(198)20世紀をもう一度やり直す、とはー宮家邦彦、佐藤優『世界史の転換』を読む

先週ご紹介した宮家邦彦氏との懇談の際に、同じ外務省出身の佐藤優氏のことが話題になった。彼がいかに創価学会、公明党への理解が深いかについて、つい力説してしまった。宮家さんは、それには直接触れずに「彼とは対談本を出していますからね」とのこと。ウーン。まことに恥ずかしながら佐藤優さんが凄まじい勢いで次つぎと色んな人との対談本を出しておられるので、うっかり見過ごしていた。正直に告白すると、いささか食傷気味になっていたことは否めない。所望したこともあって、直ちにその新書『世界史の転換ー常識が通じない時代の読み方』が送られてきた。『トランプ大統領とダークサイドの逆襲』と併せて立て続けに読むことになった▼この本の読みどころは、「ISやアル・カイーダなどイスラム過激派がついに西側諸国に対する『世界イスラム革命戦争』を始めた」(佐藤)ということに尽きよう。シリアやイラクで追い詰められつつあるかにみえるイスラム過激派がこれからどう動くのか。極東の島国に住む我々とて無関心では到底いられない。その行方をめぐり「新たなジハード(聖戦)拡散の活動拠点は、フェルガナ盆地」(宮家)と断定していることは興味深い。「ウズベキスタンとキルギス、タジキスタンの国境線がジグゾーパズルのように複雑に入り組み、周囲を天山山脈の山々が取り囲む」ところだと。この戦争の行き着く先についてはさすがにご両人とも曖昧にしている。予断は許されないということなのだろうが、より不気味だ▼全編を通じて強く迫って来るのは、欧米の衰退であり、これまでの世界秩序が終わりを告げようとしていることだ。「『国境のない欧州』という夢は崩れる寸前で、通貨ユーロも風前の灯」との共通認識は「幕開け」であって、次はどうなるのか。「ポスト冷戦時代が終わったいま、私たちは、二十世紀をもう一度やり直していて」いて「現在の混沌とした国際情勢の中で、新たな秩序が形成されて落ち着く。そこからほんとうの新世紀が始まる」(佐藤)という。ここはさりげなくかかれているが、読み飛ばせない。「二十世紀のやり直し」とは「世界大戦のやり直し」を意味するからだ。しかも前世紀のそれと違って、新たな世紀の戦は「西欧文明対イスラム文明」の様相となる気配が濃厚で、それはまさに「世界史の転換」の一大構成要因を意味するものと思われる▼私たちは若き日に、師匠・池田先生から「地球民族主義」の大事さを教えられ、「等距離中立外交」の必要性を学んだ。新しき世紀は「東洋の仏法思想」を中心に据えた時代にせねばならないと夢を育んだものである。つまり、それこそ真の意味での「世界史の転換」を果たす担い手であることを自覚したものだった。あれから50年。もし時代が宮家さんや佐藤さんがここで語っているように展開していくなら、それは私たちが無責任だからだとさえ。ギリシャ哲学とキリスト教との合体による「西欧思想」は明らかに破たんの色が濃い。それを補い新たな世紀を引っ張るに足る思想は、「日蓮仏法」でしかないことを改めてかみしめたい。(2017・2・8)

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