集団的自衛権をめぐる論議は未だ始まったばかり。様々な論者たちがメディアに登場し、その考えを述べているが、私が注目するのは憲法改正論者。そのうち、憲法を改正する必要を述べながらも、解釈でそれを済ませてしまおうとすることに反対をしている人たちだ▲なかでも小林節慶大名誉教授は筆頭株。この人はかつて自民党のブレーンと目されたり、公明党にも強い関心を寄せた時期(21世紀に入る前あたり)があり、私も幾度かお会いした。『憲法守って国滅ぶ』など明晰な論理展開で分かり易い文章が魅力的な人だ。今回の安倍首相の目論見を「権力による憲法泥棒」と断定。以前の96条改正への動きを「裏口入学」と決めつけたことと同様に明解極まりない▲ただ、小林ウオッチャーによると、彼の憲法改正への姿勢は微妙に変化したと言う。当初は普通の国にすべきだとの立場から憲法9条の改正を唱えていたと見えたのに、今は国際貢献のために自衛隊を海外に派遣することを明記せよとジワリ変わった、と。実は私もそうかもしれない、と睨んでいる。恐らくは平和を希求するのにどこまでも熱心な公明党の支持者たちとの付き合いの中で、その思いを強めるに至ったのであろう▲高村正彦自民党副総裁は地味な人柄の印象だが、どうしてどうして。うるささにおいて派手極まりない。20年ほど前に海外視察に同行していらいの旧知の間柄だが、その芯の強さといったら圧倒的だ。今、しきりに「砂川判決」を持ち出し、必要最小限の措置なら、集団的自衛権の概念に含まれるものでも排除されないとの主張を展開している▲小林さんは憲法学者30年の経験から、このような高村説は聞いたことがないとし、まったくの苦し紛れのものだと切り捨てる。今安倍周辺が提起する集団的自衛権行使への想定事例はいずれも個別的自衛権の問題で、やりたければ「その範囲を広げ、運用を見直して対応すればいい」と明解極まりない。衆議院に私が在籍した20年間にずーっと取り組んできたテーマが今展開される状況を見ながら、「回転木馬」を思い起こすのは何ゆえか。(2014・6・3)