【53】北の天地と広布の黄金城ー小説『新・人間革命』第13巻「北斗」の章から考える/2-1

●貧しい環境にも断じて負けない心意気

 日本最北の街ー北海道稚内市に向かうため、伸一は1968年(昭和43年)9月13日に東京から旭川に飛びます。当時は直行便がなく、この地に一泊し、翌日稚内まで、列車で行く予定でした。しかし、旭川で伸一を待ち焦がれる同志を激励するべく、急遽、宿舎での仕事の時間を割くことにしました。(107-134頁)

 4回目の訪問になるこの時の突発的会合で、伸一は「広宣流布の宗教」について諄々と語っていきました。会合終了時に学会歌の指揮をとる、この地域の初代地区部長だった中山一郎のことに記述が及びます。狭い間取りの家に、5人の子どもたちがいて、そこに「昼となく夜となく、何十人も人が出入りしていることを思うと、子どもたちが不憫でならなかった。伸一は申し訳なさに胸が痛んだ」とあります。

 「我が家を活動の拠点に提供し、広宣流布に貢献してきた功徳は、無量であり、無辺である。それは、大福運、大福徳となって、子々孫々まで照らしゆくにちがいない」(119頁)との記述の後に、「いつも本当にありがとうございます」と万感の思いで感謝を語る伸一に中山一郎は次のように応えます。「私は創価学会に尽くせることが、嬉しくて嬉しくて仕方ないんです。人生で学会と出あえたこと自体、最高の福運であり、功徳です。それが私には、よーくわかります」と。

 草創期には日本中至るところで、この中山の家のようなケースが珍しくなかったのです。昭和40年に入会した私のタテ線の地区拠点も殆ど同じでした。また私の妻の実家も有名な小岩支部の地区拠点で、ブロックでは、中野北西部の代表的拠点会場でした。それこそ多い時は100人を超える人が集まったり、男女青年部が入れ替わり立ち替わり「食」を求めてくることもあったようです。梁山泊のような雰囲気から、次の時代を築く人材が輩出されるに違いないと、みんな固く信じていたのです。

●広宣流布の希望の星たれとの期待を胸に

 翌日午後、5時間かけて列車で稚内へと伸一は向かいます。到着間際の車窓には、「燃えるような夕焼けに包まれてそびえる利尻富士の勇姿が見えた」「幾筋もの黄金の光が走る紅の空に、利尻富士が紫のシルエットを、くっきりと浮かび上がらせていた」ーとの一幅の名画を思わせる風景描写です。北の天地を幸福の花薫る広布の黄金城にするぞ、との伸一の決意を祝福するかのように。

 「先生ようこそ北の果てまで」との垂れ幕のもと、礼文、利尻島からの180人を始め多数の同志が集った会場の体育館には熱気が溢れていました。利尻島から参加した堀山長治夫妻の経済苦と病苦の中での壮絶な戦いの歴史が述べられていきます。「同志のために、島のためにーそれが、堀山夫妻の生き甲斐であり、活動の原動力であった」と、11年間の命懸けの苦闘により出来上がった地域広布の磐石の基盤が讃えられていくのです。

 伸一は講演で、関西の大発展の要因が、同志の一念の転換にあったことについて述べたうえで、「この最北端の稚内が、広宣流布の模範の地になれば、全国各地の同志が『私たちにもできないわけがない』と勇気を持ちます。みんなが自信をもちます」「北海道は日本列島の王冠のような形をしていますが、稚内はその北海道の王冠です。皆さんこそ、日本全国の広布の突破口を開く王者です」と、激励の言葉を重ねました。

 【会場を出ると満天の星であった。北西の空に、北斗七星が、清らかな光を投げかけていた。(中略)  北海道は、この北斗七星のように、広宣流布の永遠なる希望の星であらねばならぬ‥‥】ーこの壮大な伸一の期待に応えて北海道の同志は、敢然とあらゆる戦いに勝利してきました。例えば、衆院選の北海道10区での戦いに、稲津久議員が2012年から挑み、勝ち続けています。この背景には文字通り全道の「希望の星」としての輝きの役割があると、思います。実は彼が高校生だった今から45年ほど前、全国副高等部長として、私は北海道を担当、月一回の御書講義に半年間駆けつけました。その時の高校生の中から彼を始め〝幾つもの星〟が誕生。これこそ未来部担当幹部の冥利に尽きるのです。

●広布の堅固な礎としての座談会

 9月25日の本部幹部会で、改めて全学会挙げて座談会の推進に取り組むことが発表になりました。ここでは、座談会の重要性が種々語られています。(161-198頁)

   フランス歴史家ミシュレの「生命は自らとは異なった生命とまじりあえば、まじりあうほど他の存在との連帯を増し、力と幸福と豊かさを加えて生きるようになる」との言葉を引いた後で、【学会の座談会は、まさに、人間の勇気と希望と歓喜と、そして向上の意欲を引き出す〝人間触発の海〟である】と書かれています。私もこれまで、その深い大きな海に育てていただき、今日を迎えたことに深い感謝を抱きます。(2022-2-1)

 

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