(329)息による養生の指南ー五木寛之、帯津良一、玄侑宗久を読む

人生7度目の引越しをしてしまって、ほぼ一ヶ月。やっと落ち着きかけている。季節は晩秋。とはいうものの日中は未だ未だ暑く、夏を思わせる日もある。新しい居住先の明石市は、色々と〝売り〟に事欠かない小都市だが、私が最も驚き、かつ世に宣揚したいと気に入ったのは「図書館の仕組み」である。質量共に群を抜いている。70歳代半ばの引越しに際して、ほぼ全ての蔵書を生前整理したため、今後は図書館を利用するしかないとは思っていた。だが、かくも便利で充実した図書館が明石市にあるとは。おいおいその中身は明かすとして、まず11月の初旬に、そこから借りて読んだものを紹介したい▼五木寛之『養生のヒント』、帯津良一『養生という生き方』、五木寛之・玄侑宗久『息の発見』の三冊。共通するテーマは、養生。そしてその中核は息の仕方。〝健康おたく〟の異名を欲しいままにしている五木寛之の、朝起きてから眠りにつくまでの生きる作法にはただただ呆れるばかり。彼は80歳代半ばの今日まで、医者、病院には一切通ったことがないとか。ひたすら自己責任のもと身体を慈しみ、鍛えあげる日々を過ごす。五木にこのところ嵌っている我が親友から、既にその奥義を聴いてはいたが、足の指一本一本に名前をつけて、1日の終わりに丁寧に撫で上げその労苦を愛でるとのくだりには実に感動した▼帯津良一は、「ときめきこそ心の養生」とのフレーズに見るように、人とお酒をこよなく愛する、患者にときめきをもたらすお医者さんである。先年国会でのOB議員の会で講演を聴いていらいすっかりファンになった。ここでは、「呼吸法で宇宙を感じ」つつ、「気功の時代を生きる」として、読者に腹式呼吸をすすめる。この人の説く究極の養生は、「日々内なる生命の場のエネルギーを高めていき、死ぬ日に最高にもっていく。そしてあちらの先輩たちが雷でも落ちたかと驚くくらいの猛スピードで死後の世界に突入して行く」というのだ。この「死に方のコツ」はぜひ試してみたい。だが、その前にご本人の体験談を聞きたいものだ▼玄侑宗久と五木との対談はこれまた色々と〝気づき〟を与えてくれた。かたや禅宗の坊さん。もう一方は親鸞を敬う作家。日蓮仏法一筋でここまで生きてきた私には極めて刺激的で挑発的な対談である。若き日に折伏した相手が、日蓮的世界に偏りたくないと発した言葉が突然蘇ってきた。それにしてもこの二人の話の展開は魅力に溢れる。行き着くところは「一日五分、息そのものになる時間をつくろう」ということ。「お経を唱えるのが長寿への一番の呼吸法」との二人の合意を前に、平均寿命を前に早々と散っていった我が先輩や友たちの顔が浮かぶ。私はこの本を読み終えるとともに、読経・唱題の際に、腹式呼吸を意識する日々が始まった。(2019-11-11=敬称略)

 

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