『地方消滅』を悲観論に終わらせるな

日本の896の市町村が消えてしまうー東京一極集中が招く人口急減で、地方が消滅するという衝撃的な中身が話題を集めて半年余り。遅ればせながら増田寛也『地方消滅』を読んだ。この人は東大を出て、建設省に勤めること20年足らず、40歳を過ぎて岩手県知事を三期12年。そして総務大臣に。それを終えて、今は日本創成会議座長につき、今回のレポートをまとめた。私は、2001年に衆議院国土交通委員長を勤めた後、総務委員長も一年間だけだがこなした。旧建設省、運輸省、自治省、郵政省などの幹部をそれなりに知っているが、増田氏の悪い評判は聞かないが、取り立てていい話も聞いたことはない。要するに真面目で仕事熱心なひとだったが、存在感はあまりなかったものと思われる。しかし、ここへきてまったく様相は一変。日本の明日に大きく注文をつける存在へと変身した▼地方を消滅させないために必死になって戦ってるものにとって、何をわざわざおおげさに悲観的なことを提示しているのか。その思いは今もなお消えない。しかし、彼は「大げさではないか」との批判に対して、「今回の人口予測は日本で出ているあらゆる将来予測の中で最も正確なもの」と胸を張る一方、「何もしなければより厳しい結果になることを心配すべき」だと迫る。今まで自分の街では人口が減りそうだと薄々気づいていたのが、リストを見て「遠く離れた自治体でも同じことが起きているとリアルに認識できるはず。自治体レベルで人口問題を考える、共通のベースができた」と意に介さない。リストに消滅の可能性が高いとして斜線をかけられている町が兵庫県には新温泉町、上郡町、神河町、市川町の4つ。うち私の旧選挙区の西播磨からは3つも。人口のカギを握る若年女性の数が2040年にはそれぞれ三分の一くらいに減り、文字通り数えるくらいになってしまうというのだ▼こうしたデータを前に、当事者の意見を訊いてみた。市川町議会の元議長・稲垣正一氏は、平成の大合併に神崎郡は乗り遅れたことが最大の原因だという。基本的な行政能力が疑問視される町長ではなにおかいわんやだと、匙を投げかけている様子すら伺え、暗澹たる気分になってしまった。尤も、神河町では町おこしのための動きもみられ、私のところにも意見が求められてきている。また、北海道の芦別市出身の稲津久衆議院議員にも電話で水を向けてみた。ここは札幌市が小東京的様相を示して、人口がそちらに流れがち。彼は意欲漲る政治家で、人口減に歯止めをかけるべく八方手を尽くしてはいるものの、前途は楽観を許さないとの見方をしていると受け止めざるを得なかった▼確かに事態は厳しい。増田氏は、以前に紹介した『里山資本主義』の著者・藻谷浩介氏との対談で、「本来、田舎で子育てすべき人たちを吸い寄せて地方を消滅させるだけでなく、集まった人たちに子どもを産ませず、結果的には区に全体の人口をひたすら減少させていくー私はこれを『人口のブラックホール現象』と名付けました」という。それに対して藻谷氏は、「東京は人口を消費する街。そこにもっと若者を集めろなどというのは、日本国を消滅させる陰謀ですよ」と応じる。こうした現状を打開するには、皆が現状をしっかりと認識したうえで、立ち上がらねばならない。増田氏自身あとがきで「今回示した現実を立脚点として、政治、行政、住民が議論を深め、知恵を絞る必要がある。いたずらに悲観するのはやめよう。未来は変えられる。未来を選ぶのは私たちである」と述べる。私は彼がこういうなら、ここから出発する続編を書いて欲しい。でなければ、結局は悲観論で終わってしまう。この本の少し前に出版された冨山和彦『なぜローカル経済から日本は甦るのか』は悲観論を打ち消す具体的方途を示している。藻谷氏の著作同様これからはどう地方を復興させるかの議論を花盛りにしていきたい。(2015・2・15)

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