(224)ドイツに傾斜しすぎた「国民病」ー『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』などを読む

猛暑の中、今週読み終えたうすい本3冊を。磯田道史さんは今を時めく若い歴史家。テレビの露出度も高く、好感度は高い。最初の頃にかけていたメガネを外し、恐らくはコンタクトにされたと思われるあたりから、注目度は高まる。『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』を神戸の書店で発見。司馬史観をめぐりあれこれ考えを深めている折でもあり、直ちに購入して読む。戦国、幕末、明治、昭和前期を扱った作品を順次取り上げながら、日本の歴史と日本人を見つめようという試みだ。『国盗り物語』『花神』『坂の上の雲』『この国のかたち』などが代表作品として、手際よく料理されており、面白く読める。ご本人が述べているように、本来歴史家が小説家の書いたものを論評することは稀だが、それを敢えてやるところが大胆だ。NHKの『100分で名著』の内容に加筆されたものだが、安易な本づくりのように見え、若干気にかからぬでもない。だが、このところの私の問題意識を刺激してくれたくだりは多い。代表的なものとして「昭和の軍人はドイツを買い被っているけれど、本当のドイツを知っている人はいない。ドイツ傾斜というのが、『一種の国家病』だったと、司馬さんは非常に強い調子で批判しています」を挙げておく。来月ドイツの友人を訪ねる予定にしており、語らいが楽しみだ▼ほぼ月に一回、一般社団法人『安保政策研究会』での懇談会でご一緒するのが柳澤協二さん。元防衛省の幹部で、元内閣官房副長官補だ。つい先ごろ『新・日米安保論』なる鼎談本を出版。ここでも取り上げた。実はその本よりも先立つこと2年。あの安保法制論議で日本中が大騒ぎしている折に、彼が書いたのが『自衛隊の転機』。考え抜かれた論考は大いに刺激となり参考になる。「これを契機に、日本がどういう国でありたいのか、その国家像を前提として、どのように守り、世界に貢献したいのか、数年がかりで、一から議論を始めていく好機が到来した」とされている。彼自身はせっせと議論を仕掛けているが、果たして国民各層は応えているかどうか。この本にも鼎談が付加されており、双方に顔を出しているのが伊勢崎賢治さん。東京外大の教授にして元国連PKOの幹部。しかもトランペット奏者というつわもの。現役の頃に知り合い、懇意にさせて貰ってる。先日、彼から「(私たちの本が)売れない」との「泣き言」があったので、「タイトルが良くないのでは」と述べておいた。『三人よれば安保の知恵』とか『どこに行くのか自衛隊』ぐらいがいいのでは、と▶夏休みとあって、ご多聞に漏れず我が家にも孫が押しかけて来る。「くればうるさい、こなきゃ寂しい孫とこども」というのが通り相場だが、来た時にどう遊び相手をするのかは悩みの種。私らの頃は外であれこれと遊んだり、家の中でも自前の遊びを勝手に考え出したものだが、最近はゲーム全盛で、ちっとも創造性がない。なんてぼやいているだけにもいかぬ。そんなときに姫路の駅中書店で発見したのが、逢沢明『大人のクイズ』。論理力が身につくとサブタイトルにある。こども相手では難しいかと思ってページを繰っていったらさにあらず。結構子ども相手にも使えそうな問題があった。「英語でトラはタイガー、ゾウはエレファント、ではかっぱは?」一生懸命に考えたが分からない。答はレインコートと来るから笑える。また、「歯痛で苦しむ人が毎日、皮膚科に通う理由は?」これはまた歯が立たない。「NEW DOORを並べ替えて、一つの言葉にするとどうなる?」ウーン、これは簡単。などというように楽しめる中身だ。一つひとつに「大人の論理」なる注釈がついており、これがまた渋い。こども相手以外に、どこかで使えるかもなどと、あらぬ方向に想像を巡らせるも、もはや手遅れ感が否めない▼かつて現役の頃に、こういう調子で三題噺風に毎週3冊4冊の本を料理したものだ。『忙中本あり』と銘打って、ブログを書いて発信し、本にもして出版パーティまでやった。今から思えば、若気の至り以外の何ものでもない。老境にいたってやろうとすると、これはなかなか難しい。よくぞまあ、激務の中を続けたものよ、と我がことながら呆れてしまう。(2017・8・24)

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