コロナ禍騒ぎで、妙に吉村洋文大阪府知事の人気が高い。このところの世論調査における政党支持率でも「維新」は右肩上がりである。少し前に友人(元公明党尼崎市議)から勧められて購入したまま放っていた上掲の本を、引っ張り出して一気に読んでみた。率直に言って「維新」の強さは個人プレーによるところが大きいとの見立てに間違いはないというのが結論である▲主役が橋下徹から、松井一郎、吉村洋文のツートップに替わっただけで、この3人以外に人はいないように見える。それ以外のプレイヤーで重きをなしているのは、概ね他党からの流入者ばかりで、この党生え抜きの人材(歴史浅く無理もないが)は貧弱というほかない。それでいて、確かに強い。兵庫県的には3回の参議院選挙で維新候補を敵に回したが、この党は殆ど党員支持者の姿は見えず、運動量は少ないのに、圧倒的な票をとる。要するに浮動票をかっさらうだけの期待感が有権者に強いのである。時代の空気を感じる感性力は侮れないが、主軸が崩れると消え去る可能性も高い▲その強さの秘密はどこにあるのか。この本では、大阪都構想をめぐる維新、公明、自民の三党のこの10年ほどの動きを克明に追っているが、結論めいたことには直接言及していない。浮かび上がってくるのは、先に挙げた3人のリーダー(維新の三傑)の都構想に対する執念だけである。それに比べて自公、及び他の政党の結束力のなさたるや目を覆うばかり。単独では強い公明党も、他党との付け焼き刃的結束では負けてしまう。〝維新の三傑〟に共通しているのは、はっきりした物言いに尽きよう。これは政党、政治家として学ぶべきところ大である。国政における野党で、憲法改正をはっきりうたっているのはこの党だけ。これも歯切れの良さに繋がっている▲私の見るところ、今の日本ではもう一つの保守勢力の台頭が求められている。〝何でも反対〟のイデオロギーに偏重しがちな党でなく。この本で、三傑のひとりが国民民主党が「維新」でなく、立憲民主党の方に合流しようとしたのを嘆くくだりがあるが、そこがポイントであろう。先に希望の党への異常な期待で盛り上がったが、あながち〝小池人気〟だけの一過性のものではなかったと見たい。中道主義の党・公明党の役割はまことに大きいが、ややもすると、物言いの不鮮明さが気になる。そこらで足元をすくわれないようにしたいものである。(2020-5-16)