(367)「謀略・陰謀」史観の〝迫真性〟に驚くー馬渕睦夫『2021年 世界の真実を読む』

親しい友人との会話の中で、「馬渕睦夫」なる名前が出てきて、この人の本のおかげで、日本の近代史についての自分の長年抱いてきた疑問が見事に消えたという。驚いた。元ウクライナ大使で、少し前に「日本熊森協会」顧問に名を連ねられたことは知っていた。森山まり子同会名誉会長が「国際問題に明るい凄い人」と感嘆してたことも思い起こす。その友人が持ってた本(『自立する日本』)を借りて読んだことは既に紹介した。改めて『2021年 世界の真実』を購入し、一気に読んだ。この人のユーチューブも幾つか見た。いやはや驚いた。新聞やテレビなどで主に報じられていることと真逆のことを主張されており、トランプ米大統領をこよなく評価、絶賛されている▲本を読み終えた直後に大統領選の大まかな結果が分かった。彼の期待した予測がほぼ外れて、バイデン大統領が実現する見通しになった。さあ、この状態をご本人はどう解説するのか。興味深く最新のユーチューブ(第57回)を見た。驚いた。全く動ぜず、この選挙で大いなる不正があった、トランプ氏は勝ったのだと繰り返された。ただし、行われた不正の中身についての言及は、つまりその証拠については触れられていない。米日のメディアが殆ど全て間違った報道をしているとの強調だけが耳朶に残る▲この本の中で、馬渕氏は、トランプ再選で、大きな軍事的紛争が回避され、各国が自国民の福利を最優先する「自国第一主義」に回帰し始めるとし、負ければ世界は軍事的な熱戦に突入すると予測する。彼によると、ディープ・ステート(DS=「国際金融資本」といった方がイメージしやすい)の世界支配に敢然と戦っているのがトランプ氏で、それに完全に侵されてるのが民主党だという。DSの一連の動きの黒幕の一人がジョージ・ソロスで、極左暴力革命集団に資金援助をして社会的緊張を高める役割を果たさせているというのだ。馬渕氏のグローバリズム批判は、即インターナショナリズム批判に通じ、ナショナリズム礼賛の次元に終わっているように見える▲DSの「謀略・陰謀」によって世界がこれまで支配されてきたとの見立ては、概ね一笑に付されてきた。しかし、一方で「ケネディ暗殺」に代表される不可解な事件の存在は、その笑いを押し返す。世界の理解の仕方、この世をどう見るかは、各人自由だが、世界を破滅の方向に誘導するものには与したくない。人気漫画アニメ『鬼滅の刃』が受けているのも、その気分の反映かもしれない。〝マブチスト〟なる言葉が静かに語られるほど信奉者は急増している。大統領選への見方も某月刊誌の論調は〝マブチズム〟に彩られている。馬渕氏は私と同い年。老いて華麗なるデビューをされたかに見える。この人の「世界覇権・10年戦争が始まった」との説は興味深い。その術中に嵌らず、〝超グローバリズム〟に立つ私なりに注視し続けたい。(2020-11-28)

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