【90】生涯が学習、生涯が勉強──小説『新・人間革命』第23巻「学光」の章から考える/10-12

●日々の粘り強い研鑽のなかにのみ

  「皆さん方は、〝創価教育体現の第一期生〟である」──1976年(昭和51年)5月16日、創価大学に集った通信教育部生を前に伸一は訴えました。この日、開学式に集った通教生はどんなに嬉しかったことでしょう。そのスピーチで、伸一は、牧口常三郎初代会長が提唱した「半日学校制度」に言及して、「生涯が学習である、生涯が勉強である。それが人間らしく生きるということ」だと強調しました。(108頁)

   伸一は、かつて戸田城聖二代会長の事業が窮地に陥り、それを支えるために自身の学問への道を断念せざるを得なかったこと。その代わり、戸田が直接様々な学問を直接講義してくれたことを、その場で語りました。「それは文字通り、人生の師と弟子の間に〝信〟を〝通〟わせた教育でありました」と。【伸一は、創価大学の通信教育の「通信」という意味も、郵便による伝達ということではなく、師と弟子が、互いに〝信〟を〝通〟わせ合う教育ととらえていたのである】(109頁)

   ここで展開されている「生涯教育論」は極めて大事なことです。義務教育の9年から高々プラス6年ぐらい学校に通って、それ以降は学ぶことから遠ざかってしまう人たちがもっぱらです。それではいけない。「学識を深める道は、日々の粘り強い研鑽のなかにのみあることを銘記していただきたい」と述べられいることは、誰にとっても重要な問題だと思われます。

 私は、若い時から出来るだけ本を読むこと、様々な媒体からその道の専門家の論述を吸収することを心がけてきました。それは、学生時代にあまり学問をしなかったことの反動かもしれません。年を取るにつれ、そのことを反省して、学び、吸収するインプットに力を入れるようにしてきました。一方、出来る限り、世に自身の考えを問いかけるアウトプットにも同じように努力を傾けてきています。

●何があっても負けない精神の核

   この章では、通教生のスクーリングでの伸一との出会い、学光祭、卒業式などでの語らい(105-145頁)などと共に、9人ほどのメンバーの体験談が紹介されていきます。それぞれ胸打つ感動的な内容です。(145-186頁)

   いずれも凄い体験ばかりですが、その通教生たちの熱い思いが、開設いらい毎年開かれてきた学光祭に集約されていきました。そのうち第5回学光祭に伸一は初めて出席したのです。そこで発表された愛唱歌「学は光」の三番がとりわけ胸をうちます。

 🎶重きまぶたを こすりつつ  綴りし文字に 夢馳せて 夜空の星の またたきは 微笑む 我が師の

瞳にも似て いざや王者の 道なれば 〝学は光〟と今もなお‥‥‥

【伸一には、通教生たちの苦闘が痛いほどわかった。彼自身、青春時代に、大世学院の夜学に通い、苦学してきたからだ。また、会長として、同志の激励に全国を東奔西走するなか、寸暇を惜しんで、リポートの作成に取り組んだこともあったからだ】

 そして、「皆さんは、他人との比較においてではなく、自分自身に根を張った人間の王道を、自分で見いだして、自分でつくり、自分で仕上げていっていただきたい。名誉や、有名であるといったことなどに、とらわれるのではなく、障害、勉学を深めながら、自分らしい、無名の王者の道を生きてください」と訴えました。(185-186頁)

   「悪名は無名に勝る」という諺が一番幅をきかせているのが政治の世界です。名前が知られていないということを最も恐れるがゆえに、悪名をとどろかす方がましだというわけです。かつて、「国会は魔の巣窟」ともいわれていました。普通の常識が通らない世界だということでしょう。そんな世界にいる人間は普段から、自身を磨き上げ、魔に負けない強い自己を築くことしかないと思いますが。

●「通教は創価大学の生命線」

  1999年(平成11年)7月に創価大学本部棟の落成式が行われました。その建物には、優先的に通信教育部の教員の研究室と事務室が入り、そこで行われる最初の授業は通教生の夏期スクーリングにすることを伸一は提案しました。これは、通教は、創価大学の生命線であるとの考えからでした。(194-195頁)

   その本部棟の前に立つ「学光の塔」。その塔には、伸一が、創価大学に学ぶ一人ひとりへの期待を込めて綴った一文が刻まれているのです。

 「『学は光、無学は闇。知は力、無知は悲劇』これ、創価教育の父・牧口常三郎先生の精神なり。この『学光』を以て永遠に世界を照らしゆくことが、我が創価の誉ある使命である」

 世界は今混沌としています。かつて差配した超大国は見る影もなく、片や国内分断に悩み、片や世界分断の元凶と成り下がっています。それに代わる勢力は未だ真実の姿を表していません。「創価の誉ある使命」の重大さを痛感するのです。(2022-10-12)

 

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