昨年2020年は明治維新から約150年の日本にとって、大きな転機となる年だった。75年前の先の大戦の敗北に引き的するくらいの。そんな年に作家の高嶋哲夫さんと私は初めて知り合い、そして親しい関係になった。彼の住まいが神戸・垂水であり、慶大出身ということもあって。この新年早々(4日)に親しい仲間たち数人と、異業種交流会(私が友人と共催)に集ったが、そこに彼も顔を出してくれた。高嶋さんは昨年一年で4-5冊もの本を出したとのことだが、別れ際に、そのうちの一冊『「首都感染」後の日本』を頂いた▲この本はコロナ禍の後に巨大災害が必ず来るとの確信に基づく予測を述べると共に、その対応策を明らかにしている。今の47都道府県、東京一極集中から、道州制の導入と首都の移転の必要を、である。これはこの人の年来の持論であり、その著作『首都崩壊』に詳しい。岡山県吉備高原に持ってくるべし、との具体的提案も詳細に展開していて迫真性がある。『首都感染』を読んで感心していた私に、次はこれ、さらにまた、と次々指示をいただく。こちらは読むのに精一杯だが、有難いことと思い直して挑戦している▲東京から首都機能を移転ーとりわけ国会を移転させること、とのテーマは1990年代にそれなりに議論された。私が当選する前年に「国会等移転法」が成立(1992年)し、阪神淡路大震災後の1996年に改正された。99年には政府審議会が「栃木・福島」、「岐阜・愛知」、「三重・畿央」の三地域を候補地にと答申している。しかし、バブル崩壊やら東京都の猛烈な反対の前に殆ど議論も進展せぬまま棚上げ、沙汰止みになっているのが偽らざるところだ。私も現役当時党内議論に少し関わったが正直言って興味は薄かった。今となっては不明を恥じる▲高嶋さんは、首都の条件として❶自然災害が少ないこと❷交通の便が良いところ❸防衛しやすいところ❹首都を造るに十分な土地があることーなどの条件を挙げる。安定した地盤と温暖な気候で、日本の中ほどという位置(北方四島から尖閣列島までの中間)にある岡山県吉備高原が最適だというのである。この選定を含めて今後の議論に注目し、遅ればせながら参画もしていきたい。彼の小説はいずれもリアルな課題を真っ向から取り上げて興味深い(特に政治家として)ものばかり。中身も表現ぶりもやや硬いとの評価をする向きが少なくないが、コロナ禍中にあって、最も聞くに値する重要な提案をされている人だと思う。多くの人に読まれることを期待したい。(2021-1-8)
★1月第一週の読書リスト【①長岡弘樹『教場』②山本章子『日米地位協定』③北岡伸一『世界地図を読み直す』④長岡弘樹『教場2』】←今年度から、私が並行読みしている本を挙げていきます。この中から、やがてこの「読書録」に書くことになるものが出てくる予定です。