中国に明日はないのか、あるのか (15)

中国をめぐってはあまたの情報が錯そうするなかで、特徴的なのは正反対の予測が存在することだ。たとえば、前回の堺屋太一『団塊の秋』では、2025年の中国では「日帝打倒80周年の祝賀会」が催され、ますます歴史の露頭が目立つとしている。歴史認識なるものは風化するどころか、時間とともに先鋭化を強めるというわけである。経済面でもドイツと並んで、2028年には「中国では、発電所を投資対象とする取引が大いに賑わっている」とし、健在ぶりを占っている。

しかし、10年以上もの遠い先まで待たずとも、すでに国内社会は、バラバラで国内暴動は続発、不良債権の爆発は目前で、「三年以内に共産党が崩壊するかも」と予測しているのが、評論家の宮崎正弘氏や石平氏だ。2013年の中国予測(前後半二冊)に続き、『2014年の「中国」を予測する』も大陸から次々と逃げ出すヒトとカネの在り様を描いてまことに刺戟的である。

こういう本はいわゆる「トンデモ本」だとして、はなから敬遠する向きがあるかもしれないが、それでは知的損失は大きい。食わず嫌いは勿体ない。とくに宮崎氏は中国の現場を知り抜いており、その情報は新鮮かつ貴重なものに思える。また、日本のマスコミの対中報道姿勢についても、きわめて冷静に見てることが信頼感を与える。たとえば、三大経済雑誌が中国経済にかなり冷やかになっているのに、日本経済新聞が相変わらず本当のことは覆い隠していると、疑問符を投げかける。「中国へ行ったら煤煙だらけで呼吸はできなくて、レアアースの精錬が悪くて河川は汚染され、なおかつ不動産はガラ空きでどうして不動産価格が上がっているんだ」と指摘する。

前回の佐々木紀彦さんが5年後に稼げるのは大新聞では日本経済新聞だけと予測をしていたのを紹介したが、中国については鋭い切り口は期待できないということか。というより、経済予測において国内外を問わず楽観的なのはこの新聞社の習性となってしまってるのかもしれない。

ただ、中国の現場に足を運ぶ機会がない私たちとしては、こうした宮崎、石コンビの「中国に明日はない」ともとれる過激な見方には慎重になりがち。他の視点も求めたくなるというものだ。そんな時、つい最近、格好の人物に出逢った。香港に長く住む経済人H氏である。

中国地域における旧正月の休みに合わせて帰郷(たつの市)された際に、懇談した。話題は香港からみて日本がどう見えるのかということから始まって、抬頭するイスラム国家とどのように付き合うかとの観点など幅広いものとなった。そのなかで、私は『2014年の「中国」を予測する』を取り上げ、彼に二人の中国観の信憑性を問うてみた。

数あるテーマのうちでピックアップしたのは、「中国から離れるアジア」のくだりだ。中国の経済事情に滅法通暁している宮崎氏は、「アジアで孤立を深める中国」との見立てをかなり以前から表明している。この本の中でも、各国個別に取り上げ中国との距離を測っていて興味深い。

フィリピン ガラガラのチャイナタウン。クラーク基地(元米空軍基地)の再開、スービック湾も再び貸す。

インドネシア 復活するチャイナタウン。だが、華僑も手探り状態。日本企業の進出は未だこれから。

ベトナム ハノイにチャイナタウンはなし。ホーチミンでは遠慮げにソロリと復活。外交的に難しい関係。

タイ 陸続きだから昔通りの付き合いは可能。相当のカネを注ぎ込む中国。

ラオス チャイナタウンはまだみすぼらしい。中国がメコン川の根元にダムを建設中。中国の援助をあてに。

カンボジア 中国が嫌いという前にベトナムが嫌い。中国からの開発援助をあてにしている。

シンガポール 香港と同様金融フリーマーケットで、中国からの進出が凄まじい金融。日本は利便性なし。

ミャンマー 中国が建設中のダムは中止。中国依存から脱却。日本の投資は未だ12位で、これからの段階。

マレーシア 中国の進出は凄い。日本は高度労働集約型産業の進出の余地はあるが、アパレルなどは遅い。

ざっと以上のような感じで、「孤立を深める」というより、「孤立を深めぬよう」、中国は経済力を利用して東南アジア各国を分断しようとしているというのが正直な見立てだろう。

H氏も、こうした記述に同意をし、宮崎氏らの対中観に特段の不審を感じている様子はなかった。と共に、香港から日本に帰国する度に、激しく動き躍動感がある東南アジアに比べて、いかにものんびりている日本に危機感を持つとの印象を披露されたことには当方の「受信機」の警鐘を鳴らすに十分なインパクトだった。まだ40歳代半ばの新進気鋭の経済人で、自らを「華僑」の向うをはって「和僑」と位置付けるほどの日本発のアジア人である。日本からアジアを覗き見るだけに過ぎぬ人たちとは大きく違う。これからのアジアと日本の関係を展望するうえで、一段と注目すべき日本の若きホープだと確信する。         (この項終わり)

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