【24】文明の滅びは今もなおー『新・人間革命』第6巻「遠路」の章から考える/8-19

★哲人政治と衆愚政治のはざまで

一行は、イラン・テヘランからイラク・バグダッド、トルコ・イスタンブールを経て、ギリシャのアテネに到着(2月4日)します。パルテノン神殿などを訪れ、アゴラの遺跡を歩きながら、語り合います。このうち、ソクラテスとプラトンの師弟関係、とくに「哲人政治」についての言及に私は注目します。(92頁~119頁)

「プラトンはアテネの民主主義の功罪を底の底まで見つめていた。人間の魂が正しく健康でなければ、いかなる制度も正しく機能しない。(中略)つまり、「魂の健康」を育む哲学こそが、民主制を支える柱なのである」(116頁)

   このくだりを読んで、日蓮仏法を信奉する人間たちによって構成される公明党こそ「哲人政治」の担い手であるとの思いを持った、私自身の若き日を思い起こしました。その思いは20年間の衆議院議員としての現役時代を経て、勇退後8年の今も変わりません。ただ現実に展開されている日本の政治が民主主義が正しく機能した結果か、と問いかける時に、いささか心許ない思いになります。昨今、〝衆愚政治〟批判が語られますが、それよりもむしろ、リーダーの欠如や政治家の資質そのものが問題だ、と思わざるを得ません。

 伸一が、衆愚政治などへの非難について「民衆の健全なる魂の開花がなければ、真実の民主はありえない。結局、民衆を賢く、聡明にし、哲人王にしていくことが、民主主義の画竜点睛であり、それを行っているのが創価学会なんだよ」との確信のこもった言葉を読んで妙にホッとします。その気分は政治家の責任回避なのかもしれないと自省しますが。

★高度に発達した文明が滅ぶ共通の原因

2月6日には、エジプト・カイロに到着、アフリカの大地に、山本伸一が初めて立ちます。8日にはエジプト博物館に足を運び、カイロ大学で経済学の講師をしているというドイツ人の青年学者と語り合いました。彼から、高度に発達した文明を持った国々が滅び去った共通の原因は何かと訊かれます。その際の伸一の答えが印象に深く残ります。

伸一は、国内の経済的な衰退や内乱、他国による侵略、あるいは疫病の蔓延、自然災害など、その時々の複合的な要素の存在を指摘した上で、「本質的な要因は、専制国家であれ、民主国家であれ、指導者をはじめ、その国の人びとの魂の腐敗、精神の退廃にあったのではないでしょうか」と述べたのです。(129頁)

文明の興廃を語る時、我々はややもすると、遠い過去の出来事として捉え、今我々が身を置いている文明のことではない、と思いがちです。しかし、そうではなく、例えばいまの日本文明の行く末においても、容易に滅びの時を迎えかねないと、思わざるをえません。今の日本は、相次ぐ自然大災害に加えて、疫病の蔓延に襲われ、指導者の腐敗が日常的に人の口の端にのぼっているからです。それを防ぐ最後の砦は、民衆の健全な魂の存在ではないか、と身の引き締まる思いになります。(2021-8-19)

 

 

 

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