質は一歩も解明されない。こんな大臣を「任命した責任はある」と認めた岸田首相は、一体どういう料簡なのか。こうなることは一定の想像力があれば分かることだった。結局、この問題を舐めていたとしか言いようがない◆首相は、この期に及んでも、議員一人一人の説明に任せるとの意味のことを言うだけで、自民党としての責任は曖昧なままだ。被害者に対する救済と、政党として旧統一教会と関わってきたことのケジメをつけることは別問題である。石破氏が言うように、長く付き合ってきていながら、ここでなぜ関係を断つのかとの説明を、自民党総裁として行う責任が岸田首相にはある。僭越ながらあえて首相の代弁をすれば「我々自民党は、岸元首相から安倍元首相に至る保守派『清和会』の先導により、旧統一教会の反共思想に共鳴し、選挙支援もして頂けることから唯々諾々と従い付き合ってきた。だが指摘されるように、この教会は、反社会的行為はおろか日本の国益をも損ないかねない団体であることに気付いた。遅きに失するが、『過ちを改むるに憚ることなかれ』の故事に因み、今後は関係を断つことにした」ということなのだろう。仮にそう首相が言うとすれば、そんな政党にこの国をゆだねてきた有権者の立場は、一体どうなるのか?(2022-10-25)

 

 

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【70】中国と共にロシアの〝草刈り場〟になるアフリカ/10-17

    先日、NHK総合テレビ『クローズアップ現代』で「ロシアが友好国を拡大?」と題した、ロシアのアフリカ進出の実態を描く放映を観た。正直驚いた。それは、アフリカにおいて、ロシアに親近感を持つ国が意外に多いという事実である。この地域では中国の進出が激しいということはかねて知られてきた。習近平氏の登場(1912年)と共に、「一帯一路」構想が打ち出され、いにしえのシルクロードにちなみ、地続きのヨーロッパや海路でアフリカ方面にその手をのばし、経済協力路線を敷く。その一方、PKO(国連平和維持活動)活動にも熱心に取り組み軍事協力に勤しむことで、経済、軍事両面から関係強化を手がけていることは周知の事実だからだ。ところが、そのテレビ放映では、ロシアもこのところ急速に進出の度を加速化しているということを明らかにしていて注目された◆契機となったのは、2014年のロシアの「クリミア併合」。国連内において、反対する国々が多いことからロシアのプーチン政権は孤立化への危機感を抱いた。いらい、多数派工作をあの手この手で進め、2019年には全てのアフリカ諸国を集めたロシア・アフリカ経済フォーラムを開催するに至った。その甲斐あってか、この3月のウクライナ侵攻の際に、国連におけるロシア非難決議に賛成しなかった国がアフリカだけで、26ヵ国(反対1、棄権17、欠席8)にも及んだのである。もちろん、その理由は様々だろうが、テレビ放映で取り上げられていた国・マリは、イスラム過激派による国家危急の折に、かつての宗主国フランスが何もしてくれなかったのに、ロシアはあれこれと世話を焼いてくれたと伝えていた。ある弁護士がフランスへの不信感を述べる一方、ロシア支持の理由を表明、それをSNSなどで拡大する様子が紹介されていた◆ただし、その援助の実態を見る際に注意を要するのは、ロシアが「ワグネル」と呼ばれる「傭兵」集団を使っているとの疑念である。そのあたりをフランス軍高官の追跡調査で明らかにしたり、ある元傭兵を登場させ、証言を得ていた。そこでは、「ワグネル」が実質的にロシア政府の手で作られた準軍隊であること、高額の報酬を得られる戦闘プロ集団であり、強権的政府を持つ国々に調法がられていることなど興味深い事実が次々述べられていた。とりわけこの軍事集団によって数多い市民が巻き添えになって犠牲になっていながら、その責任の所在が不明だという衝撃的な事実にもふれられていた。また、マリと同様に「ワグネル」の関与が確実視されている近隣諸国が他に6ヵ国、軍事協力関係を持つ国が34ヵ国にも及ぶとのことにも。現在のウクライナ戦争にあっても、すでに一部では「傭兵」の活用も取り沙汰されている。プーチン政権が正規軍の補充に「予備役」を充てようとするものの、「兵役拒否」のために、国外に避難を目論む動きがそのことを裏付けているとも見られる。事実関係は判然としないが、あながち、事実無根とはいえないようである◆中国が両刀使いよろしく周到な準備を持って、アフリカ各国に浸透しているものの、この国独特の乱暴さが災いしているところも散見される。その間隙を縫って、ロシアが独自に進出をしているのかもしれない。アフリカと一口で言っても、その実態は低開発状態で極貧に喘ぐサブサハラ地域の各国から、都会と農村の格差はあれ、今や着々と生活向上を果たしゆく南アフリカ、ルワンダなどまで千差万別である。現実は、経済、軍事双方で面倒見のいい中露両国に身を委ねる国が着実に増えている。先のテレビでブルキナファソの外相が、インタビューに、どの国とも友好関係を持つと「建前」を口にする一方で、「この苦境から抜け出すためには、棘のある枝でも掴むしかない」と、手を差し延べてくれる国に頼らざるを得ないという「本音」を吐露していたのが印象深い。21世紀も中盤に向かって、アフリカが専制主義国家進出の〝草刈り場〟になろうとしている現実は厳しい。(2022-10-17)

 

 

 

 

 

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【69】やっとこさ「3ヶ月の夏休み」が終わった国会へ/10-9

 安倍晋三元首相が銃殺されて、8日で3ヶ月。やっと国会が召集された。参院選が終わって何故にかくも長く国会は休みだったのか。ずっと夏休みが続いていたのか。この間に何をしていたか、議員各位に報告を聞きたい、と文句も言いたくなる。そんな折に、毎日新聞8日付夕刊『熱血!与良政談』を読んだ。与良正男専門編集委員による面白いコラムだ。野党各党が、憲法53条に基づく臨時国会の召集について、国会法改正案を提出したと言うのだ。現在の規定はいつまでに開けとはなっていない。それを具体的に「20日以内に開くことにする」と、明記しようというもの。この動きの「ミソは立憲を敵視してきた維新が協力姿勢を示している点にある」と。与良さんは、かつて自民党も同じことを言っていた(2012年同党憲法改正草案)のだから、反対する理由は乏しい。改正案に賛成の側に回らねば、維新が菅義偉前首相らに手を延ばしかねないと忠告しているのだ◆これを読んで、私などは、そうならぬうちに公明党こそ、野党に同調すべきでないのかと思う。この辺りはもっと柔軟に世論に敏感にならねば、と。与党だから、なんでも自民党と歩調合わせねばならんということはないのではないか。そういえば、前日の参院での公明党の山口那津男代表質問を聞いた古い友人が電話で直ぐに、疑問を投げかけてきた。山口氏が、質問の最後に、「自民党をしっかり支えていく」との文言をわざわざ付け加えていたが、なんだか違和感を感じたというのだ◆旧統一協会問題について、これだけ今話題になっているのに、公明党の代表がそれに一切触れなかったことと関係あるのかと勘ぐりたくなる、とも。社会的に問題のある宗教団体と政治家との関わりについて、基本的な岸田首相の姿勢に釘を刺すぐらいはあって欲しい、と。私は、衆議院で石井啓一幹事長が最後に取り上げていたではないかと抗弁すると、「いや、代表と幹事長は違う。ここは参院でも重ねて糺すべきだった。それに、衆議院では細田博之議長のダンマリ姿勢が非難されている。石井さんは、その人物の真前で質問したのだから、立憲民主の代表のように厳しくなくても、皮肉の一つぐらい口にして欲しかった」と。そう指摘されて、いいものはいい、悪いものは悪いという姿勢が今の公明党に欠けていると思わざるを得なかった◆ところで、石井氏が「2040問題」を取り上げたことは光っていた。2025年から2040年の間に1200万人もの働き手が減り、社会保障費が膨大になっていく。これをどうするか。公明党は先の党大会でベーシックサービスの導入を絡めて、明年度中に対応策を打ち出すことを決めた。これは極めて大事な問題意識である。ただ、こういう基本的な重要課題は、自公両党でプロジェクトチームを組むなどして、立ち向かうべきだろう。それぞれが検討し、定期的に課題を持ち寄って議論を詰めていく。そういう協力姿勢も国家的課題には必要だ。今後注目して見ていきたい。(2022-10-9)

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