米国流への心酔だけでいいのかー相島淑美『英語でマーケティング』を読む

マーケティングについて英語で書かれた本を読むーおいおい、赤松。どうしたんだ、って思われるに違いない。英語が得意でもなく、マーケティングともあまり関係がないはずと、私を知る多くの人は見る。その通りだ。だが、その本を書いた人が並外れた知的経歴を持つ魅力ある女性だとすると、一転なるほどということになろう。そう、著者の相島淑美さんは上智大学で英語を学び、日経新聞で流通経済の現場を取材した後、慶応義塾大学院に入り直しアメリカ文学を研究。修士となって清泉女子大専任講師として教鞭を取る。その一方で翻訳家として20数冊の書物を訳す仕事に従事し、さらに関西学院大経営戦略科のMBAとしてマーケティング習得に磨きをかけ博士号を取得、今は神戸学院大学経営学部准教授を務める◆こう記すと、およそ近寄り難く気位の高い、うるさい女性と思われる向きが多いに違いない。しかし、その見立ては全くのハズレ。数年前に中小企業の社長で関学大MBAという、これまた際立って優秀な高校の後輩から紹介を受けて以来、時に応じて交流を深めてきた。付き合うほどに、人としての佇まいと品の良さに心うたれる。その女性が初めて自著を出版した。しかも英語を取り扱う分野で聳え立つ研究社から。とくれば、英語もマーケティングも苦手などと言っておられない。著者自身に肉迫する思いで読んだ◆観光やアパレル業界などにまつわるマーケティングに関する三本の英語論文(抜粋)を優しく解説した本である。「英文に引っ張られるのでなく、自分から先に何が書いてあるかを予想しながら読む習慣をつけると、英文が無理なく読めるようになります」「抽象的な言葉が多く使われていますが、教育実習生と指導教員の関係を思い浮かべながら読んでいくとよいでしょう」ー長年に渡り、英書と格闘してきた人ならではのアドバイスが随所に光る。こういう英語教師と出会えなかった我が身の不運が悔やまれる、というのは言い過ぎか◆ コロナ禍の直前、日本中はインバウンドに沸き、〝おもてなし〟に関心が高まった。マーケティングの本場・アメリカでのホスピタリティとの違いは何か。かつて、明石港、淡路島を拠点に、瀬戸内海の島々をめぐる観光に執念を燃やした私も思いをめぐらせた。達成すべき100点満点基準を「ゴール」に設定するホスピタリティ。基準をいかに効率よく達成するかがポイントだ。一方、日本の〝おもてなし〟に「ゴール」はない。どこまでいっても、まだまだよりよくする余地はあるはず、とこだわる。著者はさらに「表面的な行為は似ていても、前提となる発想は大きく異なる」と切り込む。翻訳と解説に未整理なところが散見されていささか気にはなるが、刺激に溢れた好著で、「英語」と「マーケティング」、勿論双方共に学ぶ多くの人に勧めたい。(2021-3-26 3-27一部修正)

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