集団的自衛権をめぐっての論争は、まず自民党と公明党の代表による協議の場が設定された。これはまことに興味深い。与野党の予算委員会での議論などよりも数倍重要だと思われる。結果如何では、日本がこれまで憲法9条のもと他国の戦争に関与してこなかった姿勢を根本的に変えることになるからだ。私は現役時代に幾たびか自民党との安全保障をめぐる協議の場に臨んだが、今回のものに比べれば殆ど意味がなかったとさえ思われるほど。この場に挑む人たちの心中や察して余りあり、羨ましい限りだ▲石破茂『日本人のための「集団的自衛権」入門』は、いかにも彼らしい筆致で得意満面に展開されている。彼には、これまで『国防』『国難』をはじめ数多の防衛に関する著作がある。それらに比べると軽いタッチは否めぬものの、タイムリーではあり、よく整理されている。かつて同窓の先輩面よろしく「あんたは防衛に関わり過ぎる。そろそろ卒業しないと総理に成れないよ」と、偉そうに忠告したことがあるが、いやましてその思いは昨今募ってくる。安倍さんに使い捨てされぬようにね、と▲ところで、この協議は三段階に分かれて行われると見込まれる。一番目はグレーゾーンについて。二番目は国連PKO活動に関するもの。三番目が集団的自衛権の限定的行使についてである。かねて私はこの問題については、集団的自衛権と個別的自衛権、さらには集団安全保障とがごちゃ混ぜになっていることが、一切の混迷の元凶だと指摘し、問題の所在を整理せよと主張、論文も発表してきた(2002年4・16号『世界週報』)。その視点からすれば、この三段階に分けての議論開始は公明党のペースだ▲この場面、三段階すべてを議論し終えて、行使容認にいけば、自民党の勝利。公明党の敗北になる。しかし、グレ―ゾーンにおける法整備の道筋をつけたうえで、個別的自衛権で出来ることを明確にしわけし、集団安全保障における駆けつけ警護は集団的自衛権とは別概念だとして認めることが出来れば、公明党の勝利である。あくまで憲法9条のもとでの憲法解釈を縮小でも拡大でもなく、適正に解釈することがポイントだ。解釈改憲ではなく、解釈の適正化で出来る、できないをはっきりさせることは可能であり、それをすることこそ公明党の使命なのだ。(2014・5・22)