(354)コロナ禍中に読んだ『クンバハカ』『白鵬』『麻薬』本の味わい

新型コロナの第一波が過ぎたかに思われる今、次第に日常が取り戻されつつある。大きく言えば「経済のV字型回復」への待望論が鎌首をもたげ、身近なテーマで言えば「生活習慣」が棚卸しされかねない状況である。緊急事態宣言直後、文明論が喧しく論じられ、価値観の転換を説く向きも少なくなかった流れが忘れ去られないのかどうか。大いに懸念される。このコロナ自粛の期間、あれこれと軽重問わずつまみ食いならぬチョイ読みをした。そのうち尊敬する大先輩や友人が出版した本3冊を紹介する▲まずは合田周平・電気通信大学名誉教授による『中村天風 快楽に生きる』。合田さんは財団法人天風会の元理事長。「天風哲学」の実践者・中村天風先生の愛弟子である。天風先生の箴言集の後にまとめられた「心身壮健ークンバハカの実践」が興味深い。クンバハカとは、「肛門」を締め、同時に「肩」の力を充分に抜いておろし、さらに「下腹部」に力を充実させる呼吸法。「肛門を締めると気分が全然違ってくる。怒りそうになったらキュッ、悲しくなったらキュッ、これだけで心が傷つかなくなる」と言う。お試しあれ▲次に、浅野勝人・元内閣官房副長官の『孤独なひとり旅 白鵬関とのショートメール』。浅野さんは衆議院議員を辞されたあと、一般社団法人「安保政策研究会」理事長を務める。横綱白鵬の熱烈な支援者で、陰に陽に白鵬を激励(主にショートメールで)し続けてきた。一般的に白鵬は立ち合いのかち上げやら、優勝時の土俵下での万歳の音頭取りとかで評判はよろしくない。しかし、これを読むと目から鱗が落ちるように、真反対の大相撲の守護者としての白鵬が立ち現れてくる。私は高木彬光の名作『成吉思汗の秘密』からくる〝夢に満ちた神話〟をもじって、「義経の末裔・白鵬」と持ち上げたい▲最後に、山本章・元厚労省麻薬課長の『「奇跡の国」と言われているが‥ どうする麻薬問題』を紹介する。クスリを語る際にこの人は外せない。彼が先に世に出した『医師がくすりを売っていた国 日本』は全ての薬剤師、くすり愛好者必読の本だと思う傑作である。今度の麻薬本はまたとんでもなく面白い。幸か不幸か、麻薬の怖さがリアルに伝わってこない分だけ、不謹慎にも試してみたくなるほど。偶々少し前に彼の仲間の厚労省の麻薬取締官・瀬戸晴海さんが書いた『マトリ』が話題を呼んでいるが、併せ読むと立派な麻薬通になること請け合いである。(2020-6-25)

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