(26)葉室燐の新たな連載小説で公明新聞拡大

公明新聞で葉室燐『はだれ雪』の連載が始まっている。今が盛りの人気作家の手になる、赤穂浪士異聞というか「女人忠臣蔵」はまさに注目の的で、毎朝が楽しみなひとは多いものと思われる。政党機関紙でありながら、その連載小説において過去に直木賞作家をはじめ様々な有名作家を登場させてきていることは案外知られていない。私自身、過去の記者時代に、源氏鶏太『時計台の文字盤』の原稿取りを仰せつかって約一年お付き合いしたことがある。また、愛読した『元首の謀反』の作者・中村正軌さんには、連載をお願いしたものの断られた。しかし、そのご縁で、私の拙い本の出版記念パーティーの世話人に名を連ねて頂いたり、今もお付き合いをさせて頂いている▲こうした公明新聞の連載小説にまつわるエピソードには事欠かないが、実は先年に連載された、火坂雅志『安国寺恵瓊』は、大変な人気であった。そんな連載中のさなか。党のある支部会で、その路線をめぐって議論が伯仲してしまい、収拾にやや苦労する羽目に立ち至った。その時、やおら立ち上がった80歳代後半の老婦人が「先ほど来、皆さんがあれこれ言っていることはみんな公明新聞に書いたるがな。それより、公明新聞は小説が面白い」ー場内がどっと沸いて、空気が一変した。その老婦人とも深い付き合いをする仲となった▲ところで、葉室燐といえば、『蜩ノ記』で直木賞を受賞。神戸の老舗バー『グレコ』のママーこの人は大変な読書家で、私に須賀敦子の魅力を教えてくれた人だがーが、この本を推奨しており、大の葉室好きだったことを思い起した。彼女に新たな小説が公明新聞で始まる、と告げたところ、返す言葉で「新聞取る」と。有難い、一瞬のうちに拡大が実現した。▲肝心の私は葉室麟を知らないし、『蜩ノ記』も勧められながら未読だった。それでは彼女に申し訳ないとの思いで、急ぎ読み終えた。が、今一歩ぐっと来ない。主人公・戸田秋谷が立派すぎ、眩しすぎるゆえであろうか。「これも、お読みなったら」と手渡された『風渡る』は、この店の常連・井戸敏三県知事から彼女が勧められた、と。キリシタンとしての黒田官兵衛が描かれる。彼がこういった小説を読むとは意外だった。これは読まねばならぬ。かくして私は、葉室燐にまた嵌まっていくにのかもしれない。(2014・5・3)

 

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