大きく様変わりするメディア業界 (14)

日経系のテレビ放送番組の「未来世紀ジパング」ってのは面白い。先週も、中国で稲盛和夫京セラ名誉会長の本がベストセラーになり、講演に喝采を受けてる様子を映し出し、日本式経営を模倣するかの国の未来を予測していた。先々週は、イスラム国家のインドネシアやマレーシアからの日本への観光客が増えつつあることを報じていた。未来は、さらに増加する、と。毎週見ているが、いつも明るい気分になる。こうまで日本の未来に楽観的でいいのか、との気さえしてしまうのだが。

しかし、勿論そんな予測ばかりではない。作家・堺屋太一氏の眼は厳しい。この人は、かねて未来予測の第一人者の趣きがあって、注目されてきた。昨年末に出された『団塊の秋』は、1976年に出版された『団塊の世代』の締めくくり編ともいうべきもの。2015年から2028年までの未来を六つに区切って、それぞれの時点での世相を新聞がどう報道するかを掲げていて大胆だ。ざっと一覧にしてみよう。

2015年 老若対立が激化!企業の設備投資は進まず、正規雇用は増えぬ。シャッター通りは鉄錆通りの様相。

2017年 昔繊維街の船場は住宅街に。生活保護が400万人に。医療チェーンは加盟三千医院に。崩れる社会。

2020年 五輪でお祭り気分は燃える。が、スポーツ熱は人口減でしぼむ。博士号を取っても就職先がない。

2022年 ユーズド産業が大繁盛。結婚しない若者が大幅に増える。財政は極度に悪化、貿易も大幅赤字に。

2025年 終戦80年が経ち、世界の中で日本の起こした戦争行為だけが露頭。少子化で私立大学は半減する。

2028年 出生率が回復。貿易収支が改善。起業する若者が増加。太陽光発電が無制限に。電気守の出現。

ほんのエッセンスだが、暗いものが殆ど。辛うじて最後になって、「ようやく光が差してきた」との記述に支えられた明るい見通しがでてくる。いかにもとってつけた感がする。もう少し、そこに至る背景を明かしてほしかった。

この小説では、専ら過去の事象をなぞるばかり。6人の団塊世代が時におうじて集まり、昔を懐かしむとの主題を扱った、小説という形式では必然的にこうならざるを得ないのだろうか。少々落胆した。もっと未来予測に力を投入してほしかったという気がする。名手・堺屋太一も焼きが回ったか、との印象は避けがたい。

個別の課題で、私が注目したのは、21世紀はあらゆる業界が再編成を余儀なくされているが、「そんな中で戦後体制を維持している業界は、たった一つ、マスコミ」としていること。もう一点は中国がどうなってるかとの観点。発電所を対象とする取引がドイツとともに賑わっているとの記述があった。「マスコミ」と「中国」がこれから先にどうなるのか。堺屋さんは、両課題ともに色々あっても、今の事態を引き継いでいるとの見方を示している。さて、どうか。この二点について考える上で参考になる二冊を紹介したい。

一つは、佐々木紀彦『5年後、メディアは稼げるか」で、もう一つは、宮崎正弘、石平『2014年の中国を予測する』だ。共に刺戟的。面白かった。佐々木氏は35歳。東洋経済オンライン編集長だ。古い日本の象徴がメディア業界だとしたうえで、「『もっとも古いもの』(紙の新聞)が『もっとも新しいもの』(ネット起業)によって、一世一代の大変化を迫られる」と展望する。その構図がダイナミックで面白いと言い切る。わくわくするような筆致で描く。とりわけ、5年後に食えるメディア人と食えないメディア人とに分けた最終章は読ませた。幾つもの未来予測はきわめて具体的である。テクノロジー音痴のメディア人は二流などというのは陳腐な響きだが、「日経以外の一般紙はウエブで全滅する」「企業家ジャーナリストの時代がくる」などという指摘には思わず生唾を吞みこんでしまう。

具体的な指摘で関心を持ったのは、「記者の価値が下がり、編集者の価値が上がる」とのくだり。「ウェブ化により情報量は爆発し、これまで記者が独占していた記事作成の領域にブロガーなどがなだれ込んできて」いるから、普通の記者では生き残れないというのだ。一方、編集者の方は、需要に比して供給が不足しているから「二流以上であれば十分食える」、と。確かに編集者は記者に比べて日蔭者扱いであったが、逆転する兆しがある。さらに、広告についての指摘も興味深い。媒体の価値が下がることによって、広告主の力が高まってくることに比例して、「媒体側の広告担当には、紙の時代とは比較にならないほどの能力とセンスが求められる」という。そして広告担当者の”編集者化”が進む」と予測する。

次世代ジャーナリストの条件として①媒体を使い分ける力②テクノロジーに関する造詣③ビジネスに関する造詣④万能性+最低三つの得意分野⑤地域、国を越える力⑥孤独に耐える力⑦教養、を上げている。特に、若い人たちは読むといい。教養書としてもお勧めだ。                    (以下、次号)

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