二極化と「中道」公明党の再現を期待(52)

東京に行った際に定宿にしているホテルで目を惹くのは玄関のロビーにその日の新聞が山積みされていることだ。銘柄は朝日新聞のみ。常に300部は置いてあろうか。数日前に行って、いつもと同じ変わらぬ風景に奇妙な異和感を覚えた。週刊誌を見る限り、例の二つの”吉田事件”で、雪崩をうって朝日離れが起きているとの指摘があるからだ。今回の私の上京の目的の一つに、かつて党広報局長をしていた時代ー20年前にもなるのだがーに公明党番記者をしていた連中6人ほどと懇談することがあった。勿論同社の記者も含まれている。あれこれの昔話や”今話”に花を咲かせた。現役を退いてやがて2年、情報に疎くならぬように鋭意気を配っている私にとって珠玉の時間であった▼往復の新幹線車中に持ち込み、読み終えたのは『安倍官邸と新聞ー「二極化する報道」の危機』。朝日新聞社記事審査室幹事の立場にある徳山喜雄氏の手になる、この夏発刊されたばかりの新書。読むきっかけになったのは、これまた昔付き合った東京中日新聞記者(元同社政治部長、現在は東海ラジオ社長)から勧められたため。いや、本人が読んだからといって、私にくれたものである。中身の要点は⓵安倍官邸のメディア戦略が巧妙できわめて有効に働いていおり、首相の考えにそった流れへと世論が導かれている➁在京主要6紙が「朝日、毎日、東京」と「読売、産経、日経」とに二分化されており、深い論議や第三の可能性を探るといった成熟した言論が成立しにくくなっている、の二点だ。とくに後者は、集団的自衛権問題を論じてきた場面で痛感したことだけに、あらためて感じ入った▼第一次内閣の体たらくに比べて別人のごとく振る舞っているかに見える安倍首相だが、その秘密の一つに、民主党政権の大失政があると思われる。同一人物が短い期間にかくほど変われるのは、谷間にさいたあだ花のような、鳩山、菅、野田と続いた前政権の、「何も決められない」政治が存在したからに違いない。ドンドン決めていく政治決断を支持する世論の醸成が根深く存在する。これにはよほど注意を払わねば、気づいた時には手遅れになりかねない危険性があると思われる。それは、第三の道を志向し続けてきた公明党の50年が、これから歩む道と大きくかかわってもくる▼二極化しがちな政治状況はかつて公明党が誕生した時代の背景にもあった。自民対社会の二大政党対立時代だ。論議不毛の時代と言われた。それを阻止し、第三の選択を提示し、大きく時代を変革しようとしてきたのが公明党だった。その公明党が自民党を中から変えようと連立政権に入り、自公蜜月の流れが始まってから10数年。今展開する政治状況に第三の可能性を探る動きが弱く見えるとしたら、大いに嘆かわしい。どうしても二極化からは三極目がかすみがちになる。あらためて「中道」の旗印をもっと鮮明に掲げる必要性を感じると強調しておきたい。(2014・9・29)

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