悪いも良いも全てが暴かれたー門田隆将『疫病2020』を読む

新型コロナウイルスによる肺炎の患者が日本で初めて確認されたのは、2020年1月16日のこと。武漢から10日前の1月6日に帰国した30代の中国人だった。中国は23日に武漢市を封鎖する。その3日後の26日に、日本の厚労省は、ホームページに「新型コロナウイルスに関するQ&A」を公表、「ヒトからヒトへの感染は認められるものの、感染の程度は明らかでない。過剰に心配することはない」との緩やかな見方を示す。著者・門田隆将は、コロナ禍事態への対応について、信じられないほどの〝悪意に満ちた中国〟と、〝善意に満ちた日本〟を対比させつつ、一気に読ませる。発刊されてから2ヶ月余り。気にはなりつつ、「あること」が災いしてわざと読むのを遠ざけていた。親しい友人から勧められたこともあり漸く読んだ。その迫力溢れる筆致に圧倒された。遅かったと、後悔する我が身を恥じるのみ▲この本の凄さは、門田が自身のツイッターでの発信をベースに置いて、克明に事態の進展を追い、歴史の中にしっかりと跡付けし、読者へ提示していることである。最初のそれは、1月18日付け。武漢の新型コロナウイルス対策で、米国CDC(疫病対策センター)がまるで映画『アウトブレイク』のようだとし、日本も人民大移動が始まる中国の春節の前に徹底した対策を取るよう訴えている。その映画は感染症との戦いをダスティン・ホフマン主演で描いた話題作である。ツイッターとそれを補いつつ展開する論評は呆れるほど歯切れ良く見事だ。厚労省始め、日本政府の危機感の欠如や、およそ〝緩い予測〟の数々を披露し、中国で異変がいかにして起こったかを暴く。かつての失敗を教訓にした台湾の見事なまでの危機対応の処し方も見逃せない▲厚生労働省で僅かの間とはいえ、仕事をしたことのある私としては、耐えがたいほどの酷評に苛立った。同時に長きにわたって防衛省を担当した者として、自衛隊の獅子奮迅の活躍ぶりには溜飲を下げる場面も。したたかさを遥かに超えた中国政府の緊急事態への対応と、かの国の医療者や一般国民の懸命の戦いに目を見張る思いもする。共産中国という存在が、自由主義国家群との対決を鮮明にするに至った姿が浮き彫りになっていくあたりは、疫病対応を通じての最新現代国際政治学の生きた教材解説でもある。日本の政治、政治家の無能ぶりを散々こき下ろした挙句、ツイッターの最後を4月22日付けで、日本の死者数が欧米より圧倒的に少ないことを挙げ、医療従事者たちの自己犠牲の精神を持ち上げることを忘れていない。「医療崩壊ギリギリで持ち応える日本が先進医療大国であることは誇り」との結び方は多くの日本人をほっとさせる▲私が読むことを躊躇した「あること」とは何か。新聞広告での「総理も愕然『創価学会』絶対権力者の逆襲」との見出しである。目次にはこれに類するものは見られない。「混沌政界へ突入」と題する章に含まれているのだが、いかにも創価学会、公明党関係者を釣るためだけの餌のように見えて、その魂胆を卑しく思ってしまったのである。「絶対権力者」という表現にもその下心が否定できない。「国民一律10万円給付」は、公明党の若手議員たちが早い段階で主張してきたテーマである。それを受け入れるに至らなかった党執行部を不審に思っていた私は、支援団体・創価学会側から激しく責められて立ち上がるに至った経緯は口惜しく思える。そんなこんなで、読むに値しないと勝手に決めてしまった。巻末にある著者と佐藤正久氏(参議院議員)との産経『正論』5月号の対談収録も読ませる。「ひげの隊長」で呼称される佐藤さんの識見と胆力はただものでない。それにしても彼の〝政界内部告発〟には改めてため息の出る思いがする。関連年表共々しっかり目を通し、長く保存するに値するものだと付け加えたい。(2020-9-10)

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