中国の動向が気にかかる。香港での学生によるデモが、とくに。私の友人で、香港在住19年、創業12期目のホープウイル・グループ代表の堀明則さんのレポートを読んだ。堀さんは”和僑”の代表の一人でもあり、外から日本を見る眼差し確かな国際人だ。今回のデモは香港の行政長官を選ぶ選挙が、自由な立候補の権利が市民に与えられないものであることから学生、市民の反発を招いたものである。堀さんは、今の学生たちが中国人というよりも香港人というアイデンティティを持っていて、その特徴はデモの実態が「やられてもやり返さず、ものは壊さず、助け合い、座り込みし仲間と香港の将来を真剣に議論しあう、そして道路をしっかり掃除する」ものだと指摘。つまりきわめて紳士的なものだと評価している。そういう比較的おとなしいデモであっても、先行きは覚束ないといえ、中国各地の統治にも微妙な影響を与えることは必至だ▼香港でも習近平政権の横暴さは際立ってきており、他の少数民族居住地域などでは推して知るべきだ。このあたりを含む中国内部事情にめっぽう詳しい情報といえば、宮崎正弘、石平の『2015年 中国の真実』を置いてほかにない。このシリーズでの中国批判のトーンは上がる一方で、二人の舌鋒は留まることを知らない。要約すると、中国経済の破たんは秒読み入っており、その責任はすべて習近平にあり、やがて彼によって共産党政権は潰されるか、彼自身が潰されるかの瀬戸際にあるという。毎回のことだが、現場に足を運んでのレポートだけに迫力がある。2006年に「世界にも誇れる美観のエコ都市が生まれる」(胡錦涛)としていた河北省唐山市の「曽妃甸(そうひでん)大工業区」は日本円で10兆円の巨費が投じられたが、10年が経った今はどうか。「オフィスパークには鉄筋フレームだけ、橋梁建築は途中で放棄され、官庁予定地にはガラ空きのビルが水浸しとなり、満潮時には浅瀬で蟹が捕れる。まさにゴーストタウンではなく、ゴーストシティだ」と。嗚呼、残骸や強者どもの夢のあとー一日の利払いが15億円強に上るとして中国経済の破たんを占う▼「香港の不動産王は、すでに中国の物件をすべて売り逃げしている」とか「不動産バブルで、中産階級が全滅」し、「内需も投資も輸出も全部駄目になり、バブル崩壊次第で経済は全滅する」などと囃し立てられると、経済関係者ならずとも、誰しも浮足立つ思いになる。それらの原因は習近平の戦略なき政権運営ぶりにあるとして、一つ一つ実例を挙げていく。英米などアングロサクソンやIMFへの挑戦から始まって世界各国で無謀というほかない試みの連発は呆れるばかり。▼宮崎、石両氏は、中国の権力闘争が結局は、今なお影響力を残す江沢民元主席に対する、胡錦涛前主席の怨念が背後にあると見る。胡錦涛は習近平と組んで江沢民派の殲滅を図ったのちに、習近平追い落としを図ろうとするという読みである。果たしてそうなるかどうか。これでは、やがて中国に新たな革命が起こるという見立てを持つしかないのだが、一般的にはかなり過激な情報に映ろう。中国の真意が読み取れぬ中、尖閣列島周辺における不穏なうごきに見るように、ひたひたと武力攻撃への準備をしていることだけは明確に迫ってくる。(2014・10・11)