【45】気分は「日清、日露に勝った」直後──鈴置高史『韓国民主政治の自壊』を読む/8-12

 韓国は鑑賞する分においては、映画と同じように面白い国だ。尤も、当事者としてこの国と付き合うとなると厄介で、とても面白いなどと言っておれないだろうが。私には韓国ウオッチャーが友人に多い。つい先ほど、新しくその仲間に付け加えたいと思いたくなる人に出会った。といっても、テレビの解説番組を通じて一方的に見染めただけである。失礼ながら、お顔は見れば見るほどユニークである。この人物の書いたものも読もうと言う気になった。それがこの本だ。一読、裏切られなかった。章ごとのポイントを挙げる▼出だしの第1章は、コロナ禍。一度は抑え込んだように見えた。「西洋の没落」到来とばかりに喜んだのも束の間。瞬く間に自らの新規感染者数が世界最高レベルへと逆流。「K防疫こそ韓国人の優秀さを示す」などと呑気なこと言っておれなくなった。次いで、「あっという間にベネズエラ」の第2章。民主主義を掲げて当選しながら、その制度を壊してしまったベネズエラのチャペス大統領と文在寅前大統領は同じ穴のむじな、だと暴く。司法を掌握しようとの試みは、権威主義の国では左派だろうと右派だろうとどこでも起こるから、との指摘は納得がいく▼「そして、友達がいなくなった」との第3章は「反米、従中、親北」路線の当然の帰結だ。米国に歯向かうそぶりを見せつつ、中国に迎合し、北朝鮮と仲良くするとの路線では、誰にも相手にされないのは当たり前だろう。「政治の自壊が止まらない。韓国の知識人は今、激しい内部抗争のあげく滅んだ李氏朝鮮を思い出す」で始まる最終章は、韓国の行方を、縮んだ経済では国民をなだめるだけの分配が難しいと占う▼それでいて、「韓国は経済、外交、内政とあらゆる面で岐路に立っている」と、決定的な断定を避けた口ぶりは、韓国が苦手の日本人には物足りないかも。でも、ご安心を。「おわりに」では、きっちり、落とし前をつけている。まず、「35年間の植民地と独立後の南北分裂、朝鮮戦争による貧困」で、「周辺国から、一人前には扱われず、その劣等感は積もりに積もった」韓国人だが、「今や旧・宗主国の日本を豊かさで超え、誰からも無視されない国になったと自信満々だ」と持ち上げる。その上で、「せっかく描いた『世界に冠たる韓国』という自画像を壊す気にはならない」がゆえに、「韓国の気分は『日清・日露に勝った』直後」だと結ぶ。虚像の上に立った韓国は、波打ち際の砂の城のように、あっという間に流されるとの見立てなのである。(2022-8-12)

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