【60】「公害」との闘いの原点ー小説『新・人間革命』第15巻「蘇生」の章から考える/3-13

●公害問題への告発と言論戦

 人間文化創造への本格的な取り組みー1970年(昭和45年)5月3日の本部総会以降、創価学会は現代社会の歪みを是正する試みに動きます。その一つが公害問題への告発でした。伸一は総会でこの問題に言及したあと、8月に夏季講習会でその問題の本質に迫る一方、2つの原稿で言論戦を展開しました。総合月刊誌での『日本は〝公害実験国〟か!』と、「東洋学術研究」(東洋哲学研究所)での『人間と環境の哲学』です。

   前者で伸一は、「これから、真の公害として対処しなければならないのは、広範な地球的規模での、空気、水、土地の破壊、汚染である」と訴え、公害の要因として「進歩への信仰であり、環境支配のあくなき欲望である」と結論づけました。そして、公害を克服するために、「誤った〝人間生命の尊厳観〟こそ、無制限な自然の破壊と汚染を生んだ元凶に他ならない」としたのです。(25頁)

 後者で彼は、「公害問題の淵源は、自然はいかに破壊されても調和を保っていくという楽観論と、人間こそ宇宙のいっさいに君臨すべく資格を与えられた万物の霊長であるとする考え方にあると断じた」(30頁)

 公害問題はこの当時から50年を経て、収まったかに見えます。しかし、その原因が企業の犯罪から、国家及びグローバルな問題へと、拡大変化しただけかもしれません。地球が今や滅亡への道を歩んでいるかも、との危機感の共有が求められています。また、正しい人間生命の尊厳観こそ東洋思想の仏教にあり、人間と自然を対立的に捉える西洋思想が孕む問題点が一段と鮮明になったということではないかと思われます。

 ウクライナへのロシアの侵略という悲惨な現実を前に、人類の進歩という見方がいかに楽観的に過ぎるかということを痛感します。ひとたびは資本主義との戦いに敗れた共産主義が専制主義国家に衣替えして蘇ろうとしています。その悪夢に、戦慄を覚えるのみです。いま、隣国中国がどう出るかが注目されています。同じような出自を持つ国家同士の連帯で、西欧の民主主義と戦うのか。それとも儒教と無縁でない専制主義国家として西欧国家群との連帯の道を選択するのか。世界が固唾を呑んで見守っています。日蓮仏法を持する創価学会SGIの世界平和への祈りと、国家を超えた連帯の総和の発揮が待望されます。

●イタイイタイ病に見る公明党の戦い

 この章では、具体的な公害としてイタイイタイ病と水俣病が取り上げられています。前者は富山県神通川流域、後者は熊本県南部の水俣が舞台です。それぞれ大手金属会社鉱業所が流すカドミウム、化学会社の工場排水に含まれるメチル水銀化合物が原因でした。

 イタイイタイ病は1961年(昭和36年)6月に、地元の萩野昇医師の整形外科学会総会の場での原因発表が発端でした。以後、被害患者の激痛を伴う死をよそに、徒に時が過ぎました。5年半ほどが経って、1967年(昭和42年)に、この問題の研究を続けていた岡山大の小林純教授から公明党本部に連絡があり、一気に事態は動くことになります。公明党の大矢良彦参議院議員が参議院「公害特別委員会」でこの問題を取り上げました。小林や萩野と連携を取り、患者の皆さんが実情を聞き綿密な実態調査をした上での質問でした。ここから厚生省・政府も重い腰を上げ、事態は解決に向かい、一年後の1968年5月に公害認定がなされたのです。

 【国民の生命を守ろうとする政治家の一念が、遂に政府を動かしたのだ。最も苦しんでいる人に、救済の手を伸ばすことこそ、政治の原点である。公明党結党の意義もそこにある】(13頁)

   このイタイイタイ病が政府の公害認定の突破口となり、同年9月の水俣病へと続きます。私が公明新聞に入社する前年の出来事ですが、これこそ先輩たちの新聞記者としての闘いの原点となりました。その後の一連の公明党の公害追及の動き、その報道へと受け継がれていくのです。

 今コロナ禍で、多くの貴重な生命が奪われていますが、ここでの公明党の戦いもまさに目を見張るものがあります。朝日新聞サイト版『論座』で現在連載中の『政党としての公明党』では、筆者の岡野裕元氏(「行政管理研究センター」研究員)が、自民党との連立で公明党は質的役割を果たしたと述べ、とくにコロナ禍での対応を高く評価しています。公明党を取り上げるメデイア、学者がいないと私は嘆いてきましたが、見ている人はきちっと見てくれているのだなあと、改めて感心し、勇気づけられた思いです。

 一方、水俣病については、この病になった学会員がいかに闘って、地域の希望の星になっていったかが具体的な体験談として語られていきます。(34-53頁)

【人生に希望と使命を見出して、悲しみの淵から、敢然と立ち上がり、蘇生していった】感動の物語が綴られていき、読むものの胸を打たずにおきません。(2022-3-13)

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