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【72】混迷続く内外情勢めぐり東京で4日間の懇談/10-30

     久しぶりに上京することになり、折角の機会なので10月25日から28日まで、3泊4日の長逗留をしてきました。全部で15コマの出会いをこなしましたが、重大な問題意識を持つに至るとても貴重な刺激を受けた4日間でした。以下、時系列に沿って10コマの出会いについて大まかな報告をします。第一日目(25日)は、東京在住の姫路出身の仲間たちと六本木で懇談会。私が上京するたびに招集、「姫人会」と称して異業種交流をしています。この夜集まったのは、7人。そのうち5人が東大、京大卒。元高級官僚、医学博士、大学教員、元大企業役員といった多士済々の面々。それぞれの現況報告と明年の夢を語りあいました。私は『百人1冊』(仮題)という読書交友録を出版する計画を披歴しました◆第二日目(26日)は、昼過ぎに信濃町で、情報システム学専攻の創価大、事業構想大学院大学客員教授と懇談しました。彼は、英国で博士号を取得し、同国で長く生活をしてきた学者。日本の没落の原因は、デジタルシステムの決定的な遅れにあると指摘。政治の停滞、経済の混迷ぶりはもはや取り返しがつかない段階にあるとの厳しい現状認識を聞かされました。更に近未来の軍事、経済両面での「中国の脅威」から、日本を守るには、もう米国と合体するしかないとの「極論」まで吐露。私は自著『77年の興亡』に実質的な米国支配に甘んじている日本は、独立国家と呼び難いと書いています。改めて深い憂慮を抱かざるを得ませんでした。夕刻から夜にかけては、東銀座へ。かねて付き合ってきた新聞社の論説主幹、経済部デスク、Web担当デスクと意見交換。ここでも、崩壊寸前の日本の政治が話題になりました。コロナ騒動、ウクライナ戦争に右往左往するうちに、旧統一教会問題で、自民党はうろたえるばかりです。この党の統治能力がいよいよ疑問視されることに、大筋の意見一致を見ました◆第三日目(27日)は、昼前に日本カイロプラクターズ協会の幹部共々国会を訪問。厚生労働省医事課長に、恒例になっている同協会公認のプラクターズ名簿提出にI代議士と共に立ち会いました。終了後、しばし同氏とさしで現況の情勢について意見交換。政府与党が危機的状況にあることで意見の一致をみたしだいです。その後、神保町で某紙外信部記者に会い、中国情勢をめぐる最新の情報を聞きだしました。3年程前に私が訪台して当時同地駐在だった彼と懇談して以来でしたが、その成長ぶりに目を見張ったものです。次いで、泉岳寺近くにある神奈川歯科大大学院へ。統合医療の特任教授らと意見交換する中で、様々な刺激溢れる話を聞けました。四肢の衰えを実感する身として大いに参考になったものです。夜は、私が厚生労働副大臣をしていた頃の秘書官ら3人と赤坂で懇談。コロナ禍対応で苦労する後輩たちを慰労しました。様々な課題を聞くいい機会になったことは言うまでもありません◆第四日目(28日)は、朝は国会傍の憲法審査会事務局に立ち寄りました。衆院法制局長らから同審査会のこの一年の審議実態を聞くことが主目的でした。やや前進の傾向にあることに安堵したものの、まだまだのテンポに嘆息は否めません。安保法制成立後6年が経つ状況を踏まえ、具体的な質疑の進捗に向けて私の考える問題意識を述べておきました。このあと、お昼に内幸町で旧知の関学大大学院講師らと会い、この人が主導してきたメタバースの先進県・島根における展開状況を聞きました。一方、日本の危機を乗り切るために引退した国会議員の知見を活用すべきとの彼の提案を頂きました。一考に値するゆえ、熟慮検討を約束しました。その後、3時からは四谷で、核兵器廃絶に向けて世界を飛び回るNGO幹部のT氏に会い、種々意見交換をしたのですが、この人もまた、日本の現状を深く憂慮していました。ここでは若い世代への働きかけが喫緊の課題であることで合意しました。こう書いてくると、硬いことばかりの連続であったかに見えますが、息抜きの柔らかな出会いもそれなりにあったことも付記しておきます。(2022-10-30)

 

 

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【71】「旧統一教会」問題の本質を問おう──予算委質疑、大臣辞任から/10-24

 「旧統一教会」をめぐる問題が安倍晋三元首相の死後、国会始めあらゆるところで取り沙汰されている。これまで、それなりに雑誌、新聞、テレビなどのメディアで報じられてきたものを目にしてきたが、あまり本質を突いたものに出くわさない。興味深く私が読んだのは『文藝春秋』10月号の統一教会に関する座談会記事と、毎日新聞夕刊10月12、19日付けの石破茂さんの「政治と宗教」の2つ。前者では、仲正昌樹金沢大教授の以下の発言が注目された。「自民党の支持基盤が縮小し、保守的なことを語っても、ネット右翼は別として、有権者があまりついてこないので、政治家たちは自信を失っているのではないでしょうか。保守思想を広げるお手伝いをしてくれる統一教会の団体が魅力的に見えるのでしょう。教団の狙いなどあまり考えないで付き合って、どうして付き合ったのかと、追及されるとあたふたする。(中略) 今の自民党の保守派は過激なことを言ってるようで、小心者が多そうですね。今回はよく分かりました」──「小心者が多そう」との指摘はそのものズバリだと思わざるを得ない◆もし、安倍晋三元首相が生きてたなら、「旧統一協会」問題にどう答えたか。「同教会とは反共思想を共有している。いわば同志である。かつての反社会的行為は行き過ぎであった。今はないと信じている。もしあるなら直ちにやめていただくよう申し上げる。関係を断つなどありえない」こう言うに違いないのではないか。それを今の自民党の皆さんは岸田首相以下、「関係を断つ」の一点張りなのは、解せない。そこは石破茂氏。さすがに違う。一切縁を切るのは簡単な話ではないとした上で、「縁を切るなら、その理由を明らかにする必要がある。法的な問題もあります。旧統一教会は宗教法人です。宗教法人とは公益性のある法人のことです」と述べる。公益性を持つと政権党としてお墨付きを与えておきながら、もう一方で、今後一切関わらないというのでは、論理的に成り立たないというのだ。これはまさにその通りで、今まで付き合ってきた理由と、これからその関係をなぜ断つのかについて明確な説明が必要である◆24日に、国会での予算委員会(集中審議)の後、山際大志郎経済再生相が旧統一教会と自身の関係を説明しきれないまま辞任した。記者会見で何が一番問題だったか?と問われ、「外部からの指摘で後追いになってしまった」ことを挙げていた。自分が同教会となぜ付き合ってきたか、今回どうして辞めるのかについて、正面切って触れなかった。要するに、辞めた理由は自分が何も説明出来ないから、これ以上大臣職についていると仲間内に迷惑かけるから、というのが強いて言えば理由であろうか。このこと自体、大臣の資格はないが、辞めて済むものではない。辞めると、国会答弁の矢面に立たずに済み、〝支持者へのお詫び行脚〟はあるにせよ、ご本人はこの上なく楽なのに違いない。だがことの本質は一歩も解明されない。こんな大臣を「任命した責任はある」と認めた岸田首相は、一体どういう料簡なのか。こうなることは一定の想像力があれば分かることだった。結局、この問題を舐めていたとしか言いようがない◆首相は、この期に及んでも、議員一人一人の説明に任せるとの意味のことを言うだけで、自民党としての責任は曖昧なままだ。被害者に対する救済と、政党として旧統一教会と関わってきたことのケジメをつけることは別問題である。石破氏が言うように、長く付き合ってきていながら、ここでなぜ関係を断つのかとの説明を、自民党総裁として行う責任が岸田首相にはある。僭越ながらあえて首相の代弁をすれば「我々自民党は、岸元首相から安倍元首相に至る保守派『清和会』の先導により、旧統一教会の反共思想に共鳴し、選挙支援もして頂けることから唯々諾々と従い付き合ってきた。だが指摘されるように、この教会は、反社会的行為はおろか日本の国益をも損ないかねない団体であることに気付いた。遅きに失するが、『過ちを改むるに憚ることなかれ』の故事に因み、今後は関係を断つことにした」ということなのだろう。仮にそう首相が言うとすれば、そんな政党にこの国をゆだねてきた有権者の立場は、一体どうなるのか?(2022-10-25)

 

 

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【70】中国と共にロシアの〝草刈り場〟になるアフリカ/10-17

    先日、NHK総合テレビ『クローズアップ現代』で「ロシアが友好国を拡大?」と題した、ロシアのアフリカ進出の実態を描く放映を観た。正直驚いた。それは、アフリカにおいて、ロシアに親近感を持つ国が意外に多いという事実である。この地域では中国の進出が激しいということはかねて知られてきた。習近平氏の登場(1912年)と共に、「一帯一路」構想が打ち出され、いにしえのシルクロードにちなみ、地続きのヨーロッパや海路でアフリカ方面にその手をのばし、経済協力路線を敷く。その一方、PKO(国連平和維持活動)活動にも熱心に取り組み軍事協力に勤しむことで、経済、軍事両面から関係強化を手がけていることは周知の事実だからだ。ところが、そのテレビ放映では、ロシアもこのところ急速に進出の度を加速化しているということを明らかにしていて注目された◆契機となったのは、2014年のロシアの「クリミア併合」。国連内において、反対する国々が多いことからロシアのプーチン政権は孤立化への危機感を抱いた。いらい、多数派工作をあの手この手で進め、2019年には全てのアフリカ諸国を集めたロシア・アフリカ経済フォーラムを開催するに至った。その甲斐あってか、この3月のウクライナ侵攻の際に、国連におけるロシア非難決議に賛成しなかった国がアフリカだけで、26ヵ国(反対1、棄権17、欠席8)にも及んだのである。もちろん、その理由は様々だろうが、テレビ放映で取り上げられていた国・マリは、イスラム過激派による国家危急の折に、かつての宗主国フランスが何もしてくれなかったのに、ロシアはあれこれと世話を焼いてくれたと伝えていた。ある弁護士がフランスへの不信感を述べる一方、ロシア支持の理由を表明、それをSNSなどで拡大する様子が紹介されていた◆ただし、その援助の実態を見る際に注意を要するのは、ロシアが「ワグネル」と呼ばれる「傭兵」集団を使っているとの疑念である。そのあたりをフランス軍高官の追跡調査で明らかにしたり、ある元傭兵を登場させ、証言を得ていた。そこでは、「ワグネル」が実質的にロシア政府の手で作られた準軍隊であること、高額の報酬を得られる戦闘プロ集団であり、強権的政府を持つ国々に調法がられていることなど興味深い事実が次々述べられていた。とりわけこの軍事集団によって数多い市民が巻き添えになって犠牲になっていながら、その責任の所在が不明だという衝撃的な事実にもふれられていた。また、マリと同様に「ワグネル」の関与が確実視されている近隣諸国が他に6ヵ国、軍事協力関係を持つ国が34ヵ国にも及ぶとのことにも。現在のウクライナ戦争にあっても、すでに一部では「傭兵」の活用も取り沙汰されている。プーチン政権が正規軍の補充に「予備役」を充てようとするものの、「兵役拒否」のために、国外に避難を目論む動きがそのことを裏付けているとも見られる。事実関係は判然としないが、あながち、事実無根とはいえないようである◆中国が両刀使いよろしく周到な準備を持って、アフリカ各国に浸透しているものの、この国独特の乱暴さが災いしているところも散見される。その間隙を縫って、ロシアが独自に進出をしているのかもしれない。アフリカと一口で言っても、その実態は低開発状態で極貧に喘ぐサブサハラ地域の各国から、都会と農村の格差はあれ、今や着々と生活向上を果たしゆく南アフリカ、ルワンダなどまで千差万別である。現実は、経済、軍事双方で面倒見のいい中露両国に身を委ねる国が着実に増えている。先のテレビでブルキナファソの外相が、インタビューに、どの国とも友好関係を持つと「建前」を口にする一方で、「この苦境から抜け出すためには、棘のある枝でも掴むしかない」と、手を差し延べてくれる国に頼らざるを得ないという「本音」を吐露していたのが印象深い。21世紀も中盤に向かって、アフリカが専制主義国家進出の〝草刈り場〟になろうとしている現実は厳しい。(2022-10-17)

 

 

 

 

 

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【69】やっとこさ「3ヶ月の夏休み」が終わった国会へ/10-9

 安倍晋三元首相が銃殺されて、8日で3ヶ月。やっと国会が召集された。参院選が終わって何故にかくも長く国会は休みだったのか。ずっと夏休みが続いていたのか。この間に何をしていたか、議員各位に報告を聞きたい、と文句も言いたくなる。そんな折に、毎日新聞8日付夕刊『熱血!与良政談』を読んだ。与良正男専門編集委員による面白いコラムだ。野党各党が、憲法53条に基づく臨時国会の召集について、国会法改正案を提出したと言うのだ。現在の規定はいつまでに開けとはなっていない。それを具体的に「20日以内に開くことにする」と、明記しようというもの。この動きの「ミソは立憲を敵視してきた維新が協力姿勢を示している点にある」と。与良さんは、かつて自民党も同じことを言っていた(2012年同党憲法改正草案)のだから、反対する理由は乏しい。改正案に賛成の側に回らねば、維新が菅義偉前首相らに手を延ばしかねないと忠告しているのだ◆これを読んで、私などは、そうならぬうちに公明党こそ、野党に同調すべきでないのかと思う。この辺りはもっと柔軟に世論に敏感にならねば、と。与党だから、なんでも自民党と歩調合わせねばならんということはないのではないか。そういえば、前日の参院での公明党の山口那津男代表質問を聞いた古い友人が電話で直ぐに、疑問を投げかけてきた。山口氏が、質問の最後に、「自民党をしっかり支えていく」との文言をわざわざ付け加えていたが、なんだか違和感を感じたというのだ◆旧統一協会問題について、これだけ今話題になっているのに、公明党の代表がそれに一切触れなかったことと関係あるのかと勘ぐりたくなる、とも。社会的に問題のある宗教団体と政治家との関わりについて、基本的な岸田首相の姿勢に釘を刺すぐらいはあって欲しい、と。私は、衆議院で石井啓一幹事長が最後に取り上げていたではないかと抗弁すると、「いや、代表と幹事長は違う。ここは参院でも重ねて糺すべきだった。それに、衆議院では細田博之議長のダンマリ姿勢が非難されている。石井さんは、その人物の真前で質問したのだから、立憲民主の代表のように厳しくなくても、皮肉の一つぐらい口にして欲しかった」と。そう指摘されて、いいものはいい、悪いものは悪いという姿勢が今の公明党に欠けていると思わざるを得なかった◆ところで、石井氏が「2040問題」を取り上げたことは光っていた。2025年から2040年の間に1200万人もの働き手が減り、社会保障費が膨大になっていく。これをどうするか。公明党は先の党大会でベーシックサービスの導入を絡めて、明年度中に対応策を打ち出すことを決めた。これは極めて大事な問題意識である。ただ、こういう基本的な重要課題は、自公両党でプロジェクトチームを組むなどして、立ち向かうべきだろう。それぞれが検討し、定期的に課題を持ち寄って議論を詰めていく。そういう協力姿勢も国家的課題には必要だ。今後注目して見ていきたい。(2022-10-9)

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【68】ゴルバチョフ元大統領の「警告」に耳を傾ける/10-4

 さる8月30日に91歳で亡くなったゴルバチョフ元ソ連大統領。その彼が2014年にNHK の単独インタビューを受けていました。それをまとめたETV特集『ゴルバチョフの警告──冷戦終結とウクライナ危機』は、極めて重要な内容を含む見応えあるものでした。これは、2015年3月14日に放映された『冷戦終結 首脳たちの交渉〜ゴルバチョフが語る舞台裏』をベースに、インタビューに当たった記者の解説を加えて再構成したものでした。再放送を見た私は、ゴルバチョフの深い人間性、そしてそれに呼応した西側指導者たちとの交渉の妙味──現実は騙し合いの感あるものの──に圧倒される思いでした。見ておられない方に強くお勧めします◆「ウクライナはマッチ一本で大火事になる危険性をはらんでいます。問題が起きた瞬間に止めなければ、誰にも止められなくなってしまう」──あのロシアのクリミア併合(2014年3月)の時に、既にそう「警告」していました。その危機に陥ることを防ぐには、かつて自分が成し遂げた冷戦終結に向けての努力に倣って、首脳相互間の話合いしかないというものでした。ゴルバチョフとドイツのコール、米国のレーガン、父ブッシュらとの真剣な中にも人間性溢れる交流には強い関心を抱きました。ですが、同時に、その行動の結果を苦々しく思い、必ずこの事態を覆さねばとの強い思いを抱いた人物もいたのです。いうまでもなくプーチン現ロシア大統領です◆私たちは、あの東西ドイツの壁が壊されるのを、「ソ連の崩壊」「共産主義の敗北」の象徴と見てしまいました。「西側、資本主義の勝利」と短絡的に捉えた傾向が強かったのです。だが、プーチンからすれば屈辱以外のなにものでもない出来事でした。冷戦終結にあたって、NATOの東側への進出を禁じる約束をしたかどうか。ゴルバチョフと違って、西側は否定しています。その後の歴史は、明らかに西が東へ拡大する一方です。これに怒りに満ちた思いを持ったのがプーチンです。これにはゴルバチョフも米欧を批判しています。2014年と2022年のロシアによるウクライナ侵略は非難に値するものの、その背景には目を向ける必要があると思わざるを得ないのです◆ゴルバチョフという指導者は冷戦後のこの30年。自分がしたことは正しかったと思い続けていたと思いますが、この間ずっとウクライナを中心に、母国の行末が危うい状況にあることを懸念もしたはずです。元を正せば、彼の「改革」に対して国内的反発が強かったのです。今日の事態は当然予測できました。冷戦崩壊で、全て丸く収まり、西側の思いのままに展開すると見た者が浅はかだったということでしょう。ゴルバチョフはウクライナの惨状を目の当たりにして、恐らく深い悲しみを持って死に至ったと思います。この人の登場は世界史で特筆すべきものと私は思ってきました。しかし、プーチンの怨念の爆発で、ゴルバチョフの作り出した、一見〝素晴らしき新世界〟が、〝忌まわしき旧世界〟に逆戻りするのか。それとも、プーチンのあだ花に終わるのか。これはロシアと西側双方にゴルバチョフの警告を真正に受けとめる新たな指導者の台頭を待つしかないと思われます。(2022-10-4)

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【67】ノーベル賞受賞科学者と小中高生たちとの率直な対話から/9-26

大隅良典さん(77)と初めてお会いました。6年前にオートファジーの研究で、ノーベル生理学・医学賞を受賞した科学者です。オートファジーとは、細胞自身が持つ、細胞内にある不要な物質を分解する役割のこと。人間存在は膨大な細胞から成り立っており、新旧の細胞が一定の時間を経て、全て入れ替わる仕組みを持っていることが知られています。そのメカニズムを解明してみせたのがこの人だと、私は理解しています。大隅さんは、受賞後「大隅基礎科学創成財団」を設立し、基礎科学の振興に尽力する一方、小中高生たちとの対話、懇談を通じ、科学者の育成に全力をあげています。昨25日には、兵庫県姫路市のコンベンション施設・アクリエで開催。私はそこに大勢の未来の科学者のたまごたちに混じって参加してきました▲『未来の科学者たちへ』はこの人と細胞生物学者で歌人の永田和宏さんとの対話本ですが、私は友人(大谷清・同財団常務理事)の勧めで読み、既にこの読書録に紹介しています(No14/2022-1-3)。この本は、「科学者の卵」を揺籃させる働きは勿論のこと、私のような政治家にも科学することへの刺激を与えてくれました。そして、政治の基本である議論の大事さを覚醒させる大事な役割も持っています。そんな風に読んだ私に、ぜひこの機会を逃さず、見て聞きに来るようにと誘ってくれたのが前述の大谷氏です。大隅さんのお話ぶりは、先日のNHKの解説番組で聞いた通り、優しく静かな語り口調で、心の襞に食い入るものでした▲短いお話の後は質疑応答。「ノーベル賞を取るにはどうしたらいいですか?」「難しい壁にぶつかった時に、どんな強い気持ちを保ってこられましたか?」などといった質問に、大隅さんは丁寧に答えていました。「苦手だからやらないとか、役に立つかどうかの観点だけではいけないよ」「私の進んできた道は失敗ばかり。失敗を恐れてはいけない。何をそこから学ぶかが大事」などと大人たちにもグッと迫ってくる回答でした。尤も「ミケランジェロとダビンチとどっちが好きですか?」との女の子の質問には、タジタジとなる(と思えた)場面も。どちらにもいい側面があり、どっちとも言えない、というような言いぶりをモグモグと。ここはズバッと答えたら、と勝手な思いが胸に去来したことは否めず、大隅さんのお人柄が一番出たところかもしれません。面白かった▲最後に高校生と思しき男子が、英国のエリザベス女王と安倍晋三元首相の死を取り上げた質問には、「おっと」と色めきたつ思いが。同じように、元首に国王、天皇を抱き、議会制民主主義の元にある両国で、英国に比べて日本の「国葬」が大変に遅れたのはなぜでしょうか、と訊いてきたのです。賛成の立場からの質問であったからでしょう、大隅さんは「私は個人的には反対です」ときっぱり。議会での議論がもっと必要。手続きに問題があるやり方には反対ですと明快に述べていました。質疑終了後に、直接の対話を求める長い列ができました。その間、私は大谷氏や、姫路商工会議所の斎木俊治郎会頭と雑談していましたが、姫路の淳心学院同窓の2人は参加者が満席だったことにホッとしたようで、「姫路も捨てたものではないね」などと妙な満足感を率直に吐露していました。30分ほど待って、初対面の立ち話。一学年上の同い年。語りたいことは色々ありましたが、未だ実験会場に向かわれる大隅さんには邪魔になります。挨拶の終わりに「安倍国葬には、公明党としては賛成ですが、私も先生と同様に反対です」と伝えて、別れました。(2022-9-26)

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【66】日本の「PKO 30年」とカンボジア、中国との関係について/9-22

 日本がPKO(国連平和維持活動)に参加して、カンボジアに自衛隊を送ってから、この9月で30年になりました。これは日本にとって「国際社会の中での国家の生き方」をめぐるとても大きな出来事でした。というのも日本は湾岸戦争(1990年)にお金を拠出するだけで、多国籍軍への自衛隊派遣などの人的貢献はしないのかとの批判が国際社会で根強く渦巻いてきたからです。これを機縁に公明党は野党でしたが、自民党を巻き込みPKO5原則を作り、平和憲法の枠内で自衛隊を紛争後の処理に出すことに尽力したのです。法案審議の動きに、当時の野党第一党だった社会党は牛歩戦術で徹底的に抵抗し、メディアも朝日新聞を中心に大反対の論陣をはったことが知られています▲しかしPKOは本来、戦闘への参加ではなく、紛争が終わった状況の中で、平和裡に復興に貢献することを目的とするものです。この活動参画はカンボジアから大層喜ばれ、国際社会でも大好評でした。以来、モザンビーク、東ティモール、ハイチ、南スーダンなどへ、延べ約12000人の自衛隊員がPKOに参加してきたのです。この間、各国のそれに比べて極めて制約の多い中での日本の活動(武器使用など)が、かえって自衛隊員を苦しめることになるなど様々な問題が惹起されてきました。6年前の安保法制の制定に合わせて、やっと「駆けつけ警護」が可能になり、世界標準に近づくようになったのです。これで自衛隊員と離れた場所にいる、国連や NGO関係者が武装勢力に襲われた時に駆けつけて守ることが出来るのです。長い間解決が求められてきました。それが遂に実現したのです。しかし、皮肉なことに、この間、日本の5原則に適合するようなPKOが殆どなく、日本の参加はゼロに近い状態(今は南スーダン司令部要員の4人だけ)が続いています▲他方、中国は21世紀に入ってから着々とPKOに参加する方向性を強め、大きな成果を挙げてきています。いわゆる「一帯一路」戦略は、PKO対応と裏表の関係で、特にアフリカ進出は目覚ましいものがあります。この30年間、日本もPKO協力をしてきたものの、中国に比べて人的規模においても、経済的貢献においてもその差は歴然としています。カンボジアはこれまで9カ国に9000人ほどのPKO 派遣をするようになり、地雷除去に当たるなど、日本の貢献が実を結んだことが明らかです。日本もその成功体験に長く浸ってきていますが、同国は日本ではなく、中国一辺倒の姿勢を強める一方です。中国の国家戦略とカンボジアのフンセン首相の支配構造のマッチングが功を奏し、カンボジアはいわゆる「チャイナ・アセアン」の優等生となっているのです▲国連は今、常任理事国・ロシアのウクライナ侵略という事態になすすべ実らず、瀕死に近い状態に喘いでいます。この時にあたり国連改革をどう進めるかとの問題に焦点が当たりがちで、ロシアの拒否権行使とそれに同調する中国の存在といった側面にのみ目が向いています。しかし、伝統的に国連の活動に非協力的だった米露のニ大国に比べて、中国はせっせとPKOのような基本的活動に取り組み、得点を稼いできたことは見逃せない事実といえましょう。日本は、その辺りを見ずに、自国の過去の成功体験や、中国の身勝手な勢力拡大といった既成イメージだけに捉われてばかりいると、足元を救われると思います。この点は、憲法をめぐる独自の制約をも含めた日本の国家ビジョンとも、深く関わってきます。これらを踏まえてどのように立ち向かうか、30年の節目を境に取り組むべき課題といえましょう。(2022-9-23 一部修正)

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【65】食料品マーケットの店長たちに講演ー吹田市商工会議所で/9-15

 「売上増は自身の人間力アップから」──食料品のマーケットの店長さんたちに、売るのは自分自身だとの思いを込めて、お話しをしました。14日のお昼過ぎ、大阪府下吹田市の商工会議所でのことです。フードネットリテール(FNR)という地域密着型の企業の要請を受けて。日頃いかに肉や野菜などの食料品の売り上げを増やすかに取り組んでる人たちに『仕事と人生』のタイトルで、約一時間話しました。果たして役に立ったかどうか★ほぼ30歳台半ばの男性ばかり20人ほどが対象(女性は管理職の松岡優子さんと経理の新人の2人だけ)。私はAKR(オール小売市場連合)という一般社団法人の顧問をしていますが、この企業とはその繋がりです。私の話は、新聞記者、国会議員秘書、政治家という三つの職業、仕事についた自身の経験から始まり、エピソードを交えつつ、人間力を高めることが大事だとの話に終始しました★昔の食料品の小売店と違って、客との接触は店長の場合、殆どないのかも知れません。が、それでも店長がいかに自身の人間性を磨き、豊かな教養と個性に磨きをかけるかがカギを握ると思っています。その関心から、自分自身の日常において、どのようにして力をつける努力をしてきたか、いまもやり続けているか、を実例として細かに話しました。朝起きてから寝るまでの間に、決めた目標(睡眠時間、散歩時間、笑いと感動の回数など)を達成させたかどうか。出来たら白星、出来なかったら黒星と、8勝7敗の勝ち越しを目指そう、と★同席された酒井修司社長が終了後の挨拶で、私がインプットとアウトプットの大事さを強調されていたと述べた上で、パワーをいただくことができたと喜んでくれたのには、ホッとしました。社長らとの事前の懇談では政界裏話めいたことを話したため、もっとふんだんにその手の話を期待されたのでしょうが、ちょっと足らなかったかも。あれもこれもと、てんこ盛りのお話しで、消化不良になってはいけないと中身を絞ったつもりです。「仕事は楽しめ」との言葉が印象に残ったと、ある店長が口にしてくれたのには、我が意を得たりの思いになりました。実は、この機会を得たのは前述の松岡さんの並々ならぬ熱意のおかげです。さて、これからどう実を結んでいくか、楽しみです。(2022-9-15)

 

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【64】「民主主義を守り抜く」ための『国葬』に疑問──衆参議運委での質疑から/9-10

 安倍晋三元首相の狙撃死から2ヶ月。岸田首相が同元首相の「国葬」を閣議決定で決めて以来、日を追って反対の声が高まっている。さる8日に衆参議院運営委員会で開かれた同首相に対する質疑をテレビ中継で見て、やはり釈然としなかった。岸田首相が「国葬」を実施する理由について「安倍元首相を追悼するとともに、わが国は暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」と述べたことに引っ掛かるのだ◆「暴力に屈しない」ことと「民主主義を断固として守り抜く」ことはイコールであり、当然のことである。しかし、今回の事件では、厳密に言うと、安倍氏の言論、民主主義的行為を封じ込めるために、狙撃犯は暴力を行使したのではない。安倍氏と旧統一教会との親密な関係に恨みをぶつけたものと言えることは、報道で知る通りである。となると、岸田首相の言い方はすり替えめいて聞こえる。「〝反暴力〟を断じて守り抜く」と言うならわかる。「民主主義を守り抜く」といわれてもこの場合はふさわしくないと、聞こえたのは私だけだろうか◆民主主義を守ることと同義だからいいではないか、とはならない。まして、安倍元首相は、残念ながら国会で虚偽答弁を繰り返したことで知られる。いかに外交で得点を挙げ、現に諸外国のリーダーから追悼の意が寄せられようとも、次元を異にする。いわゆる「もり、かけ、さくら」の問題で多くの国民から批判の眼差しを向けられてきた人に「国葬」はふさわしくない。「国葬」なら、民主主義の基本に照らし、いささかの疑問をも持たれない人物でないとならないのではないか◆自民党の中から続々と旧統一教会との親密な関係にあった議員があらわになってきている。それこそ生前の安倍氏から弁明が聞きたかった。そんな状況のもとで、強引に「国葬」を推し進めるのは民主主義的ではない。衆議院議運委の質疑で山口議運委員長がしばしば立憲民主党の代表の質問を事前の申し合わせにそぐわないからと、制止していたのはいかにも異様に見えた。ルールだからと言われても、その関係を明らかにせずして何のための対首相質疑かと誰しも訝しく思ったはずである。今からでは遅いかもしれぬが、「国葬」は止めて、「自民党と国民有志葬」とにでもすべきである。と書いた直後に、岸田首相から元議員の私への『国葬招待状』が届いた。(2022-9-10)

 

 

 

 

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【63】今が盛りの神戸と姫路の2人の理系出身小説家/9-5

 先日、2人の団塊世代の小説家と会食懇談した。姫路在住の兵庫県民間病院協会元会長の医師・石川誠先生の呼びかけだ。この人はなにしおう文学好き。私はお相伴役。今回の様子は私の写真録ブログ『今ここだけ』にちょっとだけ書いた。ここでは読書録風ではなく、作家の人となりを中心に。一人は、高嶋哲夫氏。彼は慶應大工学部を出て原子力研究のために米国へ。3年ほどいたが挫折する。帰国後に取り組んだ学習塾経営が当たり、40歳過ぎて小説家に転身。70歳を過ぎた今日まで数多の小説を書き、各種の賞をとりまくり、今も意欲作を次々と出している。直近には『落葉』なるいわくありげな題名の作品も書店に並ぶはず。代表作は10年前に、今日のコロナ禍を予言したかと見紛う『首都感染』だが、ご本人はあれは鳥インフルエンザを書いたのだと照れ臭そう。とても謙虚な人だ◆最近作の『EV』では近未来の電気自動車社会に至る流れを鮮やかに照らし出す。この人の作品は、核兵器、原発、首都移転、地震など概ね政治絡みのものが多く、現実政治のいたらなさを暴きだしてやまない。政治家に読んで欲しいなあと、言われるたびにいたたまれなく恥ずかしい思いになる。親しくなって2年ほど。私は大学の先輩ぶって、「高嶋さんの小説は女性が描けていない」とか、「最近パターン化していないか」などと偉そうなことを、口にしてしまう。身の程知らずにも程があるが、彼は巧みに受け流す。その都度、人間的スケールの彼我の差に感じ入る。彼の夢は、自著のハリウッド映画化だそうだが、近い将来にきっと実現するのではないかと私は睨む◆もう一人は、諸井学氏。小説家と家業の電気屋との2足のワラジとのことだが、ヨーロッパモダニズム文学と日本の古典文学の二刀流の使い手と、私は見る。ペンネームの由来がアイルランドのノーベル賞作家サミュエル・ベケットの『モロイ』に魂を奪われたことから、Molloy (諸井)に学ぶとしたという。ポストモダンの先端を行くというこの本、試しに読んだのだが、始めから終わりまでわけわからず、困り果てた。一体全体、どう理解すれば、と恥を忍んで訊いてみた。答えは、「解釈するのでなく、体験するのです」と、きた。ご本人は禅の悟りのようなものと言われるが、これって、我が日蓮仏法を人に勧める際にお馴染みのセリフである◆一方、日本古典の粋・和歌文学をめぐっての彼の歌論『夢の浮橋』(未完)及び「新古今和歌集」のオマージュだとする『神南備山のほととぎす』は、とってもためになり、かつめちゃくちゃ面白い。800年ほど前の和歌文学の本歌取りや掛詞などの作法の数々。これがモダニズム文学の先駆けをなすと聞いて、感動しない日本人がいようか。私は諸井氏の主張は、丸谷才一『後鳥羽院』の〝本説取り〟ではないのかと疑ってみた。だが、ご本人から丸谷説の瑕疵を指摘され、自らも確認して目が覚めた。いらい、彼は直木賞作家たり得るとばかりに本気で励ましている。高嶋と諸井の両氏。この二人は共に理系(諸井は名古屋工大卒)。頭の緻密さが私とは決定的に違う。片や早咲き、一方は遅咲き。どっちも73歳の今、咲き誇る。その姿が私にはとても眩しい。(2022-9-5)

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