元防衛高級官僚を一言でいえば (32)

今、自衛隊や防衛省関係者のなかで最も評判の悪い人物はだれか?別に一人ひとりに訊いてみたわけではないから推測にしか過ぎないが、防衛庁長官官房長などを経て、元官房副長官補だった柳澤協二氏だろう。なぜって、国の安全保障政策を統括していた身でありながら、今の政府のそれを厳しく批判しているからだ。一言で彼についての評判を言えば、「まったくいい気なもんだよ。立場がかわりゃあ、好きなことばっか言って」というところか▼実は柳澤氏と私は昵懇の間柄。それはそうだろう。政府側の要人と与党公明党の安保政策の責任者の関係だったんだから。私たち二人は党機関誌『公明』で対談をしたことがある。彼が、相次いで興味深い対談本(『抑止力を問う』『脱・同盟時代』)を出した後の頃だった。勿論、対談というよりも私のインタビューというのが相応しい中身だったが、大いに触発されたものだった。彼の心境を一言で譬えれば、「水を得た魚」そのもので、宮仕えから解放された喜びに溢れていた▼その彼が『改憲と国防』『亡国の安保政策ー安倍政権と「積極的平和主義」の罠』などで、一段と激しくトーンを上げて、安倍政権を批判している。前著で、歴史観を持たない安倍晋三という指導者を持ったことを恥じなければいけない、とした彼は、近著では、求められてもいないアメリカとの軍事的双務性を積極的に追い求める亡国の指導者だ、と。一言で、現在の課題についての彼の主張をまとめれば「解釈改憲などせずとも、みんな個別的自衛権ですむ」であろう▼きわめて優秀な防衛官僚であることは間違いない。その安保政策の薀蓄にもおおむね共感する。ただ、政治への洞察がやや希薄ではないか。今回の問題でも首相・安倍晋三にだけその責めを負わせる風があるのには首肯できない。加えて、彼の本は対談部分が多すぎる。是非、自らの論考を真っ向勝負で掲げて貰いたい。私自らのこの評論を一言でいえば、「わが身を棚に上げて」ということになるのだが。(2014・6・14)

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