先日大腸と胃の定期検診を受けるために、神戸のあるクリニックに行きました。かかりつけ医から紹介を受けたところで、この分野では権威とされているとのこと。3年前に初めて診てもらっていらい繋がりが出来ました。ただこの医師はとてもコワモテで、様々な意味で私とは波長が合いません。ニコリともせずに厳しい口調で、私の生活習慣の実情に立ち入って、警告的見立てを押し付けてきます。今回は私がアルコールを週に4回ほど嗜み、顔が飲むと赤くなってくるということだけで、食道ガンの可能性が高いと断定されてしまいました。結果は異常なし。ご本人は「予想は裏切られました」と苦笑いして仰ったのですが、この間の私の悲観的思惑を振り返るにつけ、今少し患者に寄り添う配慮をして欲しかったと思うことしきりです▼医師との付き合い方については、帯津良一さん(帯津三敬病院院長)が気分が合わない医者とは我慢することなく、変えればいいとの指摘が思い起こされます。この人と、作家の五木寛之さんは共に〝健康おたく〟と云っていいほどのその道の〝通〟ですが、最近読んだ二人の『健康問答』は、なかなか読ませます。とくに、「食養生の総チェック」という第1章が面白かった。健康談義は全く正反対のことが人それぞれの信ずるままに展開されることが多く、ややもすると普通の人はただ右往左往してしまいかねません。ここではそうした事例を取り上げズバリ見解を述べています。例えば、肉をめぐって「体に良いのか悪いのか」との議論についての結論は「肉はやたらと食べるのではなく、ときどき満を持して、ときめいて食べよう」。塩分はあまり取らない方がいいかとの問いかけについては、「塩分は必要である。ある程度意識的にとった方が良い」など、一味違った本当のところが次々と明らかにされ、大いに参考になります▼本格的冬の到来と共に、風邪を引くことが懸念されます。先に挙げた二人が推奨する本、『風邪の効用』をも読んでみました。野口整体で知られる野口晴哉さんが60年ほど前に講演したものです。この歳になるまで、「風邪なんか」と高をくくっていましたが、刮目させられるところがありました。野口さんも「風邪くらい厄介なものはない」し、「一番難しい病気」だと云います。ただ、面白いのは「風邪というものは治療するのではなくて経過するものでなくてはならない」と捉えていることです。いわば風のように身体の中を吹き抜けていくものと位置付けているところがユニークです。「風邪を上手に引き、上手に経過するということの方が意義があるのではなかろうか」とか、「風邪を全うすると、自ずから改まる体の状態がある」との記述には奥深い哲学を感じた次第です。首筋を始め、体の各部の温めることが大事と云ったような、細かな風邪の予防についての作法の披瀝も、とても惹きつけられました▼実は私が尊敬する音楽家にしてプロデューサーの榎田竜路氏(北京電影学院客員教授)がかねがね野口さんを人生の師と仰いでいると口にしています。この本を手にするまで、どういう人物か殆ど知りませんでした。若き日に不慮の交通事故から心身共に落ち込んで絶体絶命の危機に瀕していた榎田さん。その彼が野口さんの後継者である息子さんに出会い、様々な意味で師事することになったといいます。じっと顔写真を見つめていると、その佇まいと風格にグッとくるものを感じます。頭でっかちの口先だけの議論ではなく、身体を使っての映像制作技術や地域おこしの戦略を全国各地で訴える榎田さんとどこか通じるものがあるように思われます。私にとって、彼のお師匠さんとの初の出会いとなる本でしたが、野口さんには『整体入門』なる本筋の著作があるとのこと。「日本カイロプラクターズ協会」に深く関わり『腰痛にはカイロが一番』との対談電子本を出している私としては、複雑な心境ではありますが、近く読もうと思っています。(2019-12-12)