”感幸”で地域全体の価値向上をー藻谷浩介、山田桂一郎『観光立国の正体』を読む

観光、それもインバウンドブームである。外国人の日本への旅行客が一気に年間2千万人を超えたとの報道が喧しい。しかしその実態はどんなものか。偶々私は今「瀬戸内海島めぐり協会」なる一般社団法人の専務理事をしており、まずは淡路島に観光客を呼び込むことを仕事にしている。といってもこの分野、決して詳しくない。どちらかと言えば、ド素人と言っていい。文字通り、”泥棒捕まえて”何とやらで昨今慌てて何やかやと只今猛勉強中である。そんな私が本やの棚で発見してむさぼり読んだのが藻谷浩介、山田桂一郎『観光立国の正体』。これなら十分”縄をなえる”だけ、面白くてためになる▼藻谷さんは『デフレの正体』『里山資本主義』でお馴染みのライター。日本総合研究所主席研究員で、今最も知的刺激を与えてくれる書き手だ。彼は「本もあまり読まず、ネットもテレビもほとんど見ず、日本と世界各地に設けた無数の定点観測点を繰り返し訪問し観察すること、『現場の知』を体現した人と対話を重ねること、それにいくつかの統計データの推移を分析すること」の三つを情報源にしているという。その藻谷さんが観光を核とした地域振興の分野で、この人以上の知識と見識を持ったひとはいないと太鼓判を押すのが山田桂一郎氏。スイス在住の「観光カリスマ」との触れ込みだ▼第一部では、山田氏が住むスイスのツェルマットという6千人足らずの村の観光への取り組みの紹介だ。スイスの各市町村で、地域経営の基盤になっているのが「ブルガーゲマインデ」と呼ばれる組織。住民自治経営組織とでもいうべき仕組みである。住んでいる人が「真の豊かさ」を感じられる地域を目指して、少数でも団結して目先の利害を超えて「一緒に稼ぐ」ことを前提に、域内利益を最大化させる活動を始めることだとの指摘はなかなか胸を打つ。第二部では、二人が観光立国とは名ばかりだと、徹底して現状を批判する対談が展開されている。いちいち御尤もだと思うが、素人の私でもなるほどと膝をうったのは、プロダクトアウトとマーケットインの発想の違い。前者は、顧客の意向、思いを無視して売り手の意思を押し付ける考え。後者は、旅行者が真に求めるものを提供するというもの。観光庁が取り組む広域周遊ルートも「ほとんどが各地の売りたいものだけを繋げた自己都合的なルートで」あり、「旅行者が巡りたくなる価値を提供しようとの発想になっていない」と手厳しい。「観光」というより「感幸」と呼びたいとの二人に大いなる心意気を感じた▼さて、この本で得た知識や情報をどう実際に生かすか。ここからが私の腕の見せ所だ、と言えば、皆さん笑われよう。あまりにも安易だと。しかし、やって見なければわからない。これまで、明石大橋が出来るまでは近畿圏に最も近い大型離島だったのが、出来てからは四国への単なる通過道になってしまい、今も昔も今一つブレイクしない淡路島。「国生みの島」と呼ばれるように神話に登場する伊弉諾神宮を抱え、「御食国(みけつくに)」と呼ばれるように、海の幸から山の幸まで何でもござれの豊富な食が食べられる島がこういう状態ではまことにもったいない。人生最終盤の終の棲家ならぬ、終の仕事場を得た私の真骨頂を発揮していきたい。(2016・12・2)

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