(222)何になるのかより、何をするのかだー上甲晃『人生に無駄な経験などひとつもない』を読む

野田佳彦元首相が民進党幹事長を辞任する一方、前原誠司元外相が代表選挙に出馬するといったニュースに接すると、改めて民進党という政党を構成するメンバーの大きな柱が松下政経塾出身者であることに気づく。故松下幸之助翁の肝いりで作られた「政経塾」は果たして成功したのか、それとも失敗したのか。総理を始めそれなりに優秀な政治家を輩出したということでは当初の狙いは十二分に達成したというべきだろう。しかし、松下翁に見込まれ、かつて塾頭を務めた上甲晃氏(志ネットワーク代表)のその後の闘いを見ていると、どうも違う感じがしてならない。「お前さんたち、何をしてるんだ。大臣になることが目的ではなく、何をするかではなかったのか」との叱声が聞こえてきそうだ▶上甲晃『人生に無駄な経験などひとつもない』を読むといいよ、と薦めてくれたのは前高砂市商工会議所会頭の渡辺健一氏(ソネック相談役)。この人がいかに上甲氏に入れ込んでいるかは、先年姫路に上甲氏率いるネットワークの仲間たちを全国から招いての集会をもたれた時に心底からわかった。「理屈ではない。行動をすることでこの世におけるひとの志が分る」ということが彼らを貫く心意気に違いない。衆議院選挙に私が出るという頃ー今から30年前ーから、渡辺さんには陰に陽に激励を受けてきたが、このひとの思想と行動の軌跡は大いに心震わせられる。「戦争の20世紀」から「平和の21世紀」へとの転換ままならぬ今を生きる人生の伴走者として▶この本から伝わって来るメッセージは、逆境こそ飛躍するチャンスであるとの一事に尽きる。事態は受け止め方次第でどうにでもなるとの信念を持ち、志を高く掲げよとの松下翁の教えを微に入り細に渡り説いている。「難あり」を「有難い」に変えるのも「志」の力だとの言い回しを始めとして全編に筆者の強い意欲がひしひしと迫って来る。思えば、私も50年前から、これとほぼ同じ考え方を学んできた。ここになく、我々にあるのは祈る力である。一念次第でいかなる逆境も乗り越えられると教えられ、また伝えてきた。あらためて共通するものを感じる中で、特定の信仰を持たぬ指導者としての松下翁の凄さを思う▶あとがきで、筆者は①右肩上がりの経済➁資源浪費型社会③お金万能社会④他人依存型社会⑤ふやけた贅沢病ーこの5つときっぱり別れることを提案している。そして➀質的に掘り下げた経営➁資源エネルギー節約型社会③足元の生活をしっかり励む④自分のことは自分でする⑤質実剛健の生き方をするーことへの転換を説いている。現在只今の一瞬においてこうした生き方が日本社会そのものに問われており、志が問われている、と。松下政経塾出身ではない私にも、様々な意味で耳が痛い提言として聞こえてくる。今再びの思いで、大いなる志を掲げ、経験を積み上げようと決意するに至った。(2017・8・11)

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