世界宗教となった創価学会SGI。これからさらに世界に向けて布教のコマを進める上でのアドバイスを、佐藤優さんが創価大学の学生を前に熱く語った講義。それが『世界宗教の条件とは何か』である。❶宗門との訣別❷世界伝道❸与党化ーこの三つがその条件だとする。ひと昔前ではおよそ考えられない筋立ての論理展開に驚愕を覚えつつ、感動のうちに納得して、読む創価学会員をして立ち上がらせる力を持った本である▼現在、朝日新聞発刊の週刊紙『アエラ』で、『池田大作研究 世界宗教を追う』が連載中だが、これは、池田先生の『私の履歴書』(池田大作全集所収=日経新聞初出)を読み解く体裁を取っている。この二つを併せ読むことで一段と現在における世界宗教の姿が浮き彫りにされる。単に創価学会員を勇気付けるだけではなく、一般の人々にもキリスト教やイスラム教などの歴史と現在、その問題点などをわからせてくれる▼佐藤優さんはキリスト教とのアナロジー(類推)で創価学会を考える手法を駆使する。また、様々な宗教の「内在的論理」を知ることの効用を語る。さらには日本の歴史を学ぶことが世界広布に役立つことを説く。一方で、数多くの書物や映画を挙げて具体的な思考の手ほどきも施してくれる。映画『八甲田山」を題材にした「リーダーと民衆」論にはただただ感じ入り、唸らせられた▼彼をして「知の巨人」 との命名は改めてむべなるかな、と感心する。キリスト者をかつて二重人格とのレッテルを貼って一刀両断にしてきた我が身が恥ずかしい。邪宗教との位置付けで他宗教を打捨ててきた我が姿にも。日暮れて道遠しならぬ、道に迷った感が強い者には、読みようによっては罪深い中身だ。なお、潮出版社がホームページでこの本を元に、首都圏の大学生を対象に語り合った「佐藤優の白熱教室」を連載している。その第2回に私のことが触れられている。恥ずかしながら付言しておきたい。(2020-1-21)