今月末にフランス、ドイツへ行く予定を立てている。古くからの友人からのお招きもあり、思い切っていくことにした。その準備のために両国に関係する本を読もうと思い立った。まずはドイツ人の生活に関する本を幾冊も出している評論家の沖幸子さん(フラオグルッペ社長)に訊いた。お勧め本はないか、と。直ちに佐藤伸行『世界最強の女帝メルケルの謎』を挙げてくれた。佐藤氏は追手門学院大教授で、元は時事通信の欧州担当記者だった。90年代にハンブルグやベルリンで取材したとあって滅法ドイツ事情には詳しい。この本の出版は昨年のこと。今までメルケルについては殆ど知らなかった私も一気にひきこまれた。実に面白く読めてドイツを分かった気にさせてくれる。そして何より新聞記者らしく切れ味のいい文章が魅力的だ▼彼女の生い立ちから今に至る人物像が描かれる1~4章までが特にいい。とりわけ「魔女メルケルの父親殺し」がいかにも謎めいている。先日亡くなったコール元首相をはじめとする引き立て役の男たちが次つぎと失脚し、その政治的遺産が転がり込み、本人は肥え太っていく。ドイツにおける不吉なジンクスだというのだが、さてご本人の思いは、どんなもんだろうか。旧東ドイツで育った物理学者出身。父は「赤い牧師」。ださいスカートと髪形を上司から注意されたこととか、笑い上戸にまつわるエピソードやら、二度の結婚など下世話な話題が満載されている。後半は中国、アメリカ、ロシアなどとの外交展開が触れられ、エマニュエル・トッドの「ドイツ帝国が世界を滅ぼす」との過激なフレーズの「謎解き」にもなっている▼次はフランス関係のものに進みたいところだが、残念ながら読み切れておらず、次回まわしに。ところで先日、高校の同期会(十六夜会という、長田高校16回生の集い)で、ある友人からお前の顔は悪いけど韓国の新大統領(文在寅)に似てると言われた。以前に同僚代議士から北朝鮮の金正日総書記(当時)に似てると言われたことがあるから、別に悪くはない。北から南へと多少進歩したかと喜ぶわけにもいかないが、まあいずれにしてもコリア系か(その昔、北大路欣也に似てると言われたのに)と密かに笑った。そんな矢先に、畏友・古田博司筑波大教授から『韓国・韓国人の品性』という本が届いた。3年半前に出版された『醜いが、目をそらすな、隣国・韓国!』に新たに、まえがき、第一章を加え、改題・改訂した新版だという。この人は、慶大文学部を出た後、韓国に留学、奥さんが在日韓国人。アジアオープンフォーラムの場で知り合い、懇意になった。朝鮮半島問題に通じた学者というよりも思想家の趣きを近年強めている。さらに大きな存在になられるに違いない。だが、その前にコリア系のテロリストから殺害されるのではないかと本気で心配している▶ともかく過激だ、帯には、韓国人は平気でウソをつく。北も南も見栄っ張り。「卑劣」の意味が理解できない。「法治」もない。あるのは憎悪の反日ナショナリズムだけだ。「助けず、教えず、関わらず」の非韓3原則で対処せよ、北も南もいずれ滅びて半島から逃げ出すなどと、恐ろしいほどの悪口罵詈が露出している。北朝鮮からのミサイル発射騒ぎで、お色直し的緊急出版を迫られたのだろう。まえがきには「日本人は嫌いなものから目をそらす癖がある。いま北朝鮮からミサイルが飛んできても、きっと落ちないだろうと目をそらしている。嫌いなものをみたくないので、どうしても無傷を想定してしまう」とし、日米戦争のすえ、100倍返しで300万人も殺された日本人も「もう歴史から学んでもよい頃だろう」と警告。一方、あとがきでは「筆者の立ち位置は相変わらずブレていない。西洋近代化は善で、ゆえに資本主義も民主主義も善である。それがうまくいかない国々に問題がある」と持論を展開する。私としては、善ではあっても最善とは思えず、資本主義、民主主義のほころびが気になって仕方ない。日本近代化のありように不満と疑問を持つ人間など、彼から見ると、朝鮮半島や中国を知らない”愚かな贅沢もん”というほかないのかもしれない。(2017・9・8)