警察官誕生のドラマを鮮やかに描くー長岡弘樹『教場』と『教場2』を読む

昨年末から新年にかけてテレビドラマに嵌った。年末は『教場』、新年は『教場2』。それぞれ前編、後編が連続二夜にわたって放映されたのだが、主演のキムタクこと木村拓哉の魅力に取り憑かれてしまった。彼の魅力を知ってる人からすれば、何を今さらということに違いないだろうが。早速、本も買い求め急ぎ読んだ。発刊された7年ほど前に読むかどうか逡巡したのだが、今頃になったことは悔やまれる。テレビの方が良くできているものの、あとで補足するためには本も得難い▲いわゆる警察小説と違って、警察官が誕生するまでの背景が描かれる。志願者を篩いにかけて落とすことが狙いとあって、教官による過酷極まりない試練が課され、観ても読んでもハラハラドキドキする場面の連続。犯罪者そこのけの際どく悪どい事案も次々発生、短編の連作の形をとっていて読みやすい。テレビ映像ではキムタク扮する隻眼の風間公親なる教官が、シャーロックホームズそこのけの観察力でトラブルを解決し、小気味いいことこの上ない▲この小説(映画)の魅力は、警官がどのように犯罪を捉え、犯人を見つけ出すかのノウハウが描かれていること。医療や政治、経済をめぐる様々に話題になるドラマは多々あるが、こうはいかない。結局、面白おかしく取り扱われるものの、あまり日常生活に役立たない。やれ、『ドクターX』やら『半沢直樹』などといった超人気を博したものも、「私失敗しないんです」とか「倍返し」などのセリフは印象に残っても、それだけに終わる。映画『記憶にございません』など、政治風刺の喜劇とはいえ、あまりに酷すぎる内容で、脚本家の知的センスを疑う。そこへいくと、この小説は犯罪にどう立ち向かうか、微に入り細に渡って説いてくれる上質の面白さを有している▲風間教官の壮絶な訓練を耐え抜いて、無事に卒業し、現場に送り出される警官たち。風間が一人ひとりと握手し、激励の一言を投げかけるラストシーンには胸が熱くなった。こう書くとお分かりのように圧倒的に映像の方が存在感漲る内容であった。ファーストシーンの運動場での訓練場面は、米映画『フルメタルジャケット』の海兵隊のそれを彷彿とさせるもので、何かと考えさせられた。先日のNHK「クローズアップ現代」では、自衛官の自殺問題を取り上げていた。また、今日は富山の元自衛官による交番襲撃事件の初公判が報じられていた。妙に自衛隊に「風間公親」はいないのかとの思いに駆られてしまう。(2021-1-14)

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