(380)巧みな政党比較に酔うー山口那津男、佐藤優『公明党の真価を問う』を読む

世の中的には安倍晋三前首相の7年8ヶ月の評判は、功罪あい半ばする。それを与党の一翼として支えてきた公明党についても見方は分かれる。私見では、政治倫理に照らして怪しげなこと(例えば、いわゆる、もり、かけ、さくら問題など)で、安倍、菅コンビに対して、公明党が大きな声でノーと言った場面が見えなかったことが原因だと思う。それは、連立のパートナーとしてのマナーの遵守なのだろうが、結果として「存在感に乏しい公明党」という見立てを許してきたのは無念である。と、私は思ってきた▲しかし、田原総一朗氏との先の対談本に続き、今回佐藤優氏との第二弾も読み終え、大いに反省せざるをえない。知られざる山口代表の底力。それを世にどう伝えるか。もっと公明党は真剣に広報に取り組まねば、損をしていると思うことしきりである。例えば、イージス・アショアによる「敵基地攻撃能力」問題を公明党が一蹴したことはそれなりに知られている。しかし、その代替策として「スタンド・オフ・ミサイル」の開発に持ち込んだことは殆ど知られていない。この兵器は領土、領海、領空を守る自国防衛のためのもので、「画期的」(佐藤)な「最適解」(山口)だ、との評価は手前味噌でなく、間違ってはいない▲しかし、メディアはそう伝えていない。公明党からの発信も弱い。佐藤氏が「成果が出たあと、何事もなかったかのように、静かに次の仕事を続ける。この謙虚さも公明党ならでは」というが、私はむしろむず痒さを覚える。安全保障分野では「絶対的平和」を求める向きも支持者に少なくない。それゆえ誤解されることを恐れて、政策スタッフが発信を躊躇したものではないかと想像している。生活に直結する社会保障分野での数々の実績やその対応とは違うところだ▲この本での佐藤氏の巧みな比喩を使った政党比較が興味深い。例えば、自民党は「エピソード主義」だが、公明党は「エビデンス主義」だという。前者は「偶然出会った出来事を普遍化させて」自身の実績にしてしまうが、後者は現場で話を聞くと、「アンケートや訪問調査で根拠をとって裏付け」たのち、党の実績へと組み立てるからだ、と。なるほど。一方、旧民主党は、「コンサルタントみたい」で、「評価しながら関わるが、最後の出口まではしっかり責任をとらない」。公明党は「コーチをしつつ、最後まで一緒に(伴走者として)走り切る」。確かに。さらに共産党は「暴力革命政党」で、公明党は「人間革命政党」だ、と。公明党は「仏法の中道主義、人間主義、平和主義に基づく価値観政党」である。その通り。共産党は「共産主義と暴力革命という価値観政党」だと、同じ価値観政党として位置付けている。分かりづらい。ここはやはり従来通り「イデオロギー政党」であるとした方が落ち着く。ともあれ、この本を読めば公明党支持者は溜飲が下がること請け合い。ただし褒められ過ぎて、酔い過ぎにご注意だ。(2021-3-21 一部修正)

 

 

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