(112)6-②一日五回の感動と笑いで健康長寿をゲット━━高柳和江『笑医力』

◆寝起きから就寝までの感動をメモに

 このところ朝起きるのが楽しみだ。早朝ウォーキングをして、仕事に出かけるという、いわゆる今日用(教養ではなく、今日用事があること)と今日行(教育ではなく、今日行くところがあること)に満たされているということだからではない。一日に五回感動して、五回笑おうという自らに課したテーマが起き抜けに証明されるからだ。床についてから目を覚ますまで一度もトイレに行かずにいたなんて、朝イチバンの感動だ(80歳近くなろうとすると、どうしても、ね)。

 今朝なんてホッとするやら喜ぶやら大変だった。手術するしかないね、といわれてた我が身の病状が夢の中のこと、と分かって。しかもその医者たるや、まったくその道に関係のない友人だった。ひとしきりベッドの中で一人笑った。こうした寝起きから寝床につくまでの感動メモをノートに記すってことは、やがて大きな体験に繋がるに違いない。

 こんなことを試みるようになったのは、「笑医塾」塾長の高柳和江女史の強い影響による。彼女は私の高校の同期生。『笑いが命を洗います』ってタイトルの電子書籍を、10年ほど前に一緒に出版したことがある。心から尊敬する偉大な小児科医である。その彼女の手になる『笑医力』なる本をあらためて読んだ。「びっくりするほど健康になる」という副題つき。出版直後に「読書感想文書いてね」って彼女が言ったので、「違うよ。読書録なら書くよ」と、小っちゃな反発をしたものだ。あれからあっという間に月日が経ってしまった。ありきたりの「書評」は書きたくないと思いつつ、毎日の笑いと感動をメモるという試みに取り組んだものだ。日々の充実とはこうしたさりげない発見に基づく。

◆印象深い「常識を破る人たち」

 朝のトイレチェックの感動を皮切りに、ある一日の5つのうちの残りについて紹介しよう。二つ目は、長い間行方を捜していた書類が書斎を整理しているうちに突然出てきたこと。嬉しかった。三つめ。先日、久しぶりに会う約束をしていた友人が、胃の調子が突然におかしいので医者に行くと言い出してキャンセルになってしまっていた。だが、検査結果は大丈夫だったとの電話があり、わがことのように喜べた。四つ目。新聞を読んでると、書籍広告欄に以前から気になっている民主主義の後にくる仕組みについて考えさせてくれそうな本が目に飛び込んできた。これはヒントになる。早速手に入れ、読んでみようと嬉しくなった。最後は、先日のブログ「後の祭り回想記」での、議員OBとの懇談や家庭訪問について書いたことに、大変感動したとのメールをいただいたこと。長い時間をかけて行った先々での実体験を書くことで感動の共有をしていただけることはとても有難い。

 こういう風に「感動」は次々と沸き起こるものだが、本格的な笑いとなると結構難しいように思われる。高柳先生も、書いている。「最近、一緒にのけぞって大笑いした92歳の男性は、90年ぶりに笑った」って。ったく、笑わせてくれる。実際、どこにも笑う材料は転がってるのかも。彼女も「おやじギャグがきっかけに」と勧めている。私はもともと自分の本のタイトルに『忙中本あり』とつけてみたり、電子書籍の題名に『六〇の知恵習い』とか、はたまたブログのタイトルを『後の祭り回想記』にするなどと、ダジャレ風の、ものいいは嫌いではない。しばしば連発して家族から「昭和生まれ」と、ひんしゅくを買っているので、そろそろ卒業したいのだが簡単には収まらない。

 「常識をうち破る人たち」の章が印象深かった。80歳を超えた岸恵子さんの話に始まって、100歳の現役サラリーマンの話まで、なかなか読ませる。その章の最後を高柳さんは「だって、人間は125歳まで生きられるんだから」と結んでいる。実際、彼女は若い。講演会などで「私は26歳で〜す」というのはいささか〝さばの読み過ぎ〟だが、「皆さんも今日は27歳よ〜」って(時々口にする年齢は変わるようだが)おっしゃる。参加者はまったくの嘘でも若く見立てられて、満更でもなさそうなのは面白い。かつて読んだ『103歳になってわかったこと』の著者の篠田桃紅さんが『百歳の力』という本を出版した。これは自叙伝だが、不思議な魅力がある。通常の人のすべて反対をやってる風に書かれてるところがミソだ。高柳さんも、きっと篠田さんぐらいまで生きそう。ン?でも彼女はその頃になっても、「私26歳よ〜」っていってるのかな。それは少々怖すぎる。

【他生のご縁 お蔵入りになった『現代古希ン若衆』の出版】

 この人と私は高校同期、つまり同い年なんですが、それを大っぴらにすると怒られます。歳がバレるじゃない、と。確かに、爺さんと一緒にされるのは嫌でしょうね。若さこそいのちとばかりに動いているのだから、〝商売の邪魔〟になってしまう。

 小学校から大学までの同期6人との対談集を、「新古今和歌集」をもじって『現代古希ン若衆』と銘打って出版しようとしたものの、高柳さんのクレイムで沙汰止みになってしまいました。これは受けると思ったのですが‥‥。そうこうしてるうちに喜寿も過ぎてしまった。

 

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