(23)朝鮮半島の仙人が解き明かす韓国の真実 ──古田博司

古田博司ー私には学者の友人がそこそこいるが、この人はそんな中でも飛び切り親しい人の部類に入る。筑波大学教授。現代日本における韓国研究の第一人者と言っていい。今まで、『東アジアの思想風景』や『東アジ・イデオロギーを超えて』『日本文明圏の覚醒』などの本を、私の読書録でも紹介してきた。韓国や儒教圏にまつわる知的蓄積たるや大変なものがある。元をただせば、故中嶋嶺雄先生のご紹介で知り合った仲なので、広い意味での同門と言えようかと、生意気にも勝手に私は位置付けている。上京した際に、酒を酌み交わしながらの対話は、古代の朝鮮半島に住む仙人と遭遇したかのようで、まことに時空を超えて楽しい。

先に挙げた本を読まれずとも、タイトルを見ただけでもお分かりのように、彼はかなり硬派の難しいことを論じる。かねてから私は、「難しいことを論じる力がおありなのはよーく分かった。これからは、一般にもっと読まれるような分かり易い本を書いてほしい」と偉そうに言い続けてきた。勿論、今までも『悲しみに笑う韓国人』だとか『朝鮮民族を読み解く』などといった平易なタッチの本もある。しかしながらやはり持ち前の知性が邪魔をして、庶民には馴染まない本をお書きになる傾向がある。つい先年の『「紙の本」はかく語りき』など、その典型だろう。好きなファンにとっては堪らない魅力があるが、もっともっと多くの人に、この人のものを読ませたいと思う者にとっては、いささか惜しいような気がしてきた。

そんな思いを一気に跳ね飛ばすメッチャ面白い本がつい先ごろ出た。『醜いが、眼をそらすな、隣国・韓国!』という変なタイトルの本がそれである。「韓国人は『卑劣』ということを、理解できない。なぜなら、ほとんどの国民が卑劣だからだ!」などといったことがガンガン出て来る。その身に危険が及ぶのではないか、と他人事ながら心配してあげたくなる凄い内容だ。もっとも、産経新聞紙上での『正論』に、時折書いておられるような、洞察力に富む国際政治の現状への切り口も散見されるから、「誹謗・中傷」的な言辞に終始しているわけではない。易しすぎるとも言える論じ方で、深い韓国理解が得られる「文科省推薦の良書」かもしれない。

ただ、文句がないわけではない。2刷りのものでは、間違い記述や誤植が若干目立つ。特に、昨年亡くなられるまで秋田国際教養大学学長だった中嶋先生を「前秋田教育大学学長」と書くなどもってのほか。他にも初歩的ミスがあって、それを探す楽しみも。これはひたすらに出版社のせいだろう。まあ、著者としてはそんなことは気にせずに、これからも分かり易い本を書いてほしい。雑誌に書かれたものから類推して、近く古田流「西洋哲学入門」といった本が出版されるのではないかと私は睨んでいる。手ぐすね引きながら、固唾を吞んで期待しているところだ。

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